長さ70cmのストロー
その長いストロー、まずは写真でごらんいただこうか、こちらである。
畳の上下に見えるのは畳の縁だ。畳を横断せん勢いの長さの、これがストローだ(畳の古さに目をうばわれずストローを直視してください)
野菜の蕗か
DRINKING STRAWS FOR BIGGER DRINKS
長さは69cmちょいある。
ああ、そういう変わったものが世の中にはあるんだね、と冷静にいようと思えばギリギリいられる商品だとは思う。長いストロー。うんうん、ユニーク商品よね。
しかしどうだろう「感情をあらわにしてもいいですよ」ともし許可が下りるのであれば、下り次第、すぐにでも大声が出せそうだというのもまた事実なのではないか。
「長いなおい!」
「どんだけ向こうのジュース飲むつもりだい!」
と。
長い
ふれるまでもなくおなじみだとは思うが、一応一般的なストローの長さを調べてみると、おおむね22cm~18cmくらいのようだ。
70cm、普通に長すぎる。
ペットボトルや缶に特化したストローなんてのもあって、意外に長さにバリエーションがあった
デンマークからやってきた
これ、見つけたのは「ソストレーネ・グレーネ」というデンマーク発の雑貨のお店である。北欧の低価格雑貨店というのがここ数年ぼちぼち日本に上陸し流行しているが、その一派だ。
こういうマークのお店
店では20cm程度の普通の長さに切ってあるストローもふんだんに商品展開されおり、そちらは人気もあるようだ。それでいて長いストローも売っている。
店頭では「お好きな長さに切って使ってください」というポップが。そういわれると、そうかなるほどとうっかり腑に落ちてしまいそうだがちょっと待って欲しい。
かつて「あー、ストロー、好きな長さに切ってつかいて~!」と思ったことがあっただろうか。
否!
否なのではないかみなの衆よ。
長さはともかく色がいっぱいできれい
いまだ露呈しない需要を掘り起こすというのが商売の真髄なのかもしれないが、それが長いストローなのか。それでいいのか。
それとも「きもかわいい」的なネガティブさをポジティブとする「いらない欲しい」みたいな商品なのだろうか。
全体的に分からない。惑わせてくるのだ。
「あーっ!」となって、そうして、買った。
マジレスすると工作、キッズ(子供の成長に合わせた長さに切る?)需要が大きい商品なのかもしれませんな(写真は、この長いストローで娘が作った「かんむり」)
大人だから、愚直に吸おう
長いストロー。子供なら工作に使うのかもしれないが、われわれは大人である。既成概念にとらわれるに甘んじマニュアルどおりにすすむのだ。この長いストローも手にしたからには吸う一択だろう。
普段より長いストローで飲み物を飲む。
ものすごく興味があるかといえば……それほどではないのも事実である。しかし買ってしまったのだ。
行きがかり上吸っておくしかない。大人の行動はいつだってだいだい行きがかり上ベースである。
「好きな長さに切れる」という訴求にもせっかくなので乗っかって、一番長い70cmから10cm刻みで30cmまでのストロー5種類を用意した。
並べるとどうしても見切れる
テレビ番組などで「最長何cmまで吸えるか挑戦!」なんて企画を見た事があるが、そういったチャレンジングな長さではない。
ただ、しみじみと商品としての長さ70cmを味わいたい。
中途半端なだけになかなか体験できるものではなかろうと同僚たちを呼び集めた(青が30cm、その後緑・ピンク・紫・赤の順に10cmずつ長くなっております)
ストローは理系の基本
「ストロー問題といえば理系の基本ですよ」
と参加してくれたのは編集部の安藤。私は学生時代文理問わずほとんど勉強をしていないので知らなかったのだが、そうか、ストローというのは物理っぽい勉強をするときに通る道なのか。
とはいえ、実際吸うのは安藤さんも始めてとのこと。つまり長いストローは「聞いたことあるけど見たことないやつ」(毎分XXmで歩く弟を自転車に乗って毎分XXmで追いかける兄的な)ということでいいですか。
さらに編集部の石川、藤原にも長いストロー吸引体験をしてもらった。私を含め4人で共有した長いストローあるあるをまとめてみたい。
30cm、40cmのストローあるある
・普通のストローから10cmくらい長くなっただけなのに、垂直に吸おうと思うと早くも吸うのに力がいる
・普通のお茶も長いストローでわざわざ飲む特別な飲み物のように感じる(試飲したときはウーロン茶でした)
・長い棒、そういえば吹いたことはあったが吸うのは初めてだ
30cmははたから見ると普通なのだが、吸うと早くも重みがあり「稀有な体験」が実感される
50cmのストローあるある
・水たばこの感じが出てきた
・息継ぎが必要になってくる
・垂直で飲むとマックシェイク飲むくらいの重さを感じる
・牛乳に砂糖入れて50cmのストローで飲めばほぼマックシェイクなのでは
家に帰って「まさかな」と思ってやってみたら、確かにちょっとシェイク感あるような気がする
60cmのストローあるある
・アルプスホルン気分
・ウィダーイン的な飲むゼリーってストロー部分が短い(というかほぼない)けど、飲み口が長かったら吸うのにこれくらいの力いりそう
・一口飲んで、一息ついたあとストロー内の液体が一気にコップに戻っていって水面が一気に上がるのがぞーっとくる
・ストローの中をじわじわお茶が上がってきて「持ち上げている」という実感がすごい。
・のぼってくる液体にがんばれ!と思うががんばってるのはさては俺だな
・蚊なのかな、俺、蚊なのかな
・吸うのをやめると内臓吸われて持ってかれやしないかと不安になる
すうのを休むと逆に内蔵が吸われそうな感覚におそわれる
普通のことですが、こうして倒して飲むと急に楽になりますな(右から伸びる手がゾンビっぽいですが、「吸い上げる高さ」を示す安藤さんの手です)
70cmのストローあるある
・もはやサバイバル感すらある
吸い上げる角度にもよるが、基本的に長い方が吸う力は必要である。
70cmまで行くと液体を体内に取り込むまで想像以上に難儀することから、生きるか死ぬかみたいなサバイバル感、生命の危機を感じるにまさかいたった。
「やってみないとわからない」とはよくいうが、まさにそのとおりであった。
いきろ
生死すら感じつつ笑う
70cm。ものすごーく長いわけではない。だからこそ、吸おうと思って吸う機会のない長さである。変なものがあったら甘んじて買う、そして使う。そういう無駄な心意気とよりそって生きていきたいものだのうとひげをなぜた。
生命の危機を感じるなどと大げさにまとめたが、それと同時にみんな変なのが面白くなって途中げらげら笑うというシーンもあった。変なもの、普通につい笑っちゃうのだ。そういうのっていいですよね。
とはいえ最後は吸いつかれて昼ドラの姑みたいな顔になっていた