特集 2012年11月17日

巻き寿司の可能性を見極めたい

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最近、僕がちくわぶで燻製を作ったりしているのをどこからか伝え聞いたのか、遠くに住む親から「食べ物で遊んではいけない」と怒られた。
それが40歳になる息子に言うことか。大人の説教なんてくそくらえだ。食べ物を無駄にしてはいけないのは当然だけど、遊んで何が悪い。
食べ物で遊んで、その後ちゃんと美味しくいただけたらそれは素晴らしいことじゃないか。2倍お得じゃないか。
よし、今まで以上に料理で遊んだ後に、美味しくいただくことにしてやるぞ。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

前の記事:猫料理を食べに行った

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君はアート巻き寿司を知っているか

アートと巻き寿司。一見して何かの比喩表現なのかと思ってしまうが、そうではない。そのまんま、アートな巻き寿司、なのである。

作っているのは、「たまちゃん」こと清田貴代さん。
「アート表現の一つとして『巻き寿司』を作り『にっこり寿司』と命名してブログで公開しつつ、イベントやワークショップでは巻き寿司作りを通してモノを作る楽しさやコミニュケーションのきっかけ作りになれば、と活動しています」
と語る、巻き寿司アーティストである。

『たまちゃんのにっこり寿司』
「アート巻き寿司、面白いだけじゃなく、社会や常識に対してメッセージを込めて巻いています」
「アート巻き寿司、面白いだけじゃなく、社会や常識に対してメッセージを込めて巻いています」
たまちゃんのアート巻き寿司をブログで拝見して、クラクラきた。
これは絶対に楽しいだろう。
「いいね!」寿司、いただきました。
「いいね!」寿司、いただきました。
「龍安寺の石庭」寿司。ワサビと一緒にわびさびを巻き込んだ。
「龍安寺の石庭」寿司。ワサビと一緒にわびさびを巻き込んだ。
寿司を切った中から出てくるのが「カップ麺」
寿司を切った中から出てくるのが「カップ麺」
これぞアート。フェルメールの「青いターバンの少女」寿司。
これぞアート。フェルメールの「青いターバンの少女」寿司。
今回、たまちゃんにメールで取材を申し込んだのだが、それに対して返信メールに添付されていたのが上の「いいね!」寿司の写真だった。
取材OKの返事を寿司でいただいたのは、人生初めての体験である。これはテンション上がるわ。

タイミング良くアート巻き寿司のワークショップが開催されるとのことで、そちらにお邪魔して、まずは巻き寿司の基礎を教えていただくことにした。そして、最終的には自分で好き放題に巻いてみるのだ。

本気で寿司を巻く決意

たまちゃんのアート巻き寿司ワークショップは、表参道のおしゃれなスペースで開催されるらしい。アートで巻き寿司で表参道。いろいろな要素が混ざりすぎて、ワケの分からないままにすっかり楽しくなっている。
表参道のおしゃれビル(ここは会場ではない)の前で気合いを表明。
表参道のおしゃれビル(ここは会場ではない)の前で気合いを表明。
今回は服装にもちゃんと気を遣っている。
寿司だけに、ちゃんと魚柄のシャツを選んで着て来た。どうだ、この本気の入れ込み具合。正しく食材に敬意を払った寿司フォーマルである。
このシャツを買っていて良かったと心から思った
去年、知人宅で海鮮寄せ鍋パーティーにお呼ばれした時用に買った。
去年、知人宅で海鮮寄せ鍋パーティーにお呼ばれした時用に買った。

巻く前に、間違いに気付く

会場は、インタビュー・カルチャー・マガジン『SWITCH』の出版社、スイッチ・パブリッシングの地下にある、かっこいいカフェスペースだった。
正直、かっこよすぎて個人的にはかなりのアウェー。入った瞬間、自分が何をしに来たのか一瞬見失った。
正直、かっこよすぎて個人的にはかなりのアウェー。入った瞬間、自分が何をしに来たのか一瞬見失った。
カウンターに山積みの「すしのこ」(粉末寿司酢)と巻き簀を見てようやく我に返る。
カウンターに山積みの「すしのこ」(粉末寿司酢)と巻き簀を見てようやく我に返る。
ところで、勘の良い方ならすでにお気づきかも知れない。僕もこの時点ぐらいで気がついた。
巻き寿司に魚って、あまり巻かない。
アートの要素が加わったらなおのこと魚は巻かないような気がする。

魚柄シャツ、轟音と共に空振りである。
おしゃれビル前の気合いポーズとは対極の、しょんぼり感あふれる手の配置が見所。
おしゃれビル前の気合いポーズとは対極の、しょんぼり感あふれる手の配置が見所。
さらに、この直後に他の参加者の方々の「エプロン、持ってきた?」「昨日新しいの買ったよ」という会話を漏れ聞き、ちゃんと前日のうちに準備していたエプロンをうっかり自宅に忘れて来たことにも気づいた。

さあ、魚柄シャツのまま巻き寿司を巻くことにしよう。巻く前に涙を拭こう。
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テーマは『叫び』

めそめそしているうちにワークショップが始まった。
今回でアート巻き寿司ワークショップは4回目。前回は『春のはんなり舞妓はん』だったそうだ。
さて今回は…というタイミングでたまちゃんが会場入口にあったボードを手に取った。
今回のテーマはこれです。
今回のテーマはこれです。
ムンクの『叫び』を巻きましょう。
ムンクの『叫び』を巻きましょう。
今回のテーマは『ムンク!?こころの叫び』とのことで、たまちゃんの見本巻き寿司写真に会場から「おおお」と声が上がる。面白そうだが、はたしてこれがちゃんとワークショップの時間内で作れるのか。
このタイミングで言うことではないが、僕は巻き寿司作り初体験なのだ。
たまちゃん作の『叫び』スポンサードバイすしのこ(タマノイ酢株式会社)
たまちゃん作の『叫び』スポンサードバイすしのこ(タマノイ酢株式会社)
『すしのこ』と言えば、関西ではお馴染みタマノイ酢さんの粉末寿司酢。
水分がない分、液体のすし酢よりもベトつかず巻きやすい、ということで昔からたまちゃんは愛用していたのだが、最近とあるイベントに参加した際に、運営側がタマノイ酢さんへ「こういう人がいるのでコラボしてみては」と連絡してくれたそうだ。
その結果、大阪のタマノイ酢さんからたまちゃん宛に「自由に使ってください」と『すしのこ』500袋が届いたという。

タマノイ酢、現代のメディチ家である。
アーティストへの画材提供は立派なメセナだ。かっこいいぞタマノイ酢。

ちなみにこの『すしのこ』1袋で5~7合の寿司飯が作れるので、500袋で3,500合だから…なんと3.5石分だ。
戦国時代じゃあるまいし、まさか石という単位で米の量を換算することになるとは思わなかった。大人3人が一年間寿司飯だけを食べていられるのか。

ということで、今回のワークショップにつかう画材=寿司飯も『すしのこ』製。さらに参加者は全員、おみやげに一袋ずついただいてしまった。

『叫び』の現場から

手順はたまちゃんが事前に一つ一つ写真を見せながら丁寧に説明してくれるのだが、「取材で来ている上に、初めての巻き寿司かつ初めてのアートを失敗したくない」という緊張感が心の余裕を蝕んでいく。
まずは叫んでる口の部分を小さく巻いていく。
まずは叫んでる口の部分を小さく巻いていく。
まだ1パーツめなのに、すでに「これでいいのか」という不安との戦い。
まだ1パーツめなのに、すでに「これでいいのか」という不安との戦い。
今回カメラをお願いした友人が、終了後に「きだてさんはずっと眉毛が下がっていて、なんだか雨の日に捨てられた子犬みたいな目をしていた」と言っていた。
そのあと自宅で写真を確認しながら思ったのは、友人はだいぶ気を遣った表現をしてくれたな、ということだ。
自分で見る限り、「雨の日に捨てられた子犬が入ってる、びしょびしょに濡れた段ボール箱を擬人化したみたいな目」をしている。これはあきらかに、成功して幸せになってるビジョンが見えていない目だ。
『叫び』の目はゴボウの漬け物を配置。
『叫び』の目はゴボウの漬け物を配置。
鼻の穴はイカ墨スパゲティで表現。
鼻の穴はイカ墨スパゲティで表現。
最初に作った口パーツも一緒にしてぐるりと巻いたら、のぞき込む。
最初に作った口パーツも一緒にしてぐるりと巻いたら、のぞき込む。
本当にずっと下がり続けの不安な眉。 巻いてはみたものの、切ってみないと成功かどうかは分からない。
本当にずっと下がり続けの不安な眉。 巻いてはみたものの、切ってみないと成功かどうかは分からない。
とはいえ、不安は変わらずだったが、この辺りから作業が上り調子に楽しくなってきていた。
指でつまんだ寿司飯を海苔の上にどしどし積んでいくのが気持ちいいのだ。まず米粒を指先でつまむという行為が、日常の中にない。インド料理屋でカレーを食べる時も、なんとなく手づかみは気が引けるので「スプーンください」と言ってしまう派だ。
だが、やってみるとこの感触はかなり気持ちいい。米とお百姓さんに対する背徳感と、粘土細工っぽい感触。これはクセになる。
ちょっとずつ指で積み上げた寿司飯がきちんと形になっていくのもまた楽しい。
続いて顔を挟み込む手パーツを作成。黒いのは黒ごま入り寿司飯。
続いて顔を挟み込む手パーツを作成。黒いのは黒ごま入り寿司飯。
手と顔をセットしたら、最後に周りの風景をキムチ入り寿司飯で包み込む。
手と顔をセットしたら、最後に周りの風景をキムチ入り寿司飯で包み込む。
最後の巻きをまたのぞき込む。
最後の巻きをまたのぞき込む。
巻き寿司あるある「のぞく」。みんな不安げに巻き簀をのぞいていた。
巻き寿司あるある「のぞく」。みんな不安げに巻き簀をのぞいていた。

カットアンドファイアー

巻き終わったら、最後はカットである。
現状で見えている両端は寿司飯がはみ出しているため、デコボコでとてもじゃないがまともな顔には見えない。
真っ平らな断面を出せば顔に見える可能性もゼロではない、と信じて包丁を入れる。
切断面を潰さないように慎重に。最後までおっかなびっくりである。
切断面を潰さないように慎重に。最後までおっかなびっくりである。
…行けたか!?
…行けたか!?
行けた!(と思う)
行けた!(と思う)
切ってみれば、ところどころおかしな部分はあるものの、それなりに『叫び』っぽい。『墜落したUFOから発見された宇宙人寿司』と言っても通りそうな雰囲気はあるが、おおむね成功であろう。
4等分したところ。同じものを切ったはずなのに、切る場所で顔が全部違う。
4等分したところ。同じものを切ったはずなのに、切る場所で顔が全部違う。
他の参加者の方のも、叫びすぎて顔が歪んだのから、叫んでいるのに男前なヤツまで、様々な叫びが見られて楽しかった。
最後の最後で、ようやく出た「今日一番の笑顔」 会場入りしてから最後まで、眉の下がっていない写真はこれ一枚だけだった。
最後の最後で、ようやく出た「今日一番の笑顔」 会場入りしてから最後まで、眉の下がっていない写真はこれ一枚だけだった。
最後は、アートらしく自己表現しよう!ということで、叫んでる彼に、巻いた人それぞれの心の叫びを代弁してもらうという事をやってみた。こちらもまた「イ・サン(韓国ドラマ)見逃した!」とか「無職つらいなぁ」とか様々な叫びがあった。
ちなみに無職をつらがっていたのは僕だ。
ちなみに無職をつらがっていたのは僕だ。
最後に、たまちゃんから
「上手に作りたくても結果が見えない作業をすることで無意識のその人らしさが出て来ます。何度も練習して上手になると、初めて作った時のドキドキワクワク感はだんだん無くなるでしょう。今日のワークショップは表現をする事の楽しさを感じてもらい、日常に自分なりの楽しさを見つけて欲しいと思っています」
という心強いお言葉を頂いた。
「上手に巻けなくても楽しければ良いよ」という肯定のお言葉は何より有難い。

よし。アート巻き寿司、基本的な雰囲気は掴めたと思う。次は自分なりの巻き寿司を考えるステップに進んでみよう。
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プランA iPhone5寿司を巻く

たまちゃんのワークショップに参加する前に、あらかじめ自分なりのアート巻き寿司案を考えていた。

つい先日携帯をiPhone5に変えてちょっと浮かれていたこともあり、これを巻いてみればいいのではないか、ということでラフスケッチなども作っていた。
アイコンもカラフルで楽しげだし、それでいて周りの大きな面積は白一色で巻けばいいというシンプルさ。いける。これはいけるでえ。
iPhone5(白飯)
iPhone5(白飯)
さらに「パーツが多い分、iPhoneサイズに小さく巻くのは難しいだろうから、失敗して大きくなってしまったらiPad mini寿司と言い張ればいいんじゃないか」というプランBまで用意している。
男も40歳に近付くと「最低限のチャレンジ精神で、大惨事にならない程度の成果を」がテーマになってくるのだ。

プランCで行こう

で、ワークショップ体験後。
さっそくプランA、プランBを諦めて、次のプランCに移行することにした。
あの比較的シンプルな『叫び』寿司ですら、一つ一つ教えてもらいながらでもあれだけ苦労したのだ。巻き寿司経験二回目の人間にこんな複雑な寿司が巻けるわけがない。無理無理。

自分の技術で収まりきらないと予測できる部分は、チャレンジしないことでフォロー。不惑とは「やってみたら意外と成功するかも」という根拠のないビジョンに惑わされないこと、なのだ。

幸いにも、iPhone5寿司を考えていたときに時間が余っていたので、どうでもいいような案をだらだらと書き出す一人遊びをしていた。この中から何とかなりそうなものを作ってみよう。
悪筆すぎて僕以外には読めないだろうが、ちゃんとベターな案が書いてある。
悪筆すぎて僕以外には読めないだろうが、ちゃんとベターな案が書いてある。
よし、プランCは「パン寿司でサンドイッチ」で決定だ。
食パンの形の巻き寿司を作って、さらにそれでサンドイッチを作れば、なんとなく面白いんじゃないか。

寿司をパンっぽく巻く

とりあえず取材時の記憶と写真から必要なものを揃える。たまちゃんのワークショップで準備されていたのはこんな感じだった。
食材以外には、手洗い用の酢水と巻き簀、シートまな板をセット。
食材以外には、手洗い用の酢水と巻き簀、シートまな板をセット。
ワークショップでお土産にいただいた『すしのこ』でベースになる酢飯を作成。今回は2色だけで巻くので、必要なのは白のままの酢飯と、カツオふりかけを混ぜ込んだ茶色酢飯。あとは海苔と、見本用に食パンを準備した。
最終的なサイズを想像して、海苔を用意。普通の半切り+少しだけ延長。
最終的なサイズを想像して、海苔を用意。普通の半切り+少しだけ延長。
エクステ海苔は端にご飯つぶを載せて圧着させる。
エクステ海苔は端にご飯つぶを載せて圧着させる。
方向性としては、まず茶色の酢飯を、完成した時に外周になるように敷き詰める。これがパンの耳になる予定。
この茶色、酢飯にカツオふりかけを混ぜ込んでいるのでちょっと味が濃いが、なかなかに美味い。
作った時に「これはつまみ食いしたくなる味だな」と気付いていたので、最初からかなり多めに作っておいた。食べることに対して我慢が効かない、デブなりの生活の知恵だ。
まずは茶色酢飯を載せていく。3回載せて1回食べる、のリズム。
まずは茶色酢飯を載せていく。3回載せて1回食べる、のリズム。
作業中にだいぶつまみ食ったが、それでも多く作りすぎたっぽい。
作業中にだいぶつまみ食ったが、それでも多く作りすぎたっぽい。
続いて、パンの中の部分に当たる白酢飯を茶色酢飯の上にどさっと載せる。
とにかくどんどん載せる。中心がスカスカになると巻く時に崩れてきそうなので、少し無茶かな…というぐらいに盛る。
手で少しずつつまんでとか面倒くさい。チェストいけ、チェスト。
手で少しずつつまんでとか面倒くさい。チェストいけ、チェスト。
どかんと山盛りに載せてから、手で均一に広げていく。工事っぽくて楽しい。
どかんと山盛りに載せてから、手で均一に広げていく。工事っぽくて楽しい。
酢飯を載せたら、いよいよ最後の巻き作業である。
ワークショップで『叫び』を巻いた時は細かい作業の積み重ねで、ここまでくるのにかなり時間がかかったのだが、『パン』はあっという間だ。

海苔をそっと持ち上げて巻き簀を敷いて…とやろうとして、思わず「あ、やべ」と言ってしまった。見た目以上に重いのだ。
どうも調子に乗って酢飯を盛りすぎてしまったようだ。確かに「無茶かな」と思うほどに盛ったが、どうやら本当に無茶だったらしい。盛りすぎて本体が巻き簀からもはみ出している。
あと、みっちり詰まりすぎてて曲がらない。
無理だろうがとにかく力づくで折り曲げて。
無理だろうがとにかく力づくで折り曲げて。
気合いと勢いで巻き込む。
気合いと勢いで巻き込む。
崩壊。この瞬間から色々ありまして、しばらく時間が進みます。
崩壊。この瞬間から色々ありまして、しばらく時間が進みます。
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巻き寿司からおにぎりへ

あまりに慌てていたので、復旧作業中の写真は撮れていない。
あまりに慌てていたので、復旧作業中の写真は撮れていない。
前ページ最後で盛り過ぎからの大崩壊をみせたが、海苔を追加して押し固めたり、酢飯の流出をラップで巻いて防いだりと手を尽くした結果、どうにか固体としての尊厳を保つことに成功した。
フォローはできたが、見た目が巻き寿司から巨大おにぎりになってしまった。これは次のステップで解決したい。

そしておにぎりから食パンへ

前回初めて寿司を巻いた時に得た一番の経験は「巻き寿司の実力は切った時から発揮される」ということ。
いまは確かに素朴な風体の巨大おにぎりかも知れない。しかし、真っ二つに切られたその瞬間から、彼は巻き寿司として美しい花を咲かせるのだ。サナギから蝶へ、おにぎりから巻き寿司へ。そしてパンへ。
巻き寿司を切る時は包丁を濡らしてから、というのも学んだ。
巻き寿司を切る時は包丁を濡らしてから、というのも学んだ。
パンなので、普通の巻き寿司よりは薄くカットします。6枚切り。
パンなので、普通の巻き寿司よりは薄くカットします。6枚切り。
もしかしたらパンかも…!
もしかしたらパンかも…!
どうだろうか。カットした後にちょいちょいと形を調整してやることで、目をうっすらと開けて見ればパンの可能性もゼロではない、というところまでは持って来れたと思う。
パンの耳の部分がいささか分厚すぎる気もするが、これはパリッとした耳の食感と香ばしさを演出しているということでひとまず収めていただきたい。

ついにパンからサンドイッチへ

気分的には「わー、寿司なのにパンっぽいねー」ぐらいで終わらせてもいいと思っているのだが、企画の段階ではっきりと『パン寿司でサンドイッチ』と書いてしまっている以上、それぐらいはせねばなるまい。

冷蔵庫の中に頂きもののお値段高めハムがあったので、それをつかってハムサンドを作ろうと思う。
ところで冷蔵庫の有りモノでお手軽にサンドイッチづくり、ってシチュエーションがなんとなく素敵なママっぽい。実のところ、40歳のおっさんがいたずらな巻き寿司を作ってるだけなのだが。
パン巻き寿司の表面にマヨネーズ。寿司なのでワサビマヨネーズにしてみた。
パン巻き寿司の表面にマヨネーズ。寿司なのでワサビマヨネーズにしてみた。
サラダ菜・ハム(おいしいやつ)をちぎってトッピング。
サラダ菜・ハム(おいしいやつ)をちぎってトッピング。
もしかしたらサンドイッチ…じゃない…かも…!
もしかしたらサンドイッチ…じゃない…かも…!
カットした時にも感じていたことだが、真上から以外の視点だと海苔が見えすぎてしまいパン感が大幅に減る。あと、パン部分が厚すぎて具が目立たない。これは正直なところ、サンドイッチではない。
とはいえ、今の時点で海苔を外すこともできないし、これ以上パン寿司を薄くスライスするのも難しい。これはどうしたものか。

いま出来ることといえば、具を別のものにするぐらいか。もう一つ具を変えてサンドしてみよう。
夕食に食べるつもりだった鮭の刺身をマリネにして投入。
夕食に食べるつもりだった鮭の刺身をマリネにして投入。
僕の中では、あと一歩でサーモンサンドイッチなんだけれど。
僕の中では、あと一歩でサーモンサンドイッチなんだけれど。
なんというか、あともうちょっとで何とかなりそうで、もどかしい(そう思ってるのは僕だけかもしれないが)。
あとは雰囲気でなんとかするしかない、ということで急いでパセリとプチトマトを買ってきて添えてみた。
パセリとプチトマトさえあしらえば大抵はなんとかなる、と思っていたのだが。
パセリとプチトマトさえあしらえば大抵はなんとかなる、と思っていたのだが。
やはり根本的な問題なのかも知れない。

バック・トゥ・ザ・ベーシック巻き寿司

見た目において、巻き寿司はどこまでやってもサンドイッチにはならない。
いいだろう、これはもう理解できた。
しかし味はどうだろうか? なんといってもメインの具をサンドイッチ方向に寄せてあるのだから、台が酢飯であることを考慮しても「純和風サンドイッチ」ぐらいの位置に届くのではないか。
サンドイッチか巻き寿司か。結論を出すのは食べてからでも遅くはない。
サンドイッチだからコーヒーを添えて…と思ったが、僕の心の弱気な部分がほうじ茶を淹れた。
サンドイッチだからコーヒーを添えて…と思ったが、僕の心の弱気な部分がほうじ茶を淹れた。
……寿司だ!
……寿司だ!
何をどうしても、寿司だ。
困ったことに、普通の巻き寿司だ。惜しいとか惜しくない以前に、サンドイッチ要素がゼロの巻き寿司だった。

ハムサンドのつもりで作ったのに、普通にサラダ巻きの味がする。確かに材料がサラダ巻きから何一つずれていないんだから、サラダ巻きにしかならないだろう。
サーモンサンドもごく普通に鮭の海鮮巻き寿司だった。残念だ。普通に寿司として食べられるレベルの美味しさなのに、残念すぎてマズそうな顔になってる。

サンドイッチは、パンで作るからサンドイッチになるんだということを覚えておきたい。

自作巻き寿司は様々に残念な感じになってしまったが、自分で考えたものを巻いてみるのは面白い、ということは分かった。やっぱり食べ物で遊ぶのは楽しくて良いことだ。
キメ顔ですが、水面下では手についたご飯粒を洗い落とそうと必死です。
キメ顔ですが、水面下では手についたご飯粒を洗い落とそうと必死です。
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