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フェティッシュの火曜日
 
コーヒーを飲むこと以外は、許されない喫茶店

これが北山珈琲店だ

ということで、編集部の工藤さんと再びやってきました、北山珈琲店。
ふだんは撮影禁止の店内、こんなふうになっています。


写真ではわからないけれど、店内はコーヒーの香りのケムリでもうもうとしている

テーブルの奥にはところせましと置かれた豆袋が鎮座。20年以上経っている豆(オールドビーンズという)も保管しているそうだ

ふだんは写真はお断りです

立ちこめるケムリの出所はこいつだ。焙煎器

店に入るなり、お店を全肯定する工藤さん


ものすごくうまいアイスコーヒー

店内に充満している焙煎のケムリを味わっていると、マスターがアイスコーヒーをごちそうしてくれた。


アイスコーヒー1050円。この澄んだ氷の色に注目

ひゃー、なにこれ?って笑ってしまうほどうまい
口にした瞬間、工藤さんの目尻も一気に下がって、見ていてびっくりした

そう、ここまでちゃんと書いていなかったが、北山珈琲店のコーヒーは、信じられないほどにうまいのだ。僕は日常的にコーヒーは飲むが、味にこだわる方ではない。しかし、ここのコーヒーは全く別物だったのだ。


今まで僕が飲んでいたコーヒーは左側だった。右は北山珈琲店のコーヒー

僕は、北山珈琲店のコーヒーを飲んで、「初めてメガネをかけた時のこと」を思い出した(僕は近視で今、コンタクトをしている)。それまで視力が弱い状態から、メガネをかけて「あれ?世界ってこんなにあざやかだったのか?!」ってびっくりしたのだ。それと同じくらいの感覚的な衝撃が、コーヒーを飲んだ時に起こったのだ。


シロップ入れると、ゴージャスなケーキを食べているみたいな幸福感がある。コーヒー飲んでいるだけなのに。

飲みかけのブラックコーヒーにマスターの奥さんがシロップとミルクを入れてくれた。こうすると全く別の味わいだ。

工藤さんが「サンリオ・みんなのたあ坊」みたいな顔をしながら、 「ふわわ…」とか「はあああ…」とか感嘆ともため息ともつかないような音を出している。あれ、この人大丈夫かな、とか一瞬思ったが、口には出せない。僕もたぶんそんな感じになっている。


なんでこんなにうまいのか

一体、このコーヒーは何なんだろう?コーヒーについて門外漢の僕も興味深い。


マスター。コーヒーをいれて40年

---すごくおいしいコーヒーですね!

「昔は、『アイスコーヒーは邪道』なんて言う人も多かったですけれどもね。邪道じゃなくておいしいんだよ、って言いたかったですね」

「私は『どうしたらおいしいコーヒーができるか?』ってずっと考えているんです。それでね、私が一方的に作るんだと、限界があるんですよ。お客様と私の共同作業って部分もありますよね。同じ店内でも、お客さんによって飲んでいるコーヒーは厳密に言うと別物になっていると思います。それはわざとそうしているんじゃなくて…お客さんから、ビンビンに伝わって来るものがあるんです。」


焙煎作業を行う息子さん。じっと気配をうかがって豆を焙煎機から外すタイミングをうかがっている。

---(ケムリを見ながら)焙煎は毎日しているんですか?

「毎日ちょっとづつしていますよ。焙煎した次の日に飲んでもらえるように。」

「ただ、焙煎後も味が悪くなるということはないですね。むしろ味が練れてきて、1ヶ月くらいがちょうどいいようになってますね。冷蔵庫に入れて実験しているんですが、焙煎後1年くらいでも遜色ないですね」

「と…いうよりも…実はおいしい豆はいつ飲んでもおいしいんです。挽いて粉にしちゃうと劣化は早いですけれどね」


この話を聞いている時に、工藤さんは、「『焙煎後は直ぐに飲まないと風味が落ちる』というのが常識って聴いていたのにー」って嬉しそうにキャッキャ言っていた。ちょっと女子高生みたいだと思った。そしてこのお店が雑談を店内で禁じている理由が少しわかった気がする。


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