更に、井上さんがパスネットを使って裸眼をカバーしようと試みる。小さな穴から覗くと、裸眼とは思えないほど視界がクリアになるという。
全員がパスネットの穴を試し、その効力に驚いている。
「わぁー、本当だ!」
「凄い、良く見える」
林さんは箸袋にシャーペンで小さな穴を開け、そこから覗く。
「おお、これも良く見える!」
この1時間、自分たちがどれほど見えてなかったのか、2ミリほどの穴によって思い知らされている様だった。
「ほら、あそこの絵、梅だったんですよ」
箸袋メガネで壁にかかっていた絵を見上げる井上さんと臼井さん。実際は桜だったのだが、そのあたりのディテールはこの際問題ではない。花の絵が描かれている事実を知る事が出来ただけで十分だ。
「こうすれば、手で持ってなくていいですし」
両面テープで箸袋メガネを額に固定する臼井さん。
「それがあれば、メガネいらないじゃないですか!」
と僕が言うと、
「そんな訳ないじゃないですか!馬鹿にしないで下さい!」
と怒られてしまった。
そうですよね、ちゃんとしたメガネも必要ですよね。 |