特集 2016年6月23日

すてきな公開空地めぐり

街のオアシス、公開空地(こうかいくうち)
街のオアシス、公開空地(こうかいくうち)
街のなかにあるぽっかりしたスペース、公開空地。

広場みたいでありがたい存在のはずなんだけど、いまいち活用されてないというか、気づかれてないような気がする。

いくつかめぐってみました。
1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

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> 個人サイト ツイッター(@mitsuchi)

公開空地ってなによ

公開空地っていうのは、例えばこんなやつだ。
どーん
どーん
ビルとかマンションの隣にある、広場っぽいところ。

ここは、隣に立っている山王パークタワーという建物の敷地内なんだけど、だれでも自由に入れるようになっている。
近くにこういう案内板が立っている
近くにこういう案内板が立っている
建物があんまりぎゅうぎゅうに並ぶのは嬉しくないので、空き地を残してスカスカにしてくれたらその分高く建ててもいいよ、というのがざっくりと公開空地の趣旨だ。

こんなふうに広場みたいに大きな公開空地がある一方で、ほとんど歩道と区別がつかないようなものもある。
たとえばここ
たとえばここ
この中に実は公開空地がある。どこでしょう。
正解はここ
正解はここ
この赤く囲ったところだ。こうなるともうほとんど隣の歩道と区別がつかない。こういうタイプのものは歩道状空地と呼ばれたりする。

こういうタイプもよくある。
マス目状の植栽
マス目状の植栽
「なんか背の低い木がマス目状に植えてある」。公開空地あるあるである。
ベンチ状のものがあるけど誰も座ってない
ベンチ状のものがあるけど誰も座ってない
「アクティビティの誘発」という言葉がある。広場業界では「ウィンウィン」並みにベタな用語らしく、ようするに「なんかしてもらう」ということである。

ここではベンチに座ってもらいたい。でも誰一人アクティビティを誘発されてない。これも公開空地あるあるである。
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歩道状空地ケーススタディ

いろいろな公開空地があるなかで、個人的に好きなのは歩道状空地である。その歩道っぷりがいい。実例を神奈川県の武蔵小杉で見てみよう。
ふつうの道に見えますが
ふつうの道に見えますが
よくある車道とその両脇の歩道に見える。でも歩道に見えるやつは実は2つとも公開空地である。
歩道に見える部分はぜんぶ空地です
歩道に見える部分はぜんぶ空地です
1ページめで紹介した歩道状空地は、それでもその脇に本当の歩道があった。ここは違う。空地そのものが本気の歩道である。車道の反対側もそう。

だからしばらくまっすぐ歩くと、こんなふうになる。
突然の行き止まり
突然の行き止まり
私有地の一部がたまたま歩道っぽくなっていただけなので、境界まで進めば当然行き止まりになる。
人が寝てたりもする
人が寝てたりもする
行き止まりでアクティビティを誘発されている人もいる。公開空地とは「歩行者が日常自由に通行または利用できる」場所なのだから、これで正しいのだ。

じゃまにならないよう、車道に出よう。
しばらくは歩道のない道が続くが、
しばらくは歩道のない道が続くが、
またすぐ歩道が現れる
またすぐ歩道が現れる
感のいい人は気づいたかもしれないが、この歩道もまた奥のマンションに付随する公開空地である。
さらに進むと右側にも歩道が現れる
さらに進むと右側にも歩道が現れる
右側の歩道っぽいやつも、マンションの敷地の一部だ。おかげでこの区間も両側が歩道っぽくなっている。

つまり、この道には最初から最後までいわゆる歩道はない。歩道に見えるものはぜんぶ公開空地、つまり私有地である。
「このへんは田んぼだったわよ」
「このへんは田んぼだったわよ」
地元の方に聞いたところ、この道ぞいは昔は工場が多く、歩道が全くなかったらしい。

マンションやオフィスビルが建つにつれて、その周辺に少しづつ公開空地として歩道が繋がっていったのだ。そういう行政の方針なんだろう。
この道の赤い部分が、歩道状空地。ここまでつながってきた。
歩道を歩く親子
歩道を歩く親子
その先で車道へ
その先で車道へ
いつか歩道がつながるといいなーと思う。
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秘境!森みたいな公開空地

いっぽうで「もはや森だろ」みたいな公開空地もある。しかも東京都港区である。
愛宕グリーンヒルズ
愛宕グリーンヒルズ
なんか丸っこくて六本木ヒルズみたいに見えるけど、これは違うやつで「愛宕グリーンヒルズ」という。これの足元がまあグリーンなのである。
こちらの入口を登っていきますと、
こちらの入口を登っていきますと、
はい出た!
はい出た!
いったいどこの秘境よ、みたいな場所に出た。薄暗いし。

ここの再開発を手がけた森ビルは、「緑被率」という敷地に占める植物の割合を大事にしている。なかでもここは「グリーンヒルズ」というだけあって、本当に森みたいである。
石垣もあるし
石垣もあるし
仏像もある
仏像もある
謎のほこらもある
謎のほこらもある
愛宕グリーンヒルズは、もともとそこにあったお寺から相談された森ビルが、お寺を含む一帯を再開発した場所だ。

なので、こんなふうに仏像やほこらが建っていたりもする。
「森の小道」みたいなところを登っていくと、
「森の小道」みたいなところを登っていくと、
なにこれ!
なにこれ!
エレベーターにつながってました
エレベーターにつながってました
エレベーターつきのラグジュアリーな公開空地なんてみたことない。さすが森ビルである。

愛宕グリーンヒルズ、いま調べたら空いてる部屋は安くても賃料46万円、敷金4ヶ月だった。すごい。
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ほぼ抜け道!細すぎる公開空地

森の次は都会の抜け道みたいなやつを紹介したい。
ここにも公開空地が
ここにも公開空地が
ただのビルに見えるけど、ここにも公開空地がばっちり写っている。
ビルの左脇の、通路みたいなところだ
ビルの左脇の、通路みたいなところだ
こういう抜け道状の空地はとても便利だと思う。

ふつう東京とかだとビルとビルの間にすきまがなくて、向こうに渡れない。でもこういう場所があれば渡れる。それに日陰になって、休むことができる。
奥のほうでアクティビティを誘発している
奥のほうでアクティビティを誘発している
最初のページで「ベンチがあっても座ってない」と書いたけど、あれは大通りに面してみんなに見られる場所だったからだと思う。あそこに座る勇気はなかなかない。

でも抜け道みたいな所なら休みたくなる。
ここも、奥まった場所だから座りやすい
ここも、奥まった場所だから座りやすい
ビルとビルの隙間の公開空地。ここを狙うのが通である。

最後に、ここはどう使えばいいんだ?という場所を紹介したい。
謎の空間の入口
謎の空間の入口
入ると、
入ると、
すぐ出口。
すぐ出口。
編集部の石川さんが写真を送ってくれた場所で、「入口から出口まで直線距離で3mくらいでしょうか」とのこと。

もしかすると公開空地じゃないかもしれないんだけど、マンション側の心意気だろうか。最高の小道だと思う。

奥まった場所がいい

最初のページで紹介したようなだだっ広い空地は、見ているとほとんどの人はただ通り過ぎるだけで、だれも広場としては使っていない。

よくつかわれているのは、最後にみたような奥まったちょっと狭い場所だ。奥まった場所、いいなと思う。
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