特集 2012年10月22日

ポップ体に着替えたら

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この間、徹夜明けの高いテンションで、友人Tさんと飲んだ時、「ポップ体って面白くね!?」という話になった。
ポップ体、正式名は創英ポップ体。ウィンドウズに入っているフォントで、1991年に女性デザイナーによって作られたもの。80年代~90年代初頭の「ポップ感」が妙に込められていて、ぱっと目を引くので、主にアマチュアデザイナーがよく使う書体として有名だ。
埼玉生まれ。電子書籍『初恋と座間のヒマワリ』(リイド社刊)発売中。最近、ほぼ毎日ブログを更新していますので、良かったら読んでください。

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なんかこんな感じの文字。分かります?
なんかこんな感じの文字。分かります?
「あの書体さあ、みんな『ダサい』って言うけどさあ…、そんなことないよ、ポップ体はポップだよ。誰もに愛されてて、誰もが使ってて、印刷されたら、人目を引くんだから、相当ポップだよ。ポップ体は再評価されるべきだよ! 大塚さんそう思わない?」
「んー、そうねえ」
「というか、ポップ体ってあまりにもポップな書体だから、書く文字で、ポップさをはかれるよね。例えばね、ポップ体で『マイケル・ジャクソン』って書いても、揺るがないでしょ?」
「揺るがないねえ。何でもないねえ。ダサくならない」
「ポップじゃないものをポップ体で書くと、揺るぐんだよ。文字の形と意味の距離が、特殊な書体なんだよ。ポップ体で、ポップさが測れるのだ!」
「そうか~!?」

その後、「あの文字をポップ体にしたらどうなろう」「この文字をポップ体にしたらどう感じるだろう」とか、3時間くらい盛り上がった。うひゃひゃひゃ、と爆笑し、
「これは、ワークショップに出よう。お洒落タウン、原宿~渋谷を歩き、有名スポットをポップ体化させて、検証してみよう」
ということになった。

「というわけでTさん、原宿来ましたけど……機嫌悪いですね」
「…大塚さん。思ったよりも恥ずかしいね、こういうの」
!
「私はなんか、こういうの慣れてるから平気なんだけど…。とくに、原宿の人は優しいよ、観光客か少年少女か、物売りかスカウトマンしかいないから。空気が穏やか。
というわけでどうですか、竹下通り。」
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「しっくり、って感じですね。でもポップ過ぎてポップ体を超越してるというよりは、地名だからハマってるだけじゃないかな」
「まあ、そうかもね。地名との相性いいもんね、ポップ体。」
「あと、竹下通りの、雑貨の価格帯の安さにはマッチしてるかな」
「チープVSチープ、という感じですね。チープな可愛さ同士で、バランスをとってる」
「竹下通りは、ポップ体が合いますね」
!
「ラフォーレどうですか」
「………マンションっぽい」
「ああ!」
「不動産屋の香りがする」
「そうね、『ラフォーレ原宿502号室 15万8000円 管理費込み』って感じね」
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「なんで不動産っぽくなるのかなあ」
「『お洒落』っていう部分が抜け落ちてるね。間違いなくお洒落なのに」
「『お洒落』と『ポップ』は別ものなんじゃないの?」
「そうか?」
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「今回、行けなかったけど、六本木ヒルズも打ち出してきました。これもマンションっぽいね」
「ラフォーレよりは家賃高そうだなあ」

「次、キャットストリートに来ました」
「キャットストリート…って言ってもなあ」
「キャットストリート…って言ってもなあ」
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「なんか、本当にネコが集まる道みたいだよね」
「お洒落感はゼロになちゃったね。まあ、これ、地名だけど、曖昧な地名だからなあ」

「じゃあ固有名詞はどうだ、お洒落ショップ、『6%DOKIDOKI』」
「原宿の老舗だよね。きゃりーぱみゅぱみゅのアートワークをやってる方のお店。」
「世界の考える、原宿っぽさを代表するお店なんだと思いますが…、そうね、ポップ体にしても、とくに変化はないですね。揺るがない。」
「ポップですね!」
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「でも久々にお店に入ってみたら、買い物かご渡されて、ぱみゅぱみゅ愛用のパッジとかを、店員さんにパワープッシュされたよ。なんかもっと、可愛いグッズがゴチャッて並べてあって、静かに見れる店っていう印象があったんだけど…」
「世界中からお客さんが来るようになったから、さばききれないんだよ、きっと。しょうがないです。」
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「というわけで、ぱみゅぱみゅです。原宿でぱみゅぱみゅ持って立ってみました」
「揺るがないー!」
「ポップ体だろうが何だろうが、全然イケますね」
「これは世界進出狙えますね!」
「っていうかもうしてますね!」
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「渋谷公会堂に来ました」
「ついに原宿から渋谷に抜けてきましたね」
「C.C.レモンホールだったら、ちょっとダサかったのかもしれないけど、渋公だと、全然イケます」
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「『渋』のさんずいのテンテンが、丸になってるのが、かわいいですね。」
「うん、『渋』の字が、とくにかわいい」
「ウインクしてる紳士のように見えます」
「…そうかあ?」
!
「次、パルコでございます。渋谷パルコ!」
「Chim↑Pomというアーティストが展示をしているので、CとPの文字がはがしてありました。現代美術ってやつですね。」
「……あのね、私、パルコでバイトしたことあるから、パルコに愛着あるんですけどね。」
「はいはい、大塚さん」
「パルコは、いま、いろいろ大変なんだなあ…って、漠然と思うよ」
「なんで?」
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「ポップ体に、揺らぎを感じるから…」
「そうねえ、90年代のパルコの、キラキラ文化系ぶりと比較しちゃうと、そうかもね。それに、今、パルコはリニューアルとかしてるし、そりゃ揺らぐよ。」
「一応、こういうのも打ち出してきました。シブポップ!」
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「何、これ」
「パルコパート1に、カルチャーゾーンが出来たのね。それがシブポップ。」
「そうなんだ。ああ、そうか、東急がヒカリエでカルチャーを盛り上げて、セゾンがパルコでカルチャーを盛り上げてるんだ。渋谷って今そうなんだ、なるほど! 興味深いね」
「大人な見方だなあ…。でもなんというか、いろいろ面白くなるといいですね」
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「で、アップルストアで撮ってみました」
「いいね」
「カタカナ化してるし、そもそもアップルストアの看板って林檎マークだけで『Apple Store』って書いてないんだけど。なんかね、ポップ体でも別に平気だったよ」
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「そうね。アップルにも、ポップ体フォントが入ればいいのに!」
「そう! そうですよ。私、マックがメイン機なので、本当にポップ体を入れて欲しい!!」
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「つぎは、こわいのでコメントは少なめにしますが」
「はい」
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「揺るがないねえ」
「揺るぐわけがないねえ」
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「これ、撮影してるの、本気で恥ずかしいね」
「まあ、誰も別に何とも思っちゃいねえよ。それが東京だよ。
しかしハチ公、ぐっと身近になりました!!」
「かわいいもんね」
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「友だちの飼ってる犬、みたいな印象になりますね。あと銅像が、ソフトバンクのお父さんに見えてきます」
「きっと、ハチ公自体は、ポップじゃなくてクラシックだから、ポップ体をまとうと、ちょっと揺らいじゃうんですね」


「最後に来ましたよ、最新お洒落スポット、渋谷ヒカリエ!」
「デイリーポータルZの10周年展示も、行われてましたね」
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「で、どうかな、ヒカリエ」
「……自分がヒカリエに行ったことが少ないせいか、何かこう、感情が沸いてこないですね」
「私も沸いてこない。ダサくもなってないし、揺らいでもいないし。不思議」
「新名所だものなあ」
!
「これからいっぱい、いろんなことが起こる場所なのでしょう」
「そんなわけで、今回のワークショップ、いかがでしたか、Tさん」
「いや、ひたすら恥ずかしかったです。ポップ体を持つパフォーマンスを撮るっていうのは…」
「何が恥ずかしいの?」
「いや、なんとなく…。ポップ体自体は、恥ずかしくないんだけどね」


「不思議な書体だなあ、ポップ体。
みなさんも、気になる言葉を、ポップ体で打ち出してみませんか? 見えなかった何かが、見えてくるかもしれませんよ!」
「あ、無理矢理まとめた!」
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