●タイムカプセルを埋めに行く
目星をつけていた場所に移動する。なにしろ穴を掘るのだ、勝手にそのへんでやったら怒られるに決まっている。なのでちゃんと埋める場所の候補をさがしていた。そしたら案外近所に、冬にはまったく人の姿のない小さな公園があった。まさに穴場である。
いま、おもしろいこと言いましたよ。
公園へとつながる橋の渡り口には雪がどっさりと積まれていた。やはりここ最近は、誰も出入りしていないようだ。おかげでものすごく雪深い。長靴が意味をなさない道なき道を、梅の入っていそうなタイムカプセルとスコップを抱えて突き進む。なんとか目的地までたどりつき、とうとう穴掘り開始だ。
一見やる気のみなぎった写真だが、じつはこの直前、ほかの場所にスコップを突き立てたら下がコンクリートで両腕に衝撃を受け、少なからずテンションが落ちている。
穴掘りというより雪かき
まずは大量に積もった雪をかき捨てる。こんなに深いんだったら雪の中に埋めてもいいんじゃないのとおもうが、1週間後にもし雪が溶けていてタイムカプセルがすっかり顔をだしていたらあまりに興ざめなので、やっぱり土の中に埋めるべきだ。
雪の下に眠る大地はカチカチに固くなっていた。しかも枯れた草が表面を覆っていて、掘り返すのが容易でないのだ。どうやらぼくは穴掘りを甘くみていた。
寒さのせいもあり、仕事がはかどらない。 ちくしょう、東北の冬はぼくのおもいでづくりすら阻むというのか
ふと川を挟んだ対岸に目をやると、自転車を押した男性がこちらを眺めていた。どんなふうにみえているのか。真冬に大人がどうしても公園で遊びたくて雪かきをはじめたとでもおもわれてないだろうか。
●カプセルは一足先に未来へ
そうだ考えてる場合ではない。もし、いまのおじさんがぼくを不法投棄にきた人間と勘違いして通報でもしていたら大変だ。
「来週掘り返すタイムカプセルを埋めていただけです」
と言って、ああそうでしたかと了解してくれる警察官がいたらぼくは友だちになりたい。
カメラを意識しすぎて埋め方が不自然になってる人
さて、場所を適当に掘りはじめたため、このままでは1週間後にどこへ埋めたかわからないという事態が起きてしまうことに気づく。とりあえず近くの樹からの歩数を数えて目安とすることにした。
ちょっとざっくりすぎる気もするが、これで安心だ。
さて、タイムカプセルという一連の作業のあるピークは、詰めるものを選んだりつくったりする準備段階にあるとおもう。未来について考えるのはその間で、実際に穴を掘って埋めてしまえば次にお目にかかれるのはふつう何年も先のことであり、その時点でタイムカプセルに対するテンションは落ちざるをえない。