「埼玉でも見たけど、それはコケみたいだったよ。岩の壁がちらほら光ってたって他の人は言うけど、自分には見えなかったねえ。江戸の末期に死人を葬る穴だったらしいよ? ホントここはすごいよ。信じられないねえ。ライトを当てたまやかしかと思ったよ」
その方は母と私が似ている、と言い残し、また歩き始めた。
それはヒカリゴケでは、とも思ったが、やはりそういう現象の場所を神秘的に思い、祈りを込めて死人を運ぶ昔の人の心情を想像した。
正直、うまく取材できるなら、光量を調べたり、太陽電池が反応するのか実験したり、ナウシカというアニメのラストにある金色の草原の上に立つ青い服の人を写真のトリックで作ってみようか、等と思っていた。
しかし池を見て、これはそういう小細工はできないと思った。どう書けばいいのかもわからなかった。
ただ、静かな感動のあと、興奮し、高揚感が続き、思ったのは、これは伝えたい! ということだった。
洞穴から外を見ると、桜越しに見える青空と海。空にはトンビと鳥の声。 |