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特集


チャレンジの日曜日
 
実践・季節はずれのハムの人

●ハムを手にして帰郷

 自分で食べてしまいたい気持ちをぐっとおさえ、やってきたのは実家だ。特に用もないのに、このためにやってきた。


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 まずは玄関先で記念撮影。撮影してくれた父にはハムのことを知らせていないので、なぜだかスーツを着ている私を見てもいぶかしげ。今日の私はただの息子じゃない、ハムの人なんだ。

 あとから自分の写真を見ると、ちょっと緊張していたのかなと思うが、居間に入ってさっそくハムを渡す。


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「今日はこれを渡すために来ました」

 そう言い出す私を前に、斜に構える父。一体なんなんだという疑念が父をそうさせるのだと思う。とりあえず開けてみて、と勧めてみる。


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 疑いのまなざしは、箱を空けた瞬間に…


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 喜びに変わる!

  「おお、ハム!」

 何の変哲もないリアクションだが、ハムを前にしたときの喜びが素直に表れているとも思う。

  「まさかハムとは…」

 しばしハムを見つめ、ハムをもらった喜びにひたる父。デパートの包装紙や大げさ気味の箱も演出としてうまくいったのだと思う。ハムの人の私としても非常に満足だ。

  「なにかハムについて思い出ってある?」
  「うーん、そうだな、子供の頃初めてハムってのを見て、
   肉ってこんなにきれいなのかと思ったな」

  「えーと、それは色がってこと?」
  「そうそう、昔のハムってのはやたらと色がきれいだっ
   たんだ」

 ハムについての追憶を語る父。今でも安いハムの中にはそういう色をしているものもあると思う。

  「で、あとからそれはわざと色をつけているんだと知っ
   たんだ」

  「それで何か変わった?」
  「あんまり食いたくなくなったな」
  「……」

 実態を知ることにより、ハムへの気持ちがダウンした父。ハムのダークサイドを垣間見た感じがする。


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 しかし、今回私が贈ったのはそれなりの高級ハム。「ハムと私」という題名で写真を一枚、と頼むと、うれしそうな顔を見せてくれた。

  「さっそく切って、ビールで1杯やるんだ」

 そこには確かにハムをもらった喜びがある。あげてしまったことでハムが自分のものでなくなった私だが、ハムを失うことで得られる喜びというのものも、またそこにはある。



 

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