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ひらめきの月曜日
 
香辛料を使えばいつもの豚肉炒めがお店の味みたいになるのか?
スーパー(西友)で買った香辛料


食通の友人とご飯に行ったときのことである。

おいしいと評判の店で肉炒めを食べたが、これがうまかった。うまいうまいと友人に言っていると、家で料理をたしなむ友人が
「うーん、これは香辛料だな。○○と○○を入れてバターで炒めれば……」
などと話している。

そのとき僕は、はたと気づいたのだった。
まったくもって僕はバカだ。外でご飯を食べてもうまいとかまずいとかしか思ってなかった人間であるが、世の中には香辛料というものがあって、味を左右する香辛料のことをまったく意識していなかったのである。「うまい、うまい、うふふ」と僕が笑っている間、友人はせっせと味の研究を行っていたのだ。僕がニヤニヤしている間、友人は頭の中で新たなレシピを練っていたのだ。なんたる脳内格差社会(?)!

「香辛料」とつぶやき、僕はスーパーに向かったのであった…。

(text by 梅田カズヒコ



スーパーで自分を見失いかけるも…

と言うわけで香辛料をいくつか買うことにした。今日の記事は、香辛料に詳しい人から見れば、なんて馬鹿げた企画だと思われるかもしれないが、そういう場合は『はじめてのおつかい』でも見る気分で読んでやってください。

スーパーを物色するものの、昨今のスーパーは品揃えが豊富で、さまざまな香辛料がある。何を買って良いのかわからない。早くも自分を見失いそうだ。ケチャップとか、マヨネーズとかを買うときには陥らない不安感が広がる。

今回は美味くする食材を『豚肉』と決め、肉料理に使うとおいしいですよ、と書いてある香辛料を選んできた。何に使えばいいのかはちゃんと説明されている。分からないときはまず、書いてあることに従うことだ。そうだ、それだ。


ちゃんと書いてあるんだ、こうやって。

 

豚肉炒めをおいしくする調味料を探そう!

と言うわけで、5品買ってきました。


こうやって並べると“香辛料戦隊、ゴレンジャー”って感じデスネ。

さて、豚肉炒めである。今回は調味料の勉強が主旨なので、まったく同じ調理法で豚肉を炒め、香辛料をそれぞれ加え調理、試食。それぞれの味を比較することで、比較していくことにしました。

使用した豚肉は以下。小間切れの豚肉を3パックも買ってきた。そして豚肉だけでは味気ないので野菜を混ぜてみることにしました。でも、野菜を切るのは面倒だなー。


どうも、冷凍食品部です

洋風野菜ミックスというものがあった、冷凍庫に。僕は炒めものにこういった野菜ミックスを重宝する。保存が利くからだ。しかし、こういった冷凍食品の野菜はときにベチョベチョしたり、臭みが残ったりする。これを香辛料で消せるかどうかも、同時に調べてみることにした。


今回の共通の調理方法

1.フライパンに油を引き、よく熱する。
2.豚肉と洋風野菜ミックス少量をフライパンで軽く肉の色が変わるぐらい炒める。
3.「塩」「こしょう」「ガーリックパウダー」で味付け
4.それぞれの香辛料を加え
5.フライパンに水を加え鍋蓋をし、軽く蒸す。
6.違いを明確にするため、最後に香辛料をもうひとふり。


以上が今回の調理方法だ。もちろん、お皿やフライパン等は一回づつ水洗いして、前の味が残らないようにした。できるだけ調味料に味を左右されないように、味付けは「塩」「コショウ」「ガーリックパウダー」を選んだ。炒めたあと、軽く蒸したのは香辛料の味を食材に染み込ませるためだ。

ちなみに、何も香辛料を混ぜないで豚肉野菜炒めを作ってみた。



我ながらうまい。豚肉は偉大だ。どんなに料理がうまくなくても、豚肉を炒めれば誰でも美味い料理は作れる。

香辛料なし

肉のうまさ       ★★★★
野菜のうまさ      ★★★★
ご飯がほしくなるか? ★★★★


すでにじゅうぶんすぎるぐらい美味い。もはやこれ以上足すものはあるのか、というぐらいいい味だ。5つ中★4つだ。ここに香辛料を加わることで味はどう変化するのか?

ナツメッグ。“ッ”って入る呼び方もするんですね。
見た目はあまり変わりませんね。

エントリーNo,1 ナツメグ

まずはさすがの僕も聞いたことがある香辛料「ナツメッグ(ナツメグ)」を試してみることにした。ナツメグは熱帯性の常緑樹で、アンズのような実をうけるという。インドでは古来から食べられていたようだが、ヨーロッパには12世紀ごろに一般的に知られるようになったらしい。

ちなみに、ひき肉に合うそうで、ハンバーグやロールキャベツに入っている肉に混ぜるとおいしくなるそうです。(今、僕、英会話の本を読んでHow do you do?って言ってる人みたいですか?かなり低い次元の話をしてますか?) 

よく出てくるお前か!? 知ってるぜ!

ナツメグ、食べたことある。これはまさしくお店の味だ。香辛料ひとつでこんなに味が変わるのか? 今まで香辛料のことも知らずに『醤油をもっと足せばくさみが消える』なんてやっていた僕を落胆させた。
ガーリックの直接的なうまみにちょっとしたアクセントをつけることに成功しました。確かにナツメグは肉との相性が抜群だ。しかし、不思議と野菜には合わなかった。野菜の青臭さが微妙にひっかかるできばえとなった。

ナツメグを加えると…

肉のうまさ       ★★★★ 5(+1)
野菜のうまさ      ★★
☆☆ 2(−2)
ご飯がほしくなるか? ★★★★ 4(0)

この香辛料の仕事ぶりを評価
みんなにあまり意識はされないが、売れっ子の名プロデューサー的役割

最近よく聴く感じの音楽だなぁ。と思ったらプロデューサーが一緒の人だ、というような感じで、僕は今までナツメグのことをよく知らなかったが、かなり売れっ子のプロデューサーのようです。

カルダモン。名前だけ聞くと新手の栄養ドリンクみたいだ。
カリフラワーのところ、ちょっと茶色くなっているのがカルダモンによるものです。

エントリーNo,2 カルダモン

カルダモンである、この何かのキャラクターみたいな名前の香辛料は意外に古く、なんと紀元前からインド・ヨーロッパでスパイスとして利用されていたそうだ。

カレー料理に欠かせないらしいが、ほかにも挽肉料理やケーキ、クッキーなんかにも使えるらしい。さらには中近東ではコーヒーにも入れるそうだ。カレーとクッキーとコーヒーに同じ香辛料がかかっているなんて、信じられないな。

炒めものがさわやかになってもなぁ

異国の地で、ある男が『これを食べるとすっきりするぜ』と言ってくれた不思議な味のガムみたいな、とにかく口の中いっぱいが草原になるような、過剰なさわやかさでした。どうやら炒めものには向かないみたいだ。このさわやかさはクッキーに入れるとおいしくなるのはよく分かる。でも、炒め物に入れてもまずいわけでは決してないです。たぶん気に入る人もいるんじゃないでしょうか。

カルダモンを加えると…

肉のうまさ       ★★☆☆ 2(−2)
野菜のうまさ      ★★★
 3(−1)
ご飯がほしくなるか? ★★★
 3(−1)

この香辛料の仕事ぶりを評価
過剰なさわやかさを売りにした新人。仕事は意外に雑だという評価も。

カルダモンはカレーに入れて煮ると美味いらしいです。炒めものは苦手のようだ。

花の絵の下にあるものがクローブの花のつぼみだそうです。確かにクギみたいだ。
豚肉野菜炒めのこの汁。めちゃうまです。

エントリーNo,3 クローブ

クローブとはフランス語で釘(クギ)を表すClavusに由来するそうだ。そこまで聞くと、日本人からとても遠い気がするが、さにあらず。実は日本でも江戸時代から香辛料として親しまれ、ソースのあの独特の香りはクローブによるもののようだ。

今日の『ベスト・オブ・うまい汁』

料理をしているときから美味そうな臭いがした。これはなかなか高級感のある食材ではないだろうか。
ただ、すぐおなかがいっぱいになりそうな気もする。満腹中枢を刺激する香辛料なのだろうか? それとも単にかけ過ぎてしまったのかもしれないが。

意外に肉より野菜のほうがぐっと美味しくなった気がした。あと、残り汁が美味かった。今日の「ベスト・オブ・うまい汁」だ。

クローブを加えると…

肉のうまさ       ★★★★ 4(0)
野菜のうまさ      ★★★
 3(−1)
ご飯がほしくなるか? ★★★★
 5(+1)

この香辛料の仕事ぶりを評価
スープが自慢のラーメン屋の親父は今日もいいダシ出ているラーメンを作ってる。

ちなみに、あとでしっかり調べると、単独で使うことはあまりないそうですよ。まあ、単独でもじゅうぶんおいしかったけど。

粒が粗い。
フライパンで蒸し中も粒のマスタードが見える

エントリーNo,4 マスタードシード

あのマスタードの元になっているのが「マスタード・シード」らしい。ということは、そうとう辛いんじゃないのか、と思うがそうではない。確かにそのまま粒のマスタードを食べると辛いが、マスター・シードはマスタードの粒を油でいためたものだそうだ。粒々の食感が味にどう影響を及ぼすのかも気になるところ。

肉も野菜もめちゃうま。「天然の焼肉のたれ」かも。

おそらくマスタードシードとガーリックの相性がいいのかもしれない。肉だろうが野菜だろうが関係なく包み込むうまみとちょっぴりとした辛味。これはまさしく、天然の焼肉のたれとでも言うべきか。今までと違い粒状なのでちょっとした食感を味わえることも嬉しい。

マスタードシードを加えると…

肉のうまさ     ★★★★ 5(+1)
野菜のうまさ      ★★★★ 5(+1)
ご飯がほしくなるか? ★★★★ 5(+1)

この香辛料の仕事ぶりを評価
どういうクライアントを相手にしようが自分の力を発揮するまでで、って感じのエリートビジネスマン

あと、粒が大きいので、調理中もどのぐらい入れたかをきっちり確認することができました。使いやすい。サンドイッチの具に入れてもカレーに入れてもよさそうだ。いい香辛料に出会ったぞ。

くだらないギャグを言いたくなる衝動を抑えております。
粉がぱらぱらっとしているのも特徴。

エントリーNo,5 タイム

ヨーロッパ原産の香辛料「タイム」は、魚料理・肉料理の香りづけに重宝される香辛料で、ヨーロッパでは「タイムの香りのする人」と言えば気品と勇気があふれた人、という意味を示すほど、愛されている香辛料だそうです。

味のある演技派俳優ってところか

なかなか美味い。さわやかで、それでいて、ちょっぴりほろ苦い。このほろ苦さが、もう一口、あと一口と食べたくなる美味しさだ。主演のお肉や野菜の芝居を決して壊さない、だけど存在感はある名バイプレーヤーみたいでした。

タイムを加えると…

肉のうまさ     ★★★★ 5(+1)
野菜のうまさ      ★★★★ 5(+1)
ご飯がほしくなるか? ★★★★ 4(0)

この香辛料の仕事ぶりを評価
主演の肉も、ヒロインの野菜も傷つけない、でも個性はちゃんと発揮する名バイプレーヤー。

ただおいしくなるだけでなく、殺菌・防腐作用もあるんだとか。一石二鳥ってやつですね。

奥深い香辛料の世界の入り口で。

最後に全部の香辛料をかけたものを作った。美味い、というより香辛料を食べているような気分だった。

奥が深い香辛料の世界の入り口で、香辛料って面白いぞということに気づいてわくわくした今回の記事でした。

何度も使われて、極限まで安っぽくなった言葉だけど、香辛料を知ることは料理2.0だと思った。今までの塩とかコショウとかで味付けしていた自分はなんだったんだろう、と思ったりもした。

今日の記事は料理の出来る人が読んだら「なんじゃそりゃ」というものになっているかもしれないが、とにかく今は香辛料の世界に興奮しているので、このテンションのまま今回の記事を締めたいと思う。


 
 
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