まぼろしの町はどこに

ドラえもんとのびたくんの住む町は「東京都練馬区月見台すすきケ原」。
もちろん架空の町である。ドラえもんが小学館の学年誌で連載が始まった1970年は大阪で万博があった年。高度成長期まっただなかで、空き地がどんどん住宅地に変わり、町の景色もずんずん新しくなっていた頃である。もう32年も経ってしまった。のびたの町の面影なんてあるはずないじゃないか。

とは思ったが、練馬である。世田谷だってまだ農地が残っている。なんとかなるんじゃないか。
「このあたりに行こうと思っている」と練馬区出身のハヤシさんに言うと、「そのへんマンションががんがん建って、高級住宅地になってるみたいだよ。保谷くらいまで行ってみたら？」ふええー。

でも初心貫徹。ドラえもんの町はやはり練馬である。練馬でなくてはならない。小さな川がある街を地図で探す。裏山もあれば最高だが、もともと練馬には山はないのだ。空き地はあるのか。空き地があればジャイアンもコンサートを開くことができる。

池袋から西武池袋線で15分ほど。昼間なので、主婦・老人・若者しか乗っていない。のどかだ。駅のホームに西武ライオンズの選手のポスターが貼ってある。さすが西武線。駅前にはスーパーやレンタルビデオ屋などあるが、とりあえず川があるらしい方角へと向かってみる。ものすごい夏の陽射し。

意外にも、石神井川は美しくのどかだった。「ちっちゃいどぶ川みたいなのがある」というハヤシさん情報だったが、水はすんでいて、サクラ並木がすずしい木立をつくっている。こどもたちが「おーい早くこいよー」とか言いながら自転車で川岸を走っていく。おお人が住む町！