ハードなビジネスシーンを駆け抜ける企業戦士たち。チャンスをものにするためにはスーツにだってこだわらなくてはならない。
そんな紳士服店の宣伝文句に感化されたわけではないが、個人的に鎧を買った。
改めて文字にするとよくわかる。感化なんて全くされてない。単に勘違いし過ぎだ。
ただ、今さら気づいたところでもう買っちゃったんだから仕方がない。自分の目が覚めてしまわないうちに、ビジネスシーンに飛び込んでみました。
(text by 小野 法師丸)
●夢うつつのまま鎧到着
鎧をほしいと思う気持ちに、ちゃんと説明できる理由はない。男のロマンとか戦国時代への憧れとかといった言葉を並び立てるつもりもない。なんとなくかっこいい、実際そんなもんだと思う。
そんなライト感覚で買ってしまった鎧。注文して一週間ほどだっただろうか、普通に宅配便で届けられた。鎧初心者ということで店で扱っている鎧の中でも最も安い部類のものを選んだのだが、それでも13万円。
深く考えるのはやめておく。高く跳ぶためにはまず低くしゃがまなくてはならないのだ。
予想外だったのは箱に大きく書かれている「鎧」の文字。わかりやすいと解釈するか、隠し立てできないと受け取るかは微妙なところか。
ダンボール箱を開けると、鎧の箱本体が現れる。ここには大きく「前」の文字。こっちが前だよ、ということなのか。戦国時代の厳しさとかけ離れたフレンドリーな感じがかえって不気味でもある。
箱を開けて並べてみると、やっぱり鎧なんだなという感じがぐっと出てくる。もうあとには戻れないとも言っていい。
こうした方面に造詣が深いわけでもないので、それぞれの正確な名前はよくわからない。右の写真、自分なりに「仮面」と呼んでいるのだが、そう呼びつつもそれは違うだろうと内なる声が叫んだりもする。
しかし武士たるもの、そんな細かいことにこだわっているべきではない。さっそく変身だ。
変身という言葉もちょっと違うだろうか。途中、部品の順番をつけ間違えたりしながらも、試行錯誤の末にとにかく装着完了。
うん、やっぱりかなり唐突。意味がわからない。
自宅の裏でこそこそと撮影したのだが、急に近所の人の車がそばまで寄ってきて驚いた。鎧を着てる理由なんて説明しづらい。いくら言葉を費やしたところで追いつかない。
そもそも説明するべき理由がない。
そんな緊張感も伴う鎧装着状態、ちょっと休憩しておやつを食べよう。
別に普通にスルメ食べてるだけなのに、鎧を着ていると無駄にフォトジェニックになってしまう。イカなんか食べてないで、早く戦に行ってしまえと言いたくなる。