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ちしきの金曜日
 
イノシシの写真を撮りに行く

年賀状向きではない

イノシシは箱型の罠に捕らえられていた。
ようやく目にすることができたその姿に、興奮が沸き起こる。

が、その姿は哀愁に満ち溢れたものだった。



体重は50kgほど。イノシシとしては中くらいのサイズらしい。



イノシシは箱から出ようとして、何度も何度も金網に頭突きをする。頭からは既に血が流れていた。



まさに猪突猛進という言葉の通り、猛烈な勢いで金網にぶつかっていく。「ドガン」という音がして巨大な鉄の箱が数センチずれる。この勢いで人間にぶつかってこられたら大怪我するだろうって勢いだ。


鉄の箱がちょっとずつずれていった跡がわかるだろうか

トドメを刺す

イノシシが捕まると、狩猟仲間同士で連絡を取り合い、みんなで捕獲したりするそうだ。この日も何人かのハンターが連絡を受けて集まっていた。

トドメには銃を用いることもあり、その時は猟銃の免許を持った人が撃つ。が、今回は槍が用いられた。



一瞬だった。
トドメを刺したかたはさすがのベテランで、イノシシの心臓を一撃で突き抜いた。

刺した瞬間、イノシシは悲鳴のような声を上げたが、その後は無言のまま立ち尽くし、心臓に空いた穴から血がドドドドーと勢いよく流れ出て、10秒ほどで地面に突っ伏した。

大量の血が噴き出しているところは夢に出てきそうな光景で、さすがに写真には写せなかった。



倒れてからも、しばらくは息があった。
完全に息絶えるまでは3分くらいかかっただろうか。



椿の花が咲く中を、箱から出されイノシシが運ばれてゆく。

かわいそうだった。

植物<虫<鳥<哺乳類と、人間に近い種類になるほど、また体重が大きくなるほど、かわいそう度がアップするものだが、そういう意味でもイノシシはまさに人間に近い位置にあるため、かなりかわいそうに思ってしまう。



こんな姿を年賀状になど、できるわけがない。

が、けしてこれが悪いことだとか、殺生はやめようとか、そういう風に言うつもりはない。人間以外の生き物だって皆、他の生き物を食べることによって自らの命を支えている。

現に我々だって毎日うまいうまいと言って牛とか豚とか鳥とかの肉を食べているわけだし、米とか野菜だって植物というジャンルの生物だ。どこに「かわいそう」という線を引くかの違いでしかない。


やがて、車に乗せて運んでいかれる。この後、さばかれて肉になる。

むしろ問題は、私がすべての肉はこうして動物を殺すことで得ているという事実を、今まで都合よく忘れていたことだと思う。

都合の悪い部分は見ないようにして、美味しい部分だけを見て
「やっぱり高い肉はうまいなー」とか 「焼肉最高!ウホホ!」 とか言っていたことこそが、問題ではないかと。


そして空を見上げた

思うに、狩猟をしたり家畜を捌いて食べることがある人は、我々ほどたくさん肉を食べないんじゃないだろうか。

肉の大切さ、重みのようなものを目の当たりにしてるだけに、大切に、ちょっとずつ食べる。(推測だけど)

私もこの日見たイノシシのことを思い出し、これからはもっと感謝しながら食事をしなければいけないんだ。いろいろ考えて、とりあえずそういう結論に達した。


なんだか、見る雲がすべてイノシシの形に見えた。


というわけで、来年はイノシシ年だ。
思いがけず、来年の干支についていろいろ考えるいい機会となった。というか、こんなんい強烈に干支の動物を意識したのは初めてだ。

ひょっとするとこれは亥年に生まれた者の宿命だろうか?



さて、気を取り直して、年賀状のデザインを考えるか。


 

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