「よろしくお願いします」
「高瀬さんですね。よろしくお願いします。血液型は?」
「あのー、それがわからないんですが」
「あ、初めてですもんねぇ。はいはい。今わかりますよ!」
少し関西っぽいイントネーションでハキハキ話す美人の看護士さんは、話し方同様テキパキと針を腕に刺し、試験管に少しだけ血を抜いていく。
「わっ。びっくりしたー。(小声で)…これホントに毛細血管か?」
「…どうしたんですか」
「いや、血の流れが速くて…。こぼすところでした」
「それは…、あの、どういうことなんでしょうか」
「元気な血ってことです!」
実は、血にはコンプレックスを持っていた。学生時代、血液検査ではいつも引っ掛かり、貧血で倒れたこと数知れずなだけに、「元気な血」と言われて心底うれしい。
気さくな看護士さんと話をしている間に、血液成分が紙に印字されて出てきた。ものの数分、あっというまだ。その数値を見ながら看護士さんが説明をしてくれる。
「おお。…すばらしい」
「はい?」
「献血は、このヘモグロビンの値が重要なんですが、高瀬さんは14.2もあります。男性でも13.3以上ですから基準を大きく超えてます。いいですねー、いいですよぉ」
「ほんとですか。レバー食べてきた甲斐がありました」
「がんばったんですねー」
「はぁ。…あの、昔はよく血液検査で引っ掛かったんですが」
「女性は大人になると、丈夫になるケースがあるんですよ」
「そうなんですか。よかった。嬉しいです」
「ちなみに血液型はA型ですねー」
…あっ、そんなにサラリと言わなくても。
えー、あっけなく判明いたしました。A型でした。 |