料理とは冷たさと温かさのハーモニーだった
ひとくち食べてみる。あれ、いつもとそんなに変わらないな。温度が少し違うだけでいつも食べているものと同じなのだ。そりゃ劇的な変化は起こらないだろう。
しかし、冷やしたものを食べて気づいた。
お弁当の中でしにゃしにゃになって存在感のうすい漬け物。あれは冷やすととたんに本来の活躍を見せ、こりこりという歯ごたえになった。
冷やしたほたても功を奏した。温かいご飯の上にのせて食べると確かにうまい。料理は冷たさと温かさのハーモニーだと気づいた。
唯一こんにゃくやガンモなどの煮物は失敗した。もう少し低い温度のほうがおいしいようだ。
あたためすぎて水分が蒸発し、煮物の一番いいダシが染みた状態を失ってしまったようだ。
どうやらなんでも61℃〜66℃がおいしい、というわけではなさそうだ。料理は奥が深いな。
今回の実験を通して垣間見たお弁当の意図
全体的にはいつもの弁当よりおいしかった。しかしそれは温度のせいだけではないと思う。以下に原因を記す。
- ご飯を何度か移し替えたことによって固いご飯がいつもよりやわらかい。
- 別々にあたためたため、味が混じり合うことがなかったため、結果それぞれのおかずの持ち味が引き出された。
温度のことよりもこの2つが味をよくした重要なポイントだ。逆に言えば、温度はそれほど大きな要因ではないかもしれない。 温度を測りながら食べることによって、コンビニ弁当制作者の意図のようなものを感じた。
温度がやや低くあたためられる分、やや濃く味付けておく、という意図だ。適温で食べれば少しだけしょっぱい味付けのものがやや低い温度だと気にならなくなる。逆にちょうど良い味付けのものを低い温度で食べると薄く感じてしまう。
ふだんまったく料理ができない僕が、温度と味の相関性に少しだけ気づいた貴重な体験だった。 |