翌日の夜、西武新宿線に乗ってオザキフラワーパークに向かった。武蔵関駅から徒歩で15分程度、ふりしきる雨の中、舞萩の苗を求めて歩いた。
店に着くとレジ横に舞萩と思われる鉢植えが2つ置いてある。「スミ様」という売約済みの札がささっているので間違いない。これが舞萩ですか、と感慨深く鉢植えを眺める。葉の近くでパチンパチンと手を叩いてみた。……。舞萩は無反応である。
「踊りませんね」
と僕が言うと、店員さんは舞萩の方を見て「夜は葉を閉じて眠るんですよ」と言った。
どこまでも不思議な葉っぱである。
「天気が良くて、気温が25℃以上。そういう環境だったらピクピク踊ると思います」
「ピクピク?」
「ええ、ピクピク」
踊ると言っても、おもちゃのフラワーロックみたいにグネングネンと踊るのではないらしい。割と小さな動きですから、と念を押された。
帰りの電車で派手に踊られたらどうしよう。オザキフラワーパークに向かっている時はそんな心配をしていた。電車の中で踊る葉っぱを持っている36才。ちょっとまずい感じだ。
でも、舞萩は夜眠ると言うし、そんなに派手に動く訳ではないと言うから大丈夫だろう。 |