やばいぞ
出てきたのは若い兵士二人だった。一人はガムかなにかをくちゃくちゃ噛みながら近づいてくる。何もなかったかを装ってその場を立ち去ろうとする僕たちに大声で話しかけてきた。
「おい待て、おまえいま写真撮ったろう。撮影パスを見せろ(in English)」
ないですごめんなさい(in my heart)
「ちょっとそこで待ってろ」
あ、なんかやばい。責任は完全にカメラを構えた僕にある。だけどたぶん追求されるのはこの半笑いのあほではなく、エスコートしてくれているCさんだろう。Cさんもこれには気付いている様子だった。
Cさん 「罰則とかあるんでしょうか」
兵士 「ちょっとわからないからまってろ。これから先いろいろ聞かれると思うが正直に答えたほうが身のためだ」
対策すら考えられないくらいに余裕を失い、僕たちはただただ立ち尽くしていた。そんな僕たちの前にポリスと書かれた白い車(日本でいうパトカー)が横付けされる。
やばい
さらにでかいシボレーが現れる。
やばい
シボレーからはインテリっぽい女性兵士が出てきた。最初の若い兵士二人が状況を説明して去っていく。どうやら処分を彼女に任せたようだ。これは少し安心した。実は最初の二人の兵士からはいかにも「めんどくせえからやっちまえよボブ」的空気を感じたから。女性兵士は無線で上司らしき人にいろいろ説明している。
「・・イエス、デジタルカメラ、ノー、ノーパス・・」
一瞬でテンションが底を打ったその場の空気を和らげようと(僕なりに一応責任を感じて)、中川さんは24を見ているのだろう、こういう非常時の対処はなにかないものか、と聞いてみたのだが「・・・ちゃんと反省したほうがいいですよ」と突き放されてしまった。なんてまっとうな意見なんだ。
女性兵士はきつい視線で僕たちを一通り見渡した後、Cさんとパスとを交互に見ながら言う
「撮った写真をすべて見せなさい」
ごめんなさい、知らなかったのです
「飛行機の類が写っている写真は全部消去してください。他にはないですか。携帯でも撮影しませんでしたか」
震える指でデジカメのデータを消し、モニタを女性兵士に見せる。確認途中で先日のエクストリームアイロンの画像を見られてしまったが彼女は笑わない。デイリーの読者ではないのだろう。この記事用になんとか一こまくらいごまかして残せないものかと思ったが、さっき言われた「正直にしたほうが身のためだ」を思い出し、やめた。
「他に撮影した人はいないか」
いないです
「ほんとに」
ほんとですってば
いちおう彼女の言っていることは分かるのだが、こちらからの微妙なニュアンスが伝えにくい。日本だったら冗談とかいってへらへら笑いながらその場を去っていただろうが、ここはアメリカだ。言い訳なんて通用しない。結局寒空の下、数十分捕らわれの身になった僕たちは、戦意を全てそがれた状態で開放された。 |