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コネタ


コネタ856
 
豆腐のセン切りに挑戦

先週のこと。とある会議の後、新宿裏手のとある中華料理屋に行った。本格的なメニュー、膨大なその数、飛び交う中国語。その店はお世辞にもきれいとは言えないが、出てくる料理はどれもうまい。私はこういう店が大好きだ。

さてその中でも、最初に出てきた一品に私はやられた。「豆腐の千(セン)切り炒め」だ。豆腐を千切り?確かに、豆腐がセン切りになって炒められている。まるでソバのような感触だ。

ああ、ほかにも角煮や黄ニラ、小籠包などいろいろ食べたのに、なぜあの何ということのない豆腐のセン切りが心に残るのだ。明日にでも、いや今夜でもまたすぐ食べたい。食べたい。

というわけで再現することにした。

乙幡 啓子

店のメニュー説明には、「豆腐に重しをして水分を抜き」とある。どこにでもあるふつうの豆腐を使っているようだ。

豆腐の水抜きと一口に言っても、なかなか大変である。時間もかかるし、コツもいる。麻婆豆腐やゴーヤチャンプルーなど作るときも、あらかじめ豆腐をレンジでチンしたり、重石を載せたりいろいろ錯誤したりしている。


ふつうの木綿豆腐。以後、ここはほぼ白いページになります。

なのでまずは今回、野菜の水切り道具を使ってみた。2重のカゴに入れてフタをしてぐるぐる石臼の様にまわす、あれである。

これなら「○○回まわしたらカチカチに!」とデータを定量化できるし、絵も変わったものが撮れるかも・・・と、うわの空でガタガタと回していたらば、だ。



衝撃で豆腐、こなごな。そりゃそうだ。
水はけっこう切れて、いいセン行ってたんですがね。

第1案、不発に終わる。では控えの豆腐を。次は地道に重石で抑えるしかない。何事も地道が一番ですわ。

といっても豆腐抑えるような重いものなんて、そうそうないわけです。


めったに(というか全く ) 使わないのにこういうときだけごめん、英英辞典よ。

夕方5時に重石を載せて外出し、夜中1時にご開帳。ウィー。


地層がずれています。

おお、水、出てる出てる。ではさっそくセン切ってみよう。


おお、セン切りにはできた。できたが・・・

重石を置く前よりは明らかに切りやすくなっているのだが、まだちょっと水気があり、このまま調理するには心もとない。ここまで来るのに8時間。いったいいつまで置いといたらいいんだ!

と自分が切れてばかりもいられません。ではまた重石をして、しばらくそのことは忘れるようにしましょう。

・・・すっかり忘れてしまっていました。あれから20時間がまた経過していた。


厚さ、元の半分に。
立てて薄切りにしても耐えられる堅さ。

薄〜い♪

なぜ材料が薄く切れると、人はうれしいんだろう。食物確保にいそしんでいた原始時代の名残りだろうか。「こうすればあと○○日持つウホ!」とかね。

ではじゃんじゃんセン切ってセン切ってセン切りまくろう!


薄い豆腐を切る。ぜんぜん歯応えがない。
おお、セン切り!セン切り!

塩・こしょうで簡単に炒めてみる。

おお、炒めても型崩れしない!全く、麺のようだ。今日は私には初めて見る光景ばかりである。


うまい・・・。私をほめたいです。

な、な、なんだこのうまさは!とそれほどおののいたわけではないが、うまい。これが豆腐だろうか。セン切りにしたことで焼かれる面積・油を吸う面積が増し、歯応えも加わって、ふつうの豆腐とは明らかに別物。あっというまに台所で完食。

しかしあの中華屋のは焦げ目もなく、もっと細切りで、なんだかうまいスープかタレに浸かっていた。つまりあの一品は再現できちゃいない。ひとりまた修行の日々だ。

ナンプラーかけるとまたうまい。

食べ物が麺状になったり、薄べったくなったりするとなぜ味が変わるんでしょう。特に、薄くなったものは本当にうまい。ハムカツ然り、クレープ然り、ルマンド然り。

「物の味は形状にも左右される」ということを身をもって体感した。

薄い食べ物、麺、好きだー!ウォー!



 

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