特集 2011年7月23日

コンビニで昆虫採集

カブトムシまで捕れました。
カブトムシまで捕れました。
先日、デイリーポータルZ編集部の石川さんたちと虫捕りに行った(こちらの記事「素手で虫捕りまくり」)。
それが思いのほか楽しく、皆ついつい夢中になってしまった。
真剣なまなざしで草むらを見つめ、はじける笑顔で捕った虫を掲げる石川さんたちを見て、
虫捕りは大人も楽しめるホビーであると僕は確信した。
しかし、虫を捕るには野山を駆け回る必要がある。体力に自信の無い人や足腰の弱いお年寄りには少々厳しいかもしれない。
いっそコンビニエンスストアに行くような感覚でカジュアルに虫捕りができればいいのに。
…ん?コンビニ?
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

前の記事:カブトムシよりレアな虫、それはタガメ

> 個人サイト 平坂寛のフィールドノート

虫はコンビニの明かりに集まる

そうだ。コンビニだ。
皆さんも夜間にちょっと田舎のコンビニに立ち寄った際に、入り口や誘蛾灯の下に昆虫が落ちているのを見たことがあるだろう。
コンビニの前に陣取って夜通し落ちている虫を拾い集めれば立派な昆虫採集になるのではないか。実践してみねば。
ミニストップは虫が少ない気がする。
ミニストップは虫が少ない気がする。
セブンイレブンは黄、緑、赤のストライプで人の目は引くが青白さに欠ける。虫にはあまり人気がなさそうだ。
セブンイレブンは黄、緑、赤のストライプで人の目は引くが青白さに欠ける。虫にはあまり人気がなさそうだ。
コンビニ昆虫採集をするにあたって、まず舞台となる店舗を決めなければならない。
第一にコンビニと一口に言っても様々なチェーンがあるわけだが、何を基準に選定すればよいか。悩んだ挙句僕が導き出した答えは、「看板の色」だった。
というのは、虫にも明かりの色の好き嫌いがあるためである。明かりに集まる虫は特に青白い光を好み、先のミニストップのような黄色がかった色の明かりはあまり好まないと以前に聞いたことがある。
それが分かればおのずと狙うべきコンビニは絞られてくる。
ココストアは節電中でした。素晴らしい取り組みだと思いますが虫捕りには致命的。
ココストアは節電中でした。素晴らしい取り組みだと思いますが虫捕りには致命的。
ファミリーマート。これはかなりいい線いってる気が。しかし上には上がいるもの。
ファミリーマート。これはかなりいい線いってる気が。しかし上には上がいるもの。
コンビニで青白い光を放つ看板を掲げているといえばあのチェーンをおいて他に無い。そう我らがローソンである。
ローソン。青白いというかもはや青い。
ローソン。青白いというかもはや青い。
…ちょっと青すぎるか。青さを求めるあまり肝心の明るさを犠牲にしてしまっている気もするがまあいいだろう。
対象チェーンが決まったところで次は店舗の立地について考える。まず虫の住処である山や林が近くにあるという点ははずせない。さらに田んぼなどの水辺があれば捕れる虫の幅も広がるだろう。

虫捕り開始!いきなり大物!!

そんなわけでやってきましたのは茨城県小美玉市のローソン。この時すでに深夜1時。これからここで夜を明かす。
そんなわけでやってきましたのは茨城県小美玉市のローソン。この時すでに深夜1時。これからここで夜を明かす。
実はこのローソン、これまでに何回か利用したことがあるのだが、その度に店の前に落ちている虫の多さに度肝を抜かれてきた。数もさることながら種類が多いのだ。 いい虫出してるコンビニなのである。
さっそく入り口付近に蠢く影を発見。
さっそく入り口付近に蠢く影を発見。
拾い上げるとなんとカブトムシのメス。
拾い上げるとなんとカブトムシのメス。
いきなりカブトムシ。虫の王様(メスだけど)を捕まえてしまった。幸先が良すぎる。
ここからは店先で拾った虫たちを簡単に紹介していきたい。
巨大なミヤマカミキリ。
巨大なミヤマカミキリ。
凶悪な顔立ち。でも実は草食系。
凶悪な顔立ち。でも実は草食系。
このローソンで最も多く見られた虫がこれ。全部で11匹もいた。「ミヤマ」とは深い山を指す語らしいのだが、そんな名前を冠する虫が人里、しかもコンビニにごろごろいていいのだろうか。
小さめのノコギリクワガタ。
小さめのノコギリクワガタ。
カブトムシに続いてクワガタまでゲット。小さくてもクワガタの造形には迫力と説得力があります。
いったん広告です

甲虫が多い

ここで意外な事実に気づいた。蛾や羽虫が妙に少ないのだ。見られる虫のほとんどがカブトムシのように硬い体を持つ虫、いわゆる甲虫であった。出かけるまではきっと蛾ばっかりなんだろうなあと思っていたのでこの事実は意外であった。
モモブトシデムシ
モモブトシデムシ
クワガタのメスと間違えて拾いそうになった虫。なぜ拾わなかったかというと、これは死肉にたかる虫なのでちょっとばっちい感じがしたため。
オオアトボシアオゴミムシ
オオアトボシアオゴミムシ
嫌なにおいといえばこの虫。写真を撮ろうとするとすごいスピードで逃げるのでつい反射的に捕まえたのだが、左手の指がとんでもなく臭くなってしまった。
コガネムシ
コガネムシ
そのままブローチにできそうなほど美しい金属光沢を誇る虫。動きもかわいかった。
コガネムシより少し地味なスジコガネ。
コガネムシより少し地味なスジコガネ。
さらに地味なマダラコガネ。
さらに地味なマダラコガネ。
さらにさらに地味だけど大きくてかっこいいコフキコガネ。
さらにさらに地味だけど大きくてかっこいいコフキコガネ。
ふざけた名前のドウガネブイブイ。
ふざけた名前のドウガネブイブイ。
コガネムシの仲間は種類も数も多かった。
かわいらしいが有毒のキイロゲンセイ
かわいらしいが有毒のキイロゲンセイ
ちょっと珍しいところではこちらのキイロゲンセイ。カンタリジンという猛毒を持つことで有名。幼虫はハチの巣に寄生するという変わった生態をもつ。
とまあ、こんな感じでメジャーどころからマイナーなものまで、コンビニの玄関からろくすっぽ動かずに採集できてしまった。楽しいぜ!コンビニ昆虫採集!

いたれりつくせり!コンビニ虫捕り

たくさんの虫を拾って少し疲れた。トイレにも行きたい。のどが渇いた。お腹もすいた。少し休憩しよう。
野山で虫捕りをしているとこういうときに困った事態に陥ることがしばしばである。
適当な場所でしゃがみこむと蚊が大挙して押し寄せる。トイレなんて無い。食べ物もお弁当を忘れたら山を降りるしかない。
しかしコンビニならばそんな悩みは無用である。
冷房の効いた店内にはつめた~い飲み物がこれでもかと陳列され。
冷房の効いた店内にはつめた~い飲み物がこれでもかと陳列され。
飢えを鎮める食べ物もよりどりみどり。
飢えを鎮める食べ物もよりどりみどり。
トイレもあります。これは特に女性にうれしい。
トイレもあります。これは特に女性にうれしい。
万が一虫捕りに飽きたら雑誌も買えるという周到具合。
万が一虫捕りに飽きたら雑誌も買えるという周到具合。
店内にも迷い込んだ虫がいるので気は抜けない。
店内にも迷い込んだ虫がいるので気は抜けない。
これでも昆虫採集中です。
これでも昆虫採集中です。
うーん、素晴らしく快適である。蚊にもほとんど悩まされない。ゴミ箱もあるので出したゴミを持ち帰る必要も無い。何時間でも長居できそうだ。
いったん広告です

店先だけがポイントじゃない

さて、採集に戻ろう。店先はもう一通り見て回ったので次のポイントを探す。
店舗に隣接する看板や
店舗に隣接する看板や
駐車場の照明も見逃せない
駐車場の照明も見逃せない
今回は駐車場を照らす水銀灯周辺で大きな収穫を得ることができた。その成果を紹介していく。
ハンミョウの仲間
ハンミョウの仲間
鮮やかな緑の光沢が美しいアオカミキリ
鮮やかな緑の光沢が美しいアオカミキリ
渋い銅色のエゾカタビロオサムシ
渋い銅色のエゾカタビロオサムシ
これはオサムシの一種。オサムシは手塚治のペンネームの由来となったことでも知られる、チョウやクワガタと並んで世界中にファンの多い虫である。
オサムシの仲間は普通飛べないので灯火に飛来することはないが、このエゾカタビロオサムシは例外的に飛ぶことができ、明かりに集まる。
悪臭を放つことで知られているが、前から一度見てみたかった虫だったので興奮して手づかみで捕まえたところ、先ほどのオオアトボシアオゴミムシのにおいと混ざって大変なことになった。
蛾を捕まえて食べている個体も。
蛾を捕まえて食べている個体も。
ノコギリ状の触覚がかっこいいノコギリカミキリ
ノコギリ状の触覚がかっこいいノコギリカミキリ
このカミキリムシは後ろ足を器用に翅にこすり付けてシュッシュッと大きな音を立てる。
水生昆虫の仲間であるコガムシ
水生昆虫の仲間であるコガムシ
水の中からわざわざローソンまで御来店くださった。田んぼが近くにある店舗を選んで正解だった。
おしゃれな蛾。
おしゃれな蛾。
ウシアブ。刺されると痛いですよね。
ウシアブ。刺されると痛いですよね。
ニイニイゼミ。キミは昼行性だったはずでは。
ニイニイゼミ。キミは昼行性だったはずでは。
アメリカシロヒトリ。かわいい顔だが残念ながら外来種でリンゴやサクラなどの害虫。
アメリカシロヒトリ。かわいい顔だが残念ながら外来種でリンゴやサクラなどの害虫。
ヒトリとは漢字で灯取と書き、灯火に集まる習性を表したものなのだそうだ。灯りが好きな虫は何もキミだけじゃないのにね。
いったん広告です

明け方、最後の大物ラッシュ

灯りの下で虫たちと戯れているうちにすっかり空が白んできた。楽しい楽しいコンビニ虫捕りもいよいよ終わりかと撤収作業に移ったその時、バララララ!という大きな羽音とともに黒い影が駐車場の照明に飛び込んできた。
カブトムシだ!しかも今度はオス。
カブトムシだ!しかも今度はオス。
おおお。かっこいい。やっぱりカブトムシはオスのほうが魅力的だね。まさに王者の風格。こうなると大きなクワガタも捕まえたくなるがそううまくは…
うまくいった。しかもペア。
うまくいった。しかもペア。
捕れちゃった。文句なしの大型ノコギリクワガタ。子供のころはこういう湾曲した大アゴを持っている個体を「水牛」と呼んでありがたがっていたっけ。
しかもメスも一緒に仲良くご来店だ。
そしてまたカブトムシ
そしてまたカブトムシ
さらにカブトムシも数匹追加できた。終了間際に大物たちのラッシュだ。
調べてみると昆虫が灯火に飛来する時間帯には2つのピークがあり、ひとつは空が暗くなった直後、そしてもうひとつが明け方なのだそうだ。ならばこのラッシュにも合点がいく。
最後の獲物、オオゾウムシ。
最後の獲物、オオゾウムシ。
今回の虫捕りで最後に足元で捕まえたのがこの虫。たぶんこいつは朝になって飛んできたわけではなく夜の間中僕の足元にいたのだと思う。地味すぎて気づかなかっただけで。いい虫なんだけどね。

雑木林でリリース

実は今回、捕まえた虫の一部は虫かごにキープしていた(とても全部は入れられなかった)。
それがこちら。
虫天国。(マウスオーバーでモザイクが外れます)
苦手な人にとっては地獄絵図そのものである。こんなに過密な環境が虫たちにとって心地よかろうはずがない。
虫捕りは十分楽しんだことだし、早く逃がしてやろう。
バイバイ
バイバイ
おそらくこの虫たちの出身地だろうと思われる、ローソンの近所の雑木林に連れて行き、クヌギの木の根元に放してやった。
皆喜び勇んで思い思いの方向へ消えていった。その後姿は野生を取り戻した獣のようにとても生き生きとして見えた。
でもあいつらのうち何匹かは今夜にはまたローソンにたむろしてるんだろうなあ…。
虫はやっぱり森の中にいるのが似合います
虫はやっぱり森の中にいるのが似合います

予想以上に大漁

何かしら捕まるだろうとは思っていたが、まさかコンビニでこんなにバラエティ豊かな虫が捕れるとは思ってなかった。
そして、ただ待っているだけでどんどん虫がやってくるというのが予想以上に楽しく、夢中になってしまった。
効率的にして快適。これはまさに新時代の昆虫採集の形なのではないだろうか。
さあ、皆さんも今夜は郊外のコンビニに出掛けてみてはいかがですか?
あ、それからどうやら虫はファミリーマートやセブンイレブンでも遜色なく集まってくるようですよ。
途中でのぞいたセブンイレブンにもばっちりカブトムシが来ていました。
途中でのぞいたセブンイレブンにもばっちりカブトムシが来ていました。
▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ