バネの仕込まれた底の部分を押すと、へにゃっと紐が緩んでだらしない姿になるあれです。
その脱力人形を等身大で作ったのが、冒頭の写真である。
動いている姿はこちら。
ちょっとした聖職者なら、呪い殺せそうなものができてしまった。
なぜ神様っぽいデザインになったのか疑問に思った方もいるだろう。
普通の脱力人形は、四つ足の動物であることが多い。
きっと、自立しやすくて安定した形だからだろう。
しかし、今回作りたいのは、等身大の人間。
二本足の人間を自立させるためには、凄まじく強いバネと糸が必要になるはずだ。
何か背もたれみたいなものがあれば、安定するのだろうか。
でも、あからさまに背もたれがついてたら格好悪い。
そんなわけで「あ、十字架っ!」とあいなったわけである。
磔刑に使えるくらいの大きさの十字架を作ったことがある人は、首がもげるくらい頷いてくれると思うのだが、十字架を作るのは本当に時間がかかるし面倒くさい。
そんな制作過程、知りたくねぇよ、というモニター越しのあなたのご意見はごもっともなのですが、学園祭のおばけ屋敷なんかでも使えるノウハウを編み出したので、紹介させてください。
神を作ります。
まずは、おおざっぱに設計を行う。
必要な木材の寸法をメモ帳に書いたら、ホームセンターの人に渡して裁断をお願いする。
今日の気温は、35℃。
立っているだけで汗が吹き出る。
そんな中、ホームセンターのおじさんが黙々と木材をカットしてくれている。
ありがたさがすごい。
しかも。このカット代金、ボランティア活動か何かなのかな、というぐらい安い(1カット数十円)
かなりの量の加工をお願いしたので、全てカットしていただくのに40分くらいかかった。
カット代金は、600円
もしかすると、もしかするとなのだが、10000円くらいカット代金を払えばこのおじさんは、過労で倒れるかもしれない。
本当にありがたいサービスである。
(この後、こちらの計算ミスで、カットしていただいた木材の大部分の寸法が間違っていたことが判明した。自分で泣きながらノコギリで切った)
木材はデカすぎて普通の車に乗らないので、ホームセンターの軽トラをお借りする。このレンタル代金も無料!(1時間)
すごいぞ。ホームセンター!
材料が揃ったのでインパクトでガガガっと組み立てる。
あいた隙間に木パテを塗って埋める。
ペンキで下地を作ってから、金色に塗る。
海水浴やバーベキューなど楽しげな投稿がSNSに吹き荒れる中、僕はひたすら十字架を作っていた。
公園にいるのは、夏休みを持て余しているのだろう、つまらなさそうにフェンスに腰掛けている小学生と、ベンチでスヤスヤ寝るホームレスのおじさん、そして僕だけだった。
続いて神様的なものを作ります。
神様の材料は、角材と新聞紙とガムテープ。
角材を芯材に、新聞紙をガムテープではりつけ、肉付けしていく。
近年稀にみるゴミっぽさ。
しかし、問題無い。
脱力人形には服を着せる予定なので、体の表面は見えなくなるのだ。
手の部分は、デッサンモチーフによく使われる木製の手。
当初はホラーグッズなんかによくある、「ちぎれた手」を買って、色を塗りなおそうとしていたのだが、残念ながら右手しか売ってなかった。
つづいて、顔。
小学生用のお面キットに紙粘土を盛りつけて作る。
紙粘土もついて1000円くらいだった。
粘土が乾いたら、エアブラシで色を塗る。
あれ?
あれれ?
なんかこれ
こわー!
どことなく首が折れて絶命している松崎シゲルのようにも見える。
人形は新聞紙で作っているのだが、結構重い。
重みによりテグスがビンビンに張られている。
指ではじいてみると、「ベンベンベーン」とベースのような音がする。
テグスは両手首と頭、計三ヶ所にとりつけられているが、それぞれにかかっているテンションが違うので、はじく部分によって音色が変わる。
深夜4時頃にあたりにこだます、抜けのいい重低音。
せっかくなので、動画でもご覧ください。
脱力人形をつくって
最後になったが、実はこの脱力人形、会社の上司が主催するパーティーの大道具である。
「3メートルぐらいの神さまつくって」という理不尽との戦いの記録だったのだ。
神さまの顔のモデルだって、上司の上司である。
中世ヨーロッパで横行していそうなパワハラである。
このパワハラ人形のお披露目は一週間後。
完成するころには、目が光るなどの機能も搭載される予定である。
終わったら、必要以上にメッコメコにして捨てたい。