11月。忌まわしき「秋」のフォトジェニックから逃れるために、沖縄へ向かうことにした。調べてみたところ那覇の気温は28度。東京はすでにジャケットだけだとちょっと肌寒い、なんてことになっているのに彼の地はふつうに夏だ。
28度の南国でなら水タンク撮影もフォトジェニックにはならないだろう。いつもの平常心で鑑賞できるはずだ。期待が高まる。ものすごく個人的かつ特殊な期待ですが。
搭乗口がなにやらにぎやかだと思ったら修学旅行性と同じフライト。彼らの傍若無人な若者っぷりに対し、いまいましそうに舌打ちするおじさまがたもいたが、ぼくにとってはこの騒がしさは秋を追い払うようだ。今回ばかりは歓迎したい。
うそ。うるせえよ、おまえら。
離陸前のアナウンスでふつうに「iPodの使用はご遠慮ください」って言うのに驚いた。Appleの圧倒的なシェアとはこういうことなのだと思う。
そして、那覇空港に到着。暑さとか寒さって、人間の感覚の中でも最も思い起こすことが困難な感覚だと思う。毎年暑いと寒いを繰り返し体験しなければならない身にとってこれはありがたいことなのかもしれない。数ヶ月したらまたあのうだるような暑さがやってくるのかー、ってリアルに思い出せたらやってらんないだろうから。
ともあれ、この暑さに乗じて冷静に水タンクを鑑賞していきたい。
まずは予備知識なしに市内をざっと下見して、肌で沖縄水タンクを感じることからだ。
沖縄の町並みは特殊だ。本土と違い、木造の家があまりない。そして水タンクも東京のものとは一味もふた味も違う。素敵だ。期待できる。水タンク。
下見を終え、腹ごしらえをし、撮影・取材方針を立てていよいよ本格的な水タンク鑑賞スタート。
だが、そのまえに、DPZのライターとしては沖縄に来たら訪問しておかねばならない場所がある。
沖縄在住のDPZライター、安藤さんのお店をたずねる。初対面。ピースサイン。かなりフォトジェニックから遠ざかってきたことが自分で実感できる。
水タンクに関して安藤さんに教えてもらったことや、その後調査した結果分かったことは次のようなことだ。
・沖縄には川らしい川がないこともあり、長年慢性的な水不足に悩まされてきた ・そのため、どんな家にも大きな水タンクがあってに水を貯めておくことが一般的 ・東京では見られないステンレスの水タンクが主流になりつつある ・水タンクを隠す建築的装飾も魅力的 ・安藤さんは男前だ
最後の一項目に関して自らと比較すると、ぼくのなかにまた別の秋がやってきそうなので、ここは水タンクに集中していきたいと思う。