●こどもの国に迷い込んだ大人
別にいいじゃないか、こどもの国に大人が一人で来ても。
いきなり開き直っているようになってしまったが、一度そんな自覚をもってしまうと、さっきまで牛を見たり牛乳を飲んだりして楽しく過ごしていた気持ちを見失いがちになる。
こどもの国というだけあって、園内にある施設もこども向けだ。ことごとく「こども」と冠されている。そして、それによって自分が大人であることが際立たされる。
さらには交通安全を促す看板でも、きっぱり「こども優先」と表示。……ああ、さっきからこどもこどもって、一体なんなんだ! ここはこどもの国か!
そう勝手にキレそうになるが、実際にこどもの国なのだから仕方がない。
園内には家族連れがにぎわっていて、広々とした芝生で楽しく遊んでいる。それに対し、慣れない自分撮りをしたところ、妙に薄暗い写真が撮れてしまった。
記念に補正もせずにそのまま掲載。期せずして心の中身まで写ったのだろうか。
とぼとぼと園内のトンネルを移動する。闇に包まれて歩くとさらに気持ちが暗い方へと行きがちだが、前を見れば出口から光が射している。
さあ、実際にトンネルを出れば、光明が見えるのだろうか。
見えた!おっさんたちのグループだ!
一人ではなくグループではあるにせよ、構成メンバーは間違いなくおっさんのみ。他の家族や子供たちと合流したりしないか、しばらくの間観察していたが、決してそうしたことはなく、ずっとおっさんたちのままだった。
楽しそうに談笑しながら歩いていく。おっさんの地味な色合いと、草や木々の緑とのコントラストが美しい。
気を取り直して歩いていると、魅力的な遊具を発見。これまで見たことのない感じ、とてもおもしろそう。ただ、親子連れがすでに遊んでいたりして、大人一人では近寄りがたい。
そばにあった看板にも、「おともだちへ!」「おとうさん、おかあさんへ!」という表記はあっても、「ただのおっさんへ!」というメッセージはない。
さらには超長いすべり台を発見。どうしても遊びたくなってしまったので、遊んでいた子供たちが途切れた瞬間をついてすべる。行くぞー!
わー!わーわー!
とても楽しかったのだが、自分一人で遊んでいるため、楽しそうな私の様子を写真に収めることができない。
他におっさんが一人でも楽しめるものはないかと探していると、案内板に「マツタケづくり」とあるのを発見。マツタケが作れちゃうなんてすごいじゃないか。むしろおっさんが喜びそうな企画ではないか。
そう思って近づいてみると、工作…。これは大人一人で参加しちゃまずい。
もう少しだけ話を続けます。