天然の炭酸温泉に入る
かどや旅館さんは、6年前に改築したばかり。木の香りが漂う清潔な雰囲気の旅館だった。
到着が遅くなってしまったので、夕食は外で食べる事にした。長湯温泉には夕飯を食べられるところが2箇所だけある。僕は正直屋という定食屋に入った。唐揚げ定食を頼んだら、手羽先が出て来た。
「こ、これは?」 と聞いたら 「唐揚げ定食です」 ときっぱり言い切られたので、これは正直屋的には唐揚げなのだろう。
正直屋の前を流れる芹川のほとりに、炭酸泉の露天風呂「ガニ湯」がある。 24時間いつでも入れて、料金は無料。
「今だったら暗いから、周りから見られなくてすみますよ」 正直屋のオバサンに勧められるまま、「ガニ湯」に入った。
炭酸ってくらいなのでお湯がプチプチしてるのかと思ったがそんなことはなくて、柔らかい湯触りだった。温度はぬるめで、のぼせ易い僕でもずっと浸かっていられる。 飲んでもいいと聞いていたので手にすくって飲んでみたが、やっぱりプチプチいってない。鉄分の味が強く、正直炭酸って感じはしない。ペリエみたいな喉越しを想像していたので拍子抜けだ。明日の天然炭酸水は大丈夫だろうか?
蛙がゲコゲコ鳴いていて、川の上を蛍が飛んでいたりする。それに川のせせらぎも加わって、とにかく町全体から「癒されろ」と脅迫されている感じだ。
今回の目的「天然の炭酸水でサワーを作る」を忘れそうだったので、30分ほどでガニ湯を出た。
22時になり、町のお店はすべて閉まってしまう。娯楽施設は一切なく、つげ義春の漫画でこういうシチュエーションを見たことある。温泉街にやって来た男が天狗のお面をかぶって旅館の女将さんを犯すやつ。
仕方ないので宿に戻った。
全国の温泉のうち、炭酸泉はたったの0.4パーセントしか出ていない。とにかく珍しい温泉なので、長湯に来たらとにかく入りまくっておかないともったいない。
そんな炭酸泉の一番の効能は血行促進。 確かに湯上り後30分以上しても体がポカポカしていて、汗が噴き出してくる。
「冬でもお風呂から上がってしばらくは裸で大丈夫ですから」
かどやのご主人もそう言っていた。 その他に糖尿病、動脈硬化、冷え性、関節リュウマチにも効果があり、美肌効果もあるそうです。
すっかり炭酸泉を堪能した1日目の夜は深まり、明日はいよいよ天然の炭酸水を汲みに行きます。