3カ所目、洗足池
乙幡さんとは洗足池駅前で待ち合わせた。まずは乗っていただこうと、改札を出て歩道橋をわたってすぐの洗足池へ向かう。
洗足池はこれまでの2カ所のような公園内にある池ではなく、むき出しで池だ。池メインなだけに、ぐっと広い。この池にスワン一曹で漕ぎ出せたらきっと素晴らしいに違いない。
この日も天気はじっとりと雨が降っていた。雨のスワンボート日和だ。
が。
ボート場を見ると、遠目で嫌な予感がした。シャッターが半分しまっている。来てみると「雨天中止」の看板がぶる下がっていた。
「がーん」
あまりのがっかり加減に、普通口語では遣わないだろう言葉が口をついて出る。「がーん」て。
乙幡さんは半分しまるシャッターをくぐって中の事務所に入り、係の方にわざわざ今日はどうしても中止なのか聞いてきてくれた。
雨と強風の日はボートは出さないんだそうだ。“ボート場、雨でも営業伝説”は2日にして崩壊。ちゃんと調べるべきだった……。
「……どうしましょう」
「……とりあえず、池の周りを一周してみましょうか」
私いま、デートのセッティングに失敗した中学生みたいになってないか、大丈夫か。
「ボート場って、カップルで来ると分かれるってところ多いですよねえ」
「ああ、弁天さまがまつられてるところが多いからじゃないですか。女の神様だから、カップルに嫉妬するっていいますよね」
「でも、雨のスワン、乗ったらきっと仲良くなると思うんですよねえ。静かでいいんですよ」
「そうかですか」
「そうです」
洗足池のまわりは森のようだった。雨にぬれてあたりが涼しい。こんな良い雨の中、船を出せないのは全く残念だ。ぜひともシケでも船をだす男気を今後期待したい。
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