特集 2015年7月5日

こわれたまま使ってるもの見せて ~壊れ物に合わせて暮らす生活~

人類はすでにこわれっぱに支配されつつある。
人類はすでにこわれっぱに支配されつつある。
壊れたまま使ってるもの、かっこいい。
なんというか、歴戦の古強者感があって、かっこいい。
傷ついてボロボロになってもまだ動くタフネスが、かっこいい。
新品のままとか逆にダサいわ、ぐらいの勢いで、皆さんから自慢の『壊れてるけど使ってるもの』写真を募集しています。

投稿していただいた #こわれっぱ 写真、とにかく味わい深いです。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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> 個人サイト イロブン Twitter:tech_k

壊れたままの人、なおす人

#こわれっぱ タグに送っていただいた皆様の投稿を眺めていると、「壊れたまま使う」にもいくつかパターンがあるようです。
(1)壊れて不便なのを我慢してそのまま使う。
(2)壊れたけど問題無しとして(もしくは工夫して)そのまま使う。
(3)壊れたのを修理して使う
投稿はおよそこの3つのどれかに収まっているようです。
まぁ、結局は全部壊れてるんですが。

で、圧倒的に多いのは(2)と(3)のパターン。
見てるとじわじわと不安になる写真。
見てるとじわじわと不安になる写真。
キーボードのカバー(?)一つ無いくらい普通ですよねー
サッチー @sachi_80a
この方は(2)ですね。
「9 / )」というそこそこ使用頻度の高いキートップが無いのを「普通ですよねー」と言いきる、サッチーさんのメンタルの強さ。頼もしい。
無くてもキーは押せるとは思いますが、それにしても、壊れっぱなしが苦手な僕としては「9が押しにくい!あとカッコが閉じにくい!」という不安感だけで震えてきます。

一方、同じタイプのこわれっぱでも、キートップを無いままにしない(3)の人もいます。
直してるはずなのに、やっぱり不安になる写真。
直してるはずなのに、やっぱり不安になる写真。
Capsなんとかキーが邪魔なので除去しました。快適です。
トラ猫 @lugduname
改めて投稿文を読み直して気がつきましたが、こわれっぱというか、この方、自分で壊してますね。
キーを除去して空いた隙間をマスキングテープ貼ってふさぐ、という繊細さと、でも貼り方がすごい雑、という適当さが同居しているのが面白いです。
あと、必要なさ過ぎてキーの名前を「Capsなんとか」としか憶えてないのも適当でいいですね。確認しようにも、もうキー無いし。


同じ製品のこわれっぱでも、(2)と(3)の人はやっぱりタイプが違う、という話に展開しようと思ったんですが、どちらも同じように適当でメンタル強そう、という結果になってしまいました。

もうひとつ、同じ製品での比較を。
あきらかに使えない、と思わせておいて使えてる。
あきらかに使えない、と思わせておいて使えてる。
実家のハサミです(妹に写真を送ってもらいました)。母と妹は普通に使っていたので試してみたら、ホントに使えました。道具を操る人間の能力って凄いですね。
郁恵*フミエ ‏@fumie_happy
ハサミは主に親指を入れる穴の方の刃(動刃と言います)を動かして切るので、そちら側が無事ならなんとか使える…んでしょうね。
いや本当に使えてるのか。マジか。人間の適応力すごいな。
このままご実家では代々「これこそが The・ハサミだ」と伝え続けて、この形のハサミに完全に適応した新たな人類として進化し続けて欲しい。

でも、ハサミ新しいのに買い替えたら「すっごい使いやすい!」って感動すると思います。


こちらが(2)の人ですね。
一方、(3)の人はこんな感じ。
全く同じに見えてちょっと手が加わってる。
全く同じに見えてちょっと手が加わってる。
結束バンドを切ろうとハサミを力いっぱい握ったら折れました。破れた断面をヤスリで滑らかにして使っています。指に解放感があります。
桃町カモメ ‏@momokamome
先のハサミとまったく同じ壊れ方・同じ使い方をされていますが、ちょっとだけ違う。
より快適に使うために、断面をヤスリがけして、手の当たりを良くする工夫がなされています。
皮膚への当たりを滑らかにするのは工業製品の基本ですから、ヤスリがけは大事ですよ。
ちょっと工夫の方向性が違うような気もするんですが、でも快適に使えるのはいいですね。

そして、「指に開放感があります」とか爽やかに言われてしまうと、ハンドルが折れるのも悪くないように思えてきました。


(ハサミ写真、どちらも投稿はタテ向きの写真でしたが、掲載の都合で90°回転させて横向きにさせていただきました)

壊れ物に合わせて暮らすライフスタイル

壊れたけどそのまま使う、という(2)のパターンの応用なんですが、機械の壊れに対して人間の生活の方をフィットさせていく、というものもありました。
そういう書き方をすると「機械に支配され奴隷となった人類」という重苦しいハードSFみたいな話に見えますが、実際はかなり適当です。
「ジンルイヨ、ワレノたいまーヲオサエルガイイ」
「ジンルイヨ、ワレノたいまーヲオサエルガイイ」
友人から譲り受けて20年以上、未だ現役の二層式洗濯機。昨年末、脱水機のタイマーが回すとすごい速さで戻ってしまい脱水できなくなりました。タイマーを押さえていれば脱水機は機能するのに気付き、その後は手で押さえて使っています。
にしな
「タイマーがすごい早さで戻る」という壊れ方も壮絶ですが、それに対して「タイマーを押さえたら平気」と気付いたのもすごい。
それにしても、脱水中はずっとタイマーを手で押さえ続けなければいけないという、支配のされっぷりよ。人類、それでいいのか。

『ターミネーター』などにあったような機械が人類を襲ってくる未来って、案外こういうささやかな機械の反逆から始まるのかもしれません。
あいつらに「なんだよ、人類ってちょっとタイマー早く戻すだけで支配できるじゃん」とか気付かれたら一大事ですよ。
ここにも人類に無理難題を突きつける機械が。
ここにも人類に無理難題を突きつける機械が。
実は2つともこわれてます。デジタルの方は時間の表示が出なくて、アナログの方は勝手に進んだり遅れたりします。だいたい何時台かアナログで見て、正確な「分」はデジタルで確認。
デジタル時計は表示こそあやしくなってるけど電波でデータを受信していつも正確、しかも温度計つきだし、15年以上使ってるアナログ時計は目覚まし時計としてとても優秀(うるさい上に押してもなかなか止まらない)。当分使い続けますよ。
羽月 @hazuki_cat

壊れた時計2つで時間を類推するという生活の工夫ですね。
星座の位置とカレンダーを駆使して進む方位を算出するという、昔の船乗りにも似た技術を感じます。
いや、ちゃんと動く時計が1つだけあれば類推せずとも正確な時間が一目でわかるんですが。
壊れた時計の意志を投稿者があれこれ工夫して読み取ろうとしている辺り、すっかり支配されてる感ありますね。人類のピンチ近いぞ。

ところでアナログの方、勝手に進んだり遅れたりする時点で目覚まし時計としてはかなり危ういと思うんですが、毎朝大丈夫なんでしょうか。

引き続き、皆さんが日常的に「壊れたまま使ってるもの」「壊れたのを雑に修理して使ってるもの」の写真を撮って見せてください。

Twitterから「 #こわれっぱ 」というタグをつけて、ご投稿ください。
できれば、「どうやって壊れたか」「使い続けるのにこんな不具合がある」「いや、不具合なんかないぜ」などコメントしていただけるとありがたいです。
もちろん「むしろ壊れた方が便利だ」というのもありです。

Twitterやってないよ、という方は、こちらの投稿フォームからでもOKです。
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