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特集


チャレンジの日曜日
 
知ったかぶり満載! 横浜現代アート体感記
すごいものから意味の分からんものまで
さまざまな作品がそろい踏み!

唐突だが、横浜が今ものすごい事になっているらしい。

横浜トリエンナーレ2005』という現代美術の一大イベントが行われているのだが、それに以前から横浜市が盛り上げてきた『BankART1929』をはじめとするさまざまな文化芸術創造プロジェクトが絡み合い、それはもうすごい事になっているらしいのだ。どのようにすごいのかは、実は僕もよく分かっていないのだが。
とにかく面白そうだから行ってみよう。

芸術の秋にこじつけて学生時代美術の成績が“3”だった私が知ったかぶり情報満載で現地の盛り上がり具合を報告させていただきます。

梅田カズヒコ


※記事中に登場したすべての施設や作家のインフォメーションは最後にまとめて紹介しています。 


ご同行をお願いした内沼さん

さすがに一人では心細いので助っ人を要請。

このまま一人でアートに触れると「うわっ」「ほー」「すげー」ぐらいの実のないコメントで特集がまるまる終わってしまいそうだ。

そこで僕は助っ人に協力を要請した。以前当サイトで取材させていただいたbook pick orchestraの内沼さんだ。
(内沼さん関連の記事はこちらこちら
内沼さんは現代芸術に造詣が深い。彼が居てくれれば、僕が難解なアート作品に触れコメントに窮するような局面でもいろいろ教えてくれる事だろう。


で、内沼さんに聞いてみたところ

・横浜では今、「横浜トリエンナーレ2005」という大きなアートイベントが行われている。(内沼さんのお知り合いも出展しているとか。)

・トリエンナーレは会場だけではなく、横浜の街中にも作品や施設が点在しているらしい。

・トリエンナーレは言ってみれば芸術の万博だ。

・それとは別に「BankART1929 Yokohama」と「BankART Studio NYK」という銀行や倉庫であった古い建物を改装した建物があり、そこにもたくさんの芸術作品がある。

・それらはわりと歩ける範囲内に点在しているらしい。

なるほど。何となく分かった気になった筆者はさっそく翌日内沼さんにご同行をお願いする事にした。

次の日


横浜トリエンナーレ2005 会場入り口   
作:Daniel Buren
Photo-souvenir:"On the Waterfront:16,150 Flames", work in Situ for Yokohama Triennale 2005, Detail c D.B

おりしも快晴。芸術日和である。さっそく会場の入り口に立つ内沼さんと僕。

梅田「いい天気ですね。あの紅白の三角旗はポスターとかオフィシャルサイトにも写っているものですよね?」
内沼「そうです。ダニエル・ビュランさんの作品ですね」
梅田「何か意味はあるんですか?」
内沼「いや、まあいろいろあるんですが……とにかく綺麗ですよね。本会場はちょうどふ頭の先っぽにあって、入り口から会場まで大量の三角旗で彩っているんです」
梅田「ところで入り口付近には展示品とかはないですよね?」
内沼「ありますよ。例えばあそこにある船とか」


なんの変哲もない船だが、これが実は作品なのだ。
作:ボートピープル・アソシエーション/(作品名) L.O.B.U-13号計画
船の中はソファが置いてあり、揺れを感じながらくつろぐ事が出来る。快適。
たまたま会場に居た現代美術作家の酒井さん。

作品であり、会場の一部である??

内沼さんの指さした先には写真左のような何の変哲もない船が泊まっているだけだった。

梅田「あれはただの船じゃないですか?」

内沼「いや、あれ自体がボートピープル・アソシエーションというチームの作品なんですよ。あれは船の中でも艀(はしけ)と言って、かつては港内や河川での運搬を行ってきた小型船です。でも近代化の波に追われ使用価値が薄れてしまった。で、彼らは艀を人の集う空間に生まれ変わらせ価値転換を図ろう、という表現を行っている集団です。」

梅田「へー、艀っていうんですか。何か見ようによっては工作船のようにも見えました、すみません」

内沼「なんて事言うんですか! 怒られますよ。で、普段はああいう形で開放しておき、船の中という日常あまり触れない空間でのくつろぎを楽しむわけです。そして期間によっては中にさらに作品を展示する。そのとき、あの船は作品であると同時に会場でもある。さっそく行ってみましょう」

船に乗り込んでみると中にはソファが置いてあり、中に展示スペースも用意してあった。船の揺れを感じながら作品に触れると、普通に美術館で見るのとはまた違った印象が芽生える。
なるほど。つまりそういう事が作品であり、会場であるという事なのか。作品を展示するための作品。メタ作品だ(知ったかぶり)。現代アートは、説明を聞くより体験したほうが分かった気がするものが多い。(あくまで気がするだけだが)

と、その時、内沼さんが誰かを呼び止めた。

内沼「酒井さんじゃないですか? 何してるんですか?」

どうやら内沼さんの知り合いに偶然遭遇したようだ。
内沼さんの知人の酒井さんはこのボートピープル・アソシエーションの船の中で12月6日からパフォーマンスをやる作家さんだそうだ。今日は簡単な打ち合わせと下見を兼ねここに来ていたらしい。

内沼さんは軽く僕の紹介をしてくれ、取材に来ている旨を告げる。

内沼「酒井さんもヒマだったら一緒に梅田さんと会場をまわりましょうよ。人が多いほうが面白いし」
梅田「あ、え、そうですね、ぜひ」
酒井「じゃあ私もついていく事にします」

あっという間に仲間が一人増え3人で本会場を見学する事になった。


いよいよ本会場へ。86組のアートがひしめき合う。

(作品名) 告知-森
作:照屋勇賢 (トリエンナーレ本会場)



梅田「これはまた小さくて精巧な作品ですね」
酒井「私、この作品好きなんです」
内沼「何か分かります?」
梅田「紙で木を作ってますね。赤や黄色に紅葉してる」
内沼「そうじゃなくて、外側ですよ」
梅田「え?」



梅田「うわ! マクドナルドの紙袋だ」
内沼「資料によるとこの作品の作家の照屋さんは“日常にある異なる価値の併存状況を引き出し、今日的な社会問題を美的な表現として作品に結実させている”らしいよ」
梅田「うーむ」
内沼「うわ、出た。梅田さん得意の『分かんないけどとりあえず頷いとけ』作戦」
梅田「いや、ちゃんと分かってますよ」(知ったかぶり)



しかしファーストフードの紙袋で美しい木を作るってなんだかちょっと皮肉だ。



 

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