神保町の古本屋街や合羽橋の道具街など、東京には「○○街」と呼ばれる街がいくつかある。
専門的な店が軒を連ねる「○○街」。普通の店では見かけない物も揃えてあり、それぞれの道を専門とする人たちにとっては御用達なのだろう。門外漢にもちょっとした街観光として楽しい。
そんな「○○街」なのだが、実際に行ってみると、その街の専門とは関係のない、気になる店を見つけることがある。
特化された店の居並ぶ中、異彩を放つ一軒。今回はそうした店を訪れてみた。
(小野法師丸)
●飲み屋街で出会った占い屋
まず訪れたのは、東京・足立区の北千住。都心からやや離れた古くからの宿場町だが、近年は開発が進んで大きな駅ビルや若者向けのデパートもある街だ。
駅前には歩行者用のデッキもあるなど、最近の街風に発達しているのだが、そうした間をちょっと脇に入ると、すぐに昭和的な様子が現れる。
駅そばの道を一本裏に入ると、もうこんな風になっている。かなりたくさんの飲み屋が並んでいて、事前情報なしには店を選べないくらいの充実ぶりだ。
先ほどの最近の街といった様子のところから、ほんの少し歩いただけでの変貌に少し驚きながら歩いてみる。
これだけ密度が高いと少々圧倒される。それでいて軒先で思い切り魚を干している店もあったりして、フランクな感じも漂う。人はともかく、猫に持っていかれたりしないのだろうか。
こんな様子の街の中、「超高密度」の写真を撮った地点のすぐ前に気になる店を見つけた。
マッチしているようでもあり、異彩を放っているようにも見える占い屋だ。最近よくあるしゃれた感じの店ではなく、あくまでオールドファッション。
占い案内の張り紙を見ると、比較的気軽な値段で見てもらえるようだ。金縛りにはあわないのだが、診てもらいたいことはいろいろある。少々 緊張しながら入ってみた…。
引き戸を開けた中の様子に一瞬たじろいだ。裸電球を吊した入り口の奥は、先生に占いをみてもらうスペースでありつつ、生活空間としての要素も混じっているようで、独特の雰囲気が漂っている。
先生の「占いですか?」との問いに「は、はい」と答える。
最初に料金を明確に示してくれて、占いは初めての私もほっとする。撮影にも応じてくださり、この雰囲気を伝えることができてよかった。
さて、まずは名前の字画と手相から見ていろいろと告げてくださった。
「字画よし」「長生き」「親にとらわれず自由に進む」などなど、次々に粛々と言い放つ。私の爪を見ておっしゃるには、「疲れからの回復がややよい」とのことだった。
特に「愛情が深い」「しっかりした結婚線がある」との診断は、横に妻がいたこともあってナイスプレーだ。
一通りの基本的な占いが終わって、「何か特に知りたいことは?」との問い。少し迷って、「仕事は今のまま続けていってよいものでしょうか?」と、聞いてみた。
神妙に木の棒を使って占いをされる先生。結果は「仕事は今のままでよい」とのこと。あー、ほっとした。
街の様子と店構えの雰囲気とで入るのにドキドキした占い屋だったが、とても詳しくいろいろな話を聞かせてくださり、なんとなく前向きな気持ちで店を後にすることができた。