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特集


ちしきの金曜日
 
ひまわり5号にさよならを


ひまわり5号の生みの親にお会いしました

見つからなかったのはたしかに少し残念だったけれど、ここはひとつ、その結果も含めて、そもそもひまわり5号を作ったかたにお話をきくのがいいのかもしれない。

茨城県つくば市にある、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センターにお伺いしました。


JAXAの筑波宇宙センター。人工衛星の追跡管制や、宇宙飛行士の訓練などを行っている。
この建物の展示室で、各種人工衛星の試験モデルなどを見せていただきました。

右側にいるのが坂部さん。中央はひまわり初号機のプロトタイプモデルで、大まかな形は5号と同じとのことです。

ひまわり5号は暗かったのかも

人工衛星などの展示された室内で、じっさいにひまわり5号の開発にたずさわった、宇宙利用推進本部の坂部さんにお話を伺うことができた。

残念ながらひまわり5号をみることができなかったことを伝えたところ、坂部さんは

・こちらでもひまわり5号の軌道をシミュレートしてみたところ、地球を一周してきて、現在はインドネシア上空にいるようで、したがってNORADの出している軌道要素は正しそう。

・岡山で見られなかったのは、ひまわり5号が暗かったからかもしれない。

とおっしゃっていた。

左の写真でも分かるように、全体が円筒状になっているひまわり5号は、太陽などの光が、縦一列の線のような形ではねかえる。6号のように、太陽電池パネル全体が光を面ではねかえすのに比べると、5号のほうは相対的に暗いのかもしれない(これはぼくの想像です)。

ひまわりの各部について教えていただいた。こちらは目にあたる部分。衛星全体が1分間に100回転するのにあわせて、中にある鏡の角度をすこしづつ変え、地球を南北方向にスキャンしていく。

こちらはデータをやりとりする部分。左側は気象データを地上へ中継する機械。右側は海上のブイなどからの気象データを受け取るためのアンテナ。

 

運用停止の当日についても伺いました

7月21日にひまわり5号が運用を停止した当日の手順は、坂部さんによると、

「まずは、軌道の離脱、ということをします。それから積んでいる燃料を使い切り、その後に、電波を出さないように、すべての機器をオフにします。」

ということらしい。静止衛星の軌道は経度ごとに1つしかないので、ひまわり5号は、同じ東経140度をとぶ6号のために軌道をあけてやる必要がある。5号の場合は、静止軌道より300kmほど高い位置に移動したらしい。

すべての機器をオフにするということは、擬人的な言い方をすれば、生命維持装置を外すという感じだ(だいぶ違うかも)。なんにしても、さみしく感じたりはしないだろうか。

―運用停止の際に、とくべつな感慨があるものですか。お別れ会をしたりとか。

「さみしい気持ちはないけれど、これでようやく終わったのかなあという感じですね。お別れ会は、個人的にやった人はいたみたいですが(笑)」

やはり、実際の関係者の方は粛々と運用をされているらしい。打上げが成功したら安心というわけにはいかなくて、静止軌道に入ってもまだまだ、運用がおわってようやくほっとする、ということのようだ。

一目みたいとか、お別れをしたいとかいっているぼくは、少しミーハーなのかもしれない。


けっきょく人の思いが伝わる取材でした

今回、ひまわり5号を見たいという目的で取材をはじめたはずなのに、最後のほうでは、ひまわり5号を見れたとか見れなかったということは、ほとんどどうでもよくなってしまってきていた。

宇宙を開発したい、観測をしたい、あるいは旅行にいきたいという人もいるかもしれない。そういう人たちの思いによって、結局はひまわりも飛んでいるわけですよね。宇宙を見に行ってなぜだか人の心に打たれた取材でした。



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