その音とは
エオリアン・ハープは自分で演奏する楽器ではないので、どうしてもこの「待ち」の時間が生まれる。一体どんな音なのか、期待に胸がふくらむ。この時間、風を待つ体験が、この楽器の楽しみでもあるのだ。
そして待つこと数分、心地よい風とともに、ゆっくりと音が鳴り始めた。
風の音と一緒に、フィーーーーン、という、なんとも不思議な音が立ち上がってくるのがきこえると思う。金属的で少し恐ろしいような、それでいて浮遊感のある寒色系の音だ。
そして風が去ると音も止み、人の声や車の音が戻ってくる。ちょっと意外な音にどぎまぎしつつも、インタビューを続けながら、ふたたび風がやってくるのを待つ。
風の強さや方向によって、音の立ち上がり方や、音程も変わってくる。どんな音が鳴るかは風しだい。さきほど「日本で言えば風鈴」と書いたが、『スーッと鳴り始めてスーッと消えていくエオリアンハープの音色は、風鈴以上に「風そのもの」に近い存在感』(杉山さん)。まさにそのとおりで、インタビューしながらたまに思い出したようにこの音が鳴りだすと、吹き抜けていく風の存在が、よけいに色濃く感じられるのだ。 |