なぜか知らないが墓地が好きだ。好きというか、心が安らぐというか、落ち着くというか。
水族館や動物園も好きだが、つい気持ちが前のめりになるのは否めない。それに比べて墓地は、どこまでも静かだ。当たり前だが死んだ人しかいない。生きてる人も、あまりいない。
そこで、夏(お盆)を迎える前の静かな墓地を、日が暮れるまで歩いてみることにした。向かった先は、都内でも屈指の広さを誇る多磨霊園。
さあ、癒されまくるぞー。
(高瀬 克子)
いきなり遠い
京王線の多磨霊園駅から20分以上歩いたろうか。霊園はまだ先だ。心のメモに「今度来る時はバスで」と書き込みながらさらに歩くと、やっと墓石屋やお休み処が軒を並べ始めた。墓地は近い。
なんとか正門に辿り着き、一歩中に入ると、いきなりロータリーが現れた。墓所はどっちだ? 右へ行けばいいのか左へ行けばいいのか、それすらも分からない。
この多磨霊園、128ヘクタールあるだそうだが、そう言われてもピンとこない。東京ドームが4.67ヘクタールだそうなので、ドームに換算すると、えーと、27.4個分ということになる。…ますますピンときませんが。
とりあえず入口右手の「管理事務所」に入り、「あのー、案内書というか、地図みたいな物ってありますか?」と聞くと、係の方が「こんなものでよろしければ」と、一枚の紙をくれた。
簡単な地図ではあるが、これがあれば迷うことはないに違いない。なんといっても、ここは都内だ。見れば園内にはバス通りまであるじゃないか。キツネに化かされない限り、遭難することはないだろう。
ありがたく頂戴し、いざ、霊園の奥へと足を踏み入れた。