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ひらめきの月曜日
 
岡山の名物『デミカツ丼』を食べに

岡山は街の中心部に路面電車が走っていました。いい街だ。


『デミカツ丼』(もしくはドミカツ丼)をご存知だろうか?

カツ丼の一種なのだが、通常のカツ丼は卵でとじているが、デミカツ丼はカツにデミグラスソースがかかっている。「ソースカツ丼」というものもあるが、あれにかかっているのは普通のソースである。こちらはデミグラスソース。単純に美味そうだ。だってデミグラスがカツ丼に。大発明だ。ドクター中松もびっくりの大発明だ。

しかし、このデミカツ丼、なぜか岡山でしか認知されていない。当然僕は食べたことがない。そこで、四国取材の帰りに、岡山でデミカツ丼を食べてみることにした。

おなかが空いているときに見たら食べたくなると思うので満腹のときにでも読んでください。

(text by 梅田カズヒコ



350字で分かるデミカツ丼の前知識

岡山の人は全体的に甘口の味を好むらしい。理由はよく分からないのだが、街中でお酒を飲めるお店が少なかったので、そういったことも影響しているかもしれない。そんな岡山人が生み出した地元の味に「デミカツ丼」はある。デミカツ丼の発祥は岡山駅そばの「味司 野村」(←のちほど登場)というお店だと言われている。

しかし、郷土料理、名物とは謳わずに、どちらかと言うと岡山の人々が密かに楽しんでいるという印象。結果、全国的な知名度はまだ低い。でも、「まかないメニュー」と言われたらうまいと感じるように、地元民が密かに楽しんでいるメニューがあったらそっちのほうが通常の名物料理より美味いのでは?と考えてしまうのは僕だけだろうか。


このあと登場する一軒目デミカツ丼のサンプル。岡山ではデミカツ丼が『かつ丼』として出てくる。

カツ丼の新たな可能性を感じさせてくれるデミカツ丼、さっそく食べに行ってみることにした。

 

商店街の裏手の店。看板が可愛い。そういえば岡山はわりとオシャレ度数の高い街でした。

岡山に行ったらラーメン屋のデミカツ丼を食すべし

1軒目は岡山の中心部の商店街の裏手にある「やまと」というお店に行った。岡山のラーメン屋はデミカツ丼を出すところが多いらしい。しかも、ラーメン屋のスープを利用したどんぶりを出すので、そのお店の個性が出やすいという。

蕎麦屋のカレーを想像してもらえると分かりやすいだろう。

店内は普通のラーメン店といった趣。ちょっと汚れた週刊誌が置いてあるような正統派のラーメン屋である。地元民に愛されていることがよく分かる。


ソースの赤にグリーンピースの緑


ラーメン屋、やまとのカツ丼(小)500円

岡山の人は大食漢だぞ!

ここのデミカツ丼はやや赤っぽい。味は少し酸味が利いていて、だしにくわえトマトなどの野菜のダシが染みこんでいるように感じる。そして色身にアクセントを与えるグリーンピースの冴え渡る緑。グリーンピースが最も輝くのはデミカツ丼の上ではないだろうか。ソースがかかっていない端っこのほうはさくさくの食感、そしてソースがたっぷりかかった衣はジュワーっとソースが舌の上に広がっていく。うーん、たまらん。

ところで岡山では、ラーメンと小さめのデミカツ丼を一緒に頼む人が多いそうだ。これはラーメンにおける半ライスのようなものだろうが、それにしてもラーメンとカツ丼、しかもデミグラスソースがたっぷりかかっている、と考えるとなかなかボリューミーなメニューである。岡山の人の食べっぷりはすごい。僕もたくさん食べるほうなので、すごく嬉しい。いい街だぜ、岡山。これからは東京のラーメン屋も餃子じゃなくてデミカツ丼を出すべき、かも。


色味といい味わいといい、天津飯の上にかかっているあのソースのような雰囲気。

やまと

岡山市表町1-9-7
11:00〜19:00(途中15時〜16時まで昼休憩)
おかみさんがとても優しいかたでした。


 

カツ丼735円〜。1軒目と比べやや上品で高級感あふれるお店です。発祥の地にふさわしい風格。

デミカツ丼発祥の地へ。

1軒目と比べ上品なお店にやってきた。ここは岡山駅前に近い昭和6年開業の由緒正しいカツ丼屋「味司 野村」である。このお店こそ、デミカツ丼を開発した最初の店だと言われている。言わばデミカツ界の聖地だ。ここのデミカツ丼を食べないことには始まらないと言っても過言ではないかもしれない。

このお店には通常のたまごでとじたカツ丼と両方の味が楽しめる孫膳(945円)というメニューを頼んでみた。


カツ丼を食べ比べる楽しさ


孫膳(945円)。デミカツ丼と通常のカツ丼がそろい踏み。食べ比べが楽しい。

甲乙つけがたしのノーマルVSデミ

2人で違うメニューを頼んで食べ比べる、なんてしないでも1人で2種類の料理が味わえるお得なメニュー。1,000円未満なのも嬉しい。1人で2杯は食べすぎだ、と思うが、実は2杯食べてちょうど1杯分のカツ丼の量になっている。食べ過ぎる心配がないのが嬉しい。

味のほうはと言うと、デミカツのほうはこってり濃厚な味わい。デミグラスの黒っぽい色合いがたまりません。対する普通のカツ丼のほうは味のツボを付いた、「そう、これこれ」という味でした。食べ比べてみると、両者の味がまったく違うことがつぶさに分かる。なんというか、それぞれの料理の目指すポイントというか、向かうべき道が違うのだ。通常のカツ丼がバランスのとれたポップスならドミカツ丼はパンチが効いていて、黒っぽいR&Bといった趣。このドミカツ丼にはキャベツが引いてあります。


カツ丼小会席というメニューもありました。味わって食べるカツ丼もまた良し

味司 野村

岡山市平和町1-10
11:30〜21:00


 

岡山の人は小さい主食に小さい主食を加えたセットが好きだ。でも、小さいと言いながらけっこう大きいんです。満腹になります。

最後のデミカツ丼はまたぐっときますよ、写真でも。

続いての店は「だてそば」というお店。ラーメンとデミカツ丼のお店なのだが、地元のガイドにはデミカツ丼よりもラーメン屋として掲載されていることが多い。

ここには半々定食というメニューがあって、つまりは2枚看板であるメニュー、ラーメン(しなそば)とカツ丼を同時に味わえちゃう粋なメニューなのだ。さっそく注文してみることにした。


お茶碗をはみ出すデミカツ


これにラーメンが付いて950円。小さいなんて謙遜して、めちゃめちゃ迫力あるじゃないですか。岡山の人は幸せものだなー。

生たまごがかかっています。

お店に入るや否やおかみさんに「たまごは好き?」と聞かれた。なんだか不意をつかれたが反射的に「好きです」と答えるとドミカツ丼に生たまごをぽてっと落としてくれた。なんてことないサービスだが、これが嬉しいんだなー。

しかし、食べに行くにしたがってちょっと具が足りなくなってきた。ご飯がちょっと余りそうだ。するとすかさずおかみさん、今度は「ソース足りる。かけようか?」と言ってくださいました。


食べさしの写真で申し訳ない。これでもかってぐらいデミグラスをたっぷりかけてくれた。

気の利く明るい店主に見送られて岡山の夜は更けていった。

半々定食のラーメンもメンマがたっぷり入っていてどこか家庭的な味がしました。雑誌にはラーメン屋で掲載されていることのほうが多いようだ。

だてそば

岡山市表町2-3-60
11:30〜19:00(定休日あり、土日祝は19時30分まで)

本文とは関係ないが、岡山にはももたろう、と名のつく場所がけっこうあった。写真は献血ルームももたろう。

カツ丼にも

実は岡山ではあまり時間がなくて、記事中の3杯はほぼ休みなく一気に食べた。かなりおなかがいっぱいでもう食べられない。最後のほうは正直、デミカツ丼はもういいや、と思っていた。

ところが東京に戻ってきて、この原稿を書きながら岡山で過ごした時間を思い出していたら無性にデミカツ丼が食べたくなった。要するに後をひく味なのだろう。でも、僕の近所にはデミカツ丼はない。そう思うと写真に写ったデミカツ丼が妙に愛おしい。また岡山に行ったときに食べよう、デミカツ丼。


 
 
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