あ、美味しい。タレの甘酢はかなり甘いのでカラシとお酢を追加してカスタム。こうやって味の調節をするような小さな作業でグッとリアルに夏を思い出す。
勢いよくずるずる麺をすするまわりでは、新年会らしい団体客やカップルの席をウェイトレスさんがお茶を配ってまわっていた。
「はーい、どーじょー、お茶、どーじょー」
「元気いいですねえ」
「ほら、寒い季節だから、元気ださないとね」
あ、こら! せっかく夏気分を味わってるんだから“寒い季節”なんて言わないでください!
「年末の「徹子の部屋」観た?」
「あ、恒例のタモリのやつ?」
「面白かったですよねえ」
あ、こら! せっかく夏気分を味わってるんだから、年末の話なんかしないでください!
「電気ストーブより、石油ストーブの方が暖かいよねえ」
「いや、うちはコタツだけでいいや」
「え、でもそれだけだとコタツから出られなくならない? 寒すぎて」
あ、こら! せっかく夏気分を味わってるんだから、暖房器具の話なんかしないでください!
……。ダメだ…。自分が夏の気分になっても、周りの方々の話が耳に入ってきてどうしても時候を感じてしまう。やっぱり、冬に食べ物だけで夏を感じるのは無理なのか。
いや、周りを巻き込んでみんなで一緒に食べればいいんじゃないか。そう、スイカ! スイカをまるまる一玉買って、みんなで食べよう。みんなで一緒に夏になろう。 |