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特集


土曜ワイド工場
 
「ホームレスの家」を鑑賞する
こういうやつ

ホームレスの家。なんとも矛盾した言葉だが、そうとしか言えないものがある。その素材から別名「段ボールハウス」とか「ブルーシートハウス」とかよばれるものだ。

ぼくは以前からホームレスの家の造形に興味があった。街で容易に手に入る素材を使って、防寒機能とちょっぴりのプライバシー保護機能を持たせつつできあがった造形は、いわゆる建築で言う様式と縁遠いものだが、それでもある一定のパターンが見られるようになる。それが面白い。思えば本来の様式の原点とはこういうものなのだと思う。

とか、それっぽいことを言ってみたが、そういうことはどうでもよくて、例によってただただ造形のみに焦点を当ててホームレスの家を鑑賞してみようと思う(と思って取材し始めたのですが、最後その造形の違いに思わぬ秘密が隠されていたことを知るのでありました)。

(text by 大山 顕

■ホームレスの家に宿る個性

ホームレスの家には住んでいる方、つまり作り手の個性が良く表れていると思う。ホームレスの家はセルフビルドの建築なので、その造形に最も影響を及ぼすのは建築技量であることは間違いないが、それでも入念に作り込むタイプの方もいれば、「こんなところでいいんじゃないか」で済ます方もいて、そういう家造りに対するスタンスもまた影響を与えていると思う。それが見どころだ。個人的には後者の「いいんじゃない、てきとうで」といった趣の物件が好きだ。なぜなら、ぼくがそういうタイプだから。

非常にきっちりとしたホームレスの家。清潔感のあるホワイトのカラーリングもお見事。
左などは、思わず嫉妬したくなるほどのクリーンな造形。お住まいの方のちゃんとしっぷりがしのばれる。これだったらぼくの部屋の方がよっぽどホームレスだ。中までお伺いはしなかったがさぞかし清潔できちんとしていることだろう。

さりげない切妻屋根、エッジの効いた角の処理、すがすがしいホワイトのボデーと入り口のブルーシートとの対比も見事である。

こちらは緩やかな不定形タイプ。好感が持てる。
一方左は人ごととは思えない、親近感のわく不定形タイプ。もとはそれなりの切妻屋根の家だったことをそこはかとなく匂わせる造形だが、いまやすっかり有機的な形に。この「最初はやる気だったんだけど今はもういいや適当で」的なところも己を見るようだ。好感が持てる。

冬も本番のこれからの季節、お住まいの方の健康が非常に心配されるが、なかなか意図しては実現できない脱構築な作風に惹かれる。

工務店やディベロッパーが作るわけではなく、自分が住まう場所を確保するために自分で作り上げた家々。「ホームレスの家」というのもなんなので本稿では「DIYハウス」と名づけて、以下からその作風を見ていこうと思う。

■切妻タイプ

木立の中に目も綾なスカイブルーのDIYハウス
雨は誰の上にも平等に降る。そして屋根は傾斜する。

三角形の屋根の形を切妻屋根と呼ぶが、日本の伝統的な建築のそれの傾斜は欧米のものに比べて勾配が急なんだそうだ。雨が多いから。もちろんホームレスの方々の暮らしにも雨は降り、したがって彼らの家の屋根もまた傾斜していたほうがいい。左は絵に描いたような切妻。

同系色のコーディネートによる切妻プレイ
切り妻というよりはもはや合掌造りというにふさわしい造形。見所は複数の種類のブルーシートをオーバーラップさせた結果出来上がった青色の構成主義DIYハウス。

2本の木を親柱として利用しており、非常にきっちりとしたできばえである。左側の入り口に配置されたすだれを利用した目隠しもなかなか風流な情緒を漂わせる。シートを押さえるために使われている石の列もなんだか枯山水の風情だ。

堂々としたつくりの大型切妻物件。キャンプ場のテントにも見えてしまうきっちりとしたつくり
左は切妻物件の中でも大型のもの。角材などを使って建造されたと思われるしっかりとしたつくりは、木立のなかという環境とあいまって、キャンプ場のテントのような感じに見える。

上で紹介した切妻物件もこれも、実は上野の公園にあるホームレスの集落にあったものなのだが、後述するような理由で、ここのDIYハウスは全般的に作りが大きい。このような大型大型物件は鉄道高架下や土手などの立地条件には見られないものなのだ。読み進める間に何故そうなのか読者の皆さんにも考えてみていただきたい。

 

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