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はっけんの水曜日
 
私に川越を案内させてください

「友人などに、自分の地元を道案内する時、人はなぜか、得意げになる」……と書いたのは、確かナンシー関さんだったと思う。

小江戸、川越。
新宿から50分。埼玉県の中ではメジャーな町で、観光地でもある。

私の出身地は鶴ケ島市という隣の市なのだが、川越にある高校に通っていたので、3年のあいだ、放課後をずっと、ぶらぶらぶらぶらと歩き倒した。
いまは、兄夫婦が川越に住んでいる。
私のとって、思い入れのある、大切な町なのだ。

んで是非、『デイリーポータルZ』読者の皆さんを、無理矢理、川越案内させていただきたい。
観光の王道コースじゃない川越を、得意げに、紹介出来るかもしれない。

えーっと………こっからタメグチでいいですか?

(text by 大塚幸代


東武東上線、「川越市」駅、下車。

いやあのね、川越の繁華街って、東上線の「川越」駅と「川越市」駅と、西武線の「本川越」って、3つ駅があるのね。
で、私の通ってた学校が、「川越市駅」の真ん前なんで、この駅を利用してたのよ。




降りてすぐにあるのが、アイススケートリンク
たまに学校のレクリエーションで、滑りに行ったりしたなあ。すっごい冴えない男の先生が、めちゃくちゃスイー、スイーって上手くて、皆でビックリしたことがあったなあ。
昔は冬期しかやってなかったんだけど、今は年中無休でやってるらしいから、気が向いたら滑りに行くとグーよ。靴も貸してくれるし。

で、駅前に、伝説のレンタルレコード屋が……げげっ。


この夏で、閉店しちゃったんだ……。

「G7」(ジーセブン)っていうのはねえ、けっこうマイナーな音楽も揃えていた、良心的なレンタルレコード&CD屋さんで、川越近辺出身の音楽関係者は、全員、お世話になっていたハズと言っても過言ではない店だったんだけど……。私が17歳の時、「フリッパーズ・ギター」のファーストを借りたのも、この店だったのに。合掌。

で、潰れたジーセブンの横の路地に入っていきますよ。



ここ、ありえないほど細い道だけど、通学路なのよ。近道だから。ここで2回くらい変質者に逢ったなあ、ああいうのは春の風物詩みたいなもんで、サッサと無視して通りすぎちゃえばいいんだよね。

で、ウチの学校って、卒業生を送る会みたいなヤツで、毎年、「ブレイクする直前の芸人を呼ぶ」っていう変な伝統があって。
過去にも、売れる前の「アリス」とか「とんねるず」とか、呼んでたらしいんだけど、ウチの代は、「ウッチャンナンチャン」だったのよねえ。
で、ウッチャンナンチャンがこの路地を通って来校して、しょっぱなの掴みネタは「あんまりにも細い道で、どこに連れていかれるのかと思いましたよ!」だったのよねえ。
そのあとに「女子高生の匂いがしますねー」「血の匂いですか?」とか言ってた覚えが。
っていうか、あの当時、ウッチャンナンチャンが電車移動してたんだなあ。



あ、それでココが学校。校門の前に桜並木があって、入学式の頃は桜吹雪になるんですよ。
そんで入学式では、在校生が「ハレルヤ」を歌って歓迎する伝統があって。「ハーレルヤ、ハーレルヤ」って、あの有名な曲ね。全然クリスチャン系の学校じゃないんだけど……今考えると、かなり萌え萌えなイベントだよねえ。『マリア様がみてる』みたいな。

そうそう、葉桜を防虫消毒する前に、調理実習用の葉っぱをとるの。そんで「桜餅」とか作ったなあ。

あ、学祭も盛大なんですよ。紫苑祭っていうんだけど。前に高校文化祭評論家の人に逢ったときに「あなたのとこは、全国学祭ベストテンに入りますよ!」って誉められたことがある、えへへー。
なぜかというと、女子高とかって、チケットがないと会場に入れなかったりするのが多いんだけど、ウチの学校は、誰でも入れる、数少ない女子高らしくて。
今年は今月の25、25日に開催らしいので、お暇なら行ってやってくださいよ。テンションの高い現役女子高生たちが、たったの50〜100円くらいでゲームを一緒にやってくれたり、手作りクッキーと紅茶をくれたり、変てこりんな世界が展開されてますから。
ちなみに模擬店は、甘いもの屋ばっかりなので、甘いもの苦手な人はキツイよ! やつらは「自分たちの食べたいものが、客も食べたいハズ!」と信じて疑がってないから。

で、学校の近くに、銭湯を改造した、面白い絵本屋さんがあったんだけど………。

ない! なくなってる!

うわあ、よくコロッケを食べた、肉屋も無くなってる! 
みんなに人気のあった、ボーイッシュな女の子の誕生日のとき「ケーキ型のコロッケを作ってください」と言ったら作ってくれた、あの店が! 映画『野蛮人のように』のロケでつかわれたという、あの店が! 薬師丸ひろ子と柴田恭平の写真、飾ってあったのに!

………さみしいもんですね。

じゃー「蔵づくり」の観光スポットがあるとこまで、歩きましょうか。

川越ってさあ、私が女子高生だった……もう15年も前になるけど、その当時って、全然観光地じゃなかったの。確かに学校の課外授業で「手作りあめ工場見学」とか「手作り醤油工場見学」とかは、したんだけど。ひなびた感じで、マニアが来るだけの、地方都市だったの。
90年代の間に、みるみる観光地になっちゃった。「時の鐘」っていう、鐘がぶらさがってる建築物があるんだけど、今はそれが観光の目玉になってるけど、当時は周りの高い建物にはさまれててさあ、ショボかったのなんの。建物とっぱらって、景観良くしたんだよね。電柱も地下に埋めちゃって。

で、このへんの店は、「あめ」とか「醤油」とか「豆腐」とか「イモ関連」とかは、地元で作ってるものが多いけど、京都の漬け物屋さんとか、東京の和小物屋さんとか、川越発じゃない店も出店してて、「なんか江戸っぽいものなら、なんでもオッケー! イエーイ!」みたいになっちゃってるのよね。まあ面白いからいいんだけど。

もう何でもかんでも「イモ」がらみの商品があるしね、イモコーヒーとか、イモソフトとか、イモビールとか、イモ定食とか。イモ好きにはたまらないかも。



で、私がわりと好きな店は、豆専門店「まめ屋」(川越市仲町5-13)。やわらかい、キナコのついた豆菓子を、やたら試食させてくれるから。あと、店頭に必ずハトがいるので、「やっぱりハトって豆が好きなのね!」と感激できるよ。できないか。

あと、川越が観光地化する前から、変わってない甘味屋、「富士屋」(一番街商店街内)。



ここの自家製小倉アイスが……コップにすりきり一杯で出てくんの、250円。




うーん、おいしー!
甘いものが苦手な人には、トコロテンやラーメンもあるよ。

……そうだ、紫の餃子、食べない? 紫イモが入ってる餃子。



「川越ラーメン」っていうの出してる、「大八」っていう中華屋なんだけど(川越市大手町14-7)。


ね、ね、ね、紫でしょ。



中も、ちょびっとだけイモ入ってて。まあ味は……普通においしいでしょ、ふふふー。

「時の鐘」の裏っかわにある、「スカラ座」にも行ってみようか。




うーん昭和っぽいでしょ。椅子もかたいし、音も良くないけど、風情があるっつーか。
いま、「スパイダーマン2」と「ロスト・イン・トランスレーション」がかかってるのかあ。「ロスト・イン〜」のほう、ここで観たいなあ……。



 

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