見てきてジャーニーとは?
「
ちょっと見てきて」のなかで、なかなか見てきてくれないところを、デイリーポータルZのライター陣が旅をしながら見てくる企画です。
そうなのよ、アプリなのよ
しれっとふつうの記事を書く風情ではじめたが、今日はなにしろこの場をかりてみなさんにiPhone版アプリのことを知らせたくて知らせたくてたまらない。
じゃーん!
いよいよ、「ちょっと見てきて」のiPhoneアプリが登場したのだ。これでiPhoneから閲覧&投稿ができますぞ。イェー(Android版も近日公開予定)。
ホーム画面! かわいい!
解説画面その1! かわいい! (画面その2以降はご自分の目でぜひ)
アプリを起動すると、現在地の地図が表示される。今いる場所の近くの「見てきて」情報が見られるというわけだ。
方向音痴でもこれまで「見てきて」に投稿できなかった方にはモロに吉報ですよ。
現在地と周辺の「見てきて」情報がばっちり
アイコンをタップすると投稿タイトルが
さらに詳細情報が現れる
今回見てくるのは目黒の2件
思わずアプリの紹介が前のめりになってしまった。今日は東京の目黒で見つけた2件の投稿の場所を確かめてきたい。
どちらも「なかなか」アイコン(なかなか「見てきた」投稿の付かない場所)がついている。どこにあるのかが分かりにくい場所なのだろう。
これが「なかなか」アイコン。よぼよぼになっちゃってる!(ちなみに左側の汗をかいてるアイコンは「見てきた」投稿が1~4件のもの。それ以上投稿が集まると通常のアイコンになる)
でも今日からはアプリがあるのだ。手元で現在地と投稿の場所の地図さえ表示されれば、難易度の高い場所でも行きやすいのではないか。
投稿は2010年の9月。1年以上立った今もまだ「見てきた」投稿がついていない。
21年前に通ったお店だというから、もしかしたらもうないのだろうか。
まずは目印である日出学園に行ってみよう。
坂に埋もれた学校!
日出学園は目黒駅から権之助坂を下ったところにある。
目黒駅周辺にはほんのちょっとなら土地勘があるつもりだったのだが地図で見ると「ここに学校あったっけ?」という場所だ。
実際行ってみると駅からの坂の脇に埋もれるように建っていた。
きれいで明るい建物ではあるものの、坂に埋もれるように周囲から隠れてちょっと要塞っぽい。
ラーメン店が多くひしめく権之助坂に突然学園への入り口が
正面口らしき入り口も奥まったところにあり、「通学路」とあってようやく分かった
この学校、芸能コースがあり芸能人を多数輩出しているらしい(Wikipediaで一覧を見たが山口百恵さんから始まってえらい豪華なことになっていた)。隠れて建っていても有名な学校なんだろう。
ジェラートのお店は学園の裏側の住宅街にあったというから芸能人のみなさんも学生時代に行っていたかもしれない。
情報では店は学園の裏側あたり
周囲は結構ワイルドな雰囲気
聞き込み開始
さっそく学校のまわりをぐるっとまわってみたが、それらしきお店は見当たらない。それらしき、というよりも店自体がない。完全な住宅街なのだ。
探しても見つからないとなると聞き込み情報がたよりになるのだが、平日の昼すぎの住宅街は静かで人もいない。どうしよう。
公園にも人はおらず
どうしようか……
困りましたな
一転、発見
とにかく、人、ひとを探さねば、とあたりをぐるぐるしていたが、そうだ、学園のすぐ隣に商店がなかったか。
思い立って戻ると確かに自転車店があったのだった。ごめんくださーい。
「あの、すみません。このあたりでジェラートのお店を探しているのですが…」
「ああ、ありましたね」
なんと聞き込み一発目でヒット!
「でも、なくなっちゃいましたよ。5年、いやもっと前かな」
なくなっていた……。
地図をもらった。アプリを全く役立ててないまさかの展開
作業の手をとめて話を聞かせてくれた店の方によると、ジェラート店は住居を兼ねており(投稿のとおりだ!)一家が5年か、それ以上前に地方へ引っ越すため閉店したそうだ。
閉店のあと店は更地になり、その後は普通の住宅が建った。その場所を地元の地図で教えてもらったのだった。
教えてもらった通りに行く。やはり120%住宅地
地図をもらえなかったら絶対行き着けなかった……
ひとんちになってました!
以前ジェラートのお店があったという場所にたどりついた。
話に聞いたとおり、どう見ても完全なるひとんちになっていた。
このあたりにあったそうです
なんとかアイスが食べられまいか
閉店は想像していたことだったが、美味しいジェラートが食べられるのではという期待がちょっとあったので心残りだ。
近くにアイスが食べられる店がないか調べてみた。現場には紙の地図でたどり着いたが、ここからはiPhoneが大活躍である。スマートフォンで近くの店を探すってとんでもなく普通のことをしているだけだけど!
目黒川のほとりに発見
これがとろーっとしてなめらかで、とんでもなく美味しいアイスだった
今の生徒さんはきっと食べてるはず
かつてジェラートの店があった場所から大通りを1本挟んで向こうにある洋菓子店。最近できたそうだが、ここでアイスを扱っていた。
このアイスがアイスの常識を覆すなめらかさで、すごく美味しかったんです。
ジェラートのお店を探していた てらりんさん、お店はなくなっていましたが、現役の生徒さんたちがきっと通っているだろうお店は見つけましたよ!
よし、続いては幻のラーメンを探します。
本気でおいしかったからもう1枚写真載せておこう。食べたのはレモンヨーグルト味でした
中国料理店のラーメン
続いての「見てきて」も2009年9月の投稿以来まだ「見てきた」が来ていないもの。
ラーメンのスープがとても美味しかったということでぜひ食べてみたいと思うのだが、やはりなくなってしまったお店だろうか。
目印の国立教育政策研究所は2008年に千代田区霞ヶ関に移転していて、目黒にはもうない。
まずは跡地へ行ってみよう。
ザ、工事中
マンションになるそうな
2008年に移転したあともしばらくは閉鎖状態で残っていたようだったが、行ってみると元気一杯工事中であった。マンションになるのだそうだ。
さて、目的の中国料理の店はここから「ほど近く」と投稿にある。
先ほど同様、完全な住宅街で商店は全くみあたらない。ここに料理屋があったら目立つはず。近所の方さえつかまればすぐ見つかるんじゃないか。
一応検索してみたが、やはり周囲に店のある情報は出てこなかった
工事中の囲いから重機がひょこっとだけ見えた。かわいいわね
発見か
ぶらぶら歩きながら人の気配を探していると、しばらくして犬の散歩中の方に話を聞くことができた。
「中国料理? 普通の中華屋さんでいいのかしら」という前置きはあったものの、少し行ったところにあるというお店を教えてくれた!
なあに? 中国料理屋さん探してるの?
それならあっちにあるわよ(写真はイメージです)
「このあたりだと中華はそこだけ、あとは目黒通りを挟んで向こうになら何軒かあるけど」というお話なので、教えてもらったお店でほとんど間違いないんじゃないか。
住宅街で店を探すのは難しいかと思っていたが、店自体が珍しいから意外に楽なのかもしれない。うしし。
現場へ! バイクと自転車を通らせないためのゲート、こんなのあるんだ
ちょっと条件と違う?
旧研究所から歩いて10分かからないくらいだろうか。教えてもらったお店の場所についた。どうだろう、ここだろうか。
「金華苑」というお店
投稿にあったお店の特徴は
・面している道路が細い
・「中華料理」ではなく「中国料理」と書いてある
ということだが、この店だと両方とも当てはまらない
ただ、特徴的なところが投稿と一致しているのだ。
「道路から数歩入ったところに入り口があった気がします」っていうの、これのことでは!
2001年ごろは別の店
タイミングが悪く店はランチ営業を終えて準備中の札がかかっていた。お話だけでも聞かせてもらえないか入ってみる。
2人の店員さんと、昼食をとり終えてくつろいでいた常連さんが話を聞かせてくれた。
それによると、投稿者の六角さんが訪れたという2001年頃は今とは違う店だったそう(がーん!!)。ただ、経営は違うが中華料理の店ではあったらしい(うおお)。
店の奥からの眺めは以前の店とほとんど同じ、とのこと。六角さん、どうでしょうか
ご主人が亡くなり、別のお店に
以前の店の名前は「とやま」。和風の名前だが、確かに中華料理の店だった(やはり「中国料理」ではなく「中華料理」という表記だったとのこと)。店主が亡くなって閉店し、今のお店になったという。
投稿には台湾出身の方が店にいたとあるが、当時のご主人は日本人だったそうだ。スタッフに台湾の方がいたかどうかまでは分からなかった。
うーん、ここが投稿のお店なのだろうか。
ただ、やはりここでも「周囲に中華のお店は昔も今もここだけ」という話だったのだ。
現在はオーナーからシェフ、スタッフ全員中国の方で本格的な中華料理を出している
営業時間外ということもあってお礼を言って店を出た。
麺のスープが衝撃的だった、と投稿にはあるが、そのスープが飲めなかったのは本当に残念だ。
残念すぎて、目黒駅の近くに戻って開いている店でラーメンを食べた。
八角が使われているかどうかは……分からなかった(味オンチについて大変な自信があります)
食べていたら誰かがくしゃみをした。
中国人らしきおじいちゃんの店員さんが「○○チャン ダイジョブ?」とでかい声で聞くと、その○○ちゃんらしい若い店員さんが「チガウヨ ワタシジャナクテ オキャクサマ!」とまたでかい声で返した。
多分2人とも中国の人なのに(そうじゃなかったのかな)日本語でしゃべってくれてたのがおもしろかった。
時間のすきまに「見てきて」を
投稿の情報をたよりにおおまかな場所まで行き、そこからは道行く人から情報を集める。たどり着いた場所が正しいかどうか、投稿内容と見比べて検証する。
誰かの思い出でわくわくする「ちょっと見てきて」を完全に堪能し、おいしいアイスとラーメンも食べてきた。「ちょっと見てきて」はやっぱり楽しいのだ。
アプリの登場で、「ちょっと見てきて」の「ちょっと」がより気軽に文字通り「ちょっと」になったんじゃないでしょうか。ぜひ「ちょっと見てきて」くださいませ!