デイリーポータルZロゴ
検索天気地図路線このサイトについてランダム表示ランダム表示


ちしきの金曜日
 
アロエ部

なんの劇的なこともなく、いつもの調子で出ていった先輩の背中を見ながら、ドラマみたいなことってなかなか起きないものだな、と思った。
「なんか、先輩、また明日来そうだよね」
「そうだね。こんなものかね」

ぼくは窓際に寄っていって、彼女の隣でグランドを見た。先輩が見えるかな、と思ったけど裏門から出ていったらしく、いつまでたってもその姿は見えなかった。


街路樹に花を添えるアロエ。花はないけど。
アロエでお出迎え

先輩のボタンを握ったままなのに気がついたぼくは、いったんポケットにそれをしまい、自分のボタンを何となくいじってまた先輩のボタンを取り出して見つめたりした。横を見ると、彼女もぼくの手の中のボタンを見ていた。

「これ、あげるよ」

ぼくは彼女にボタンをさしだした。彼女はぼくの目を見て、そしてすっかり真っ暗になったグラウンドの方を見て、またぼくの目を見た。
「ありがとう」
そう言って手を差し出した彼女の手のひらにぽとり、とボタンを落とした。

あかりを点けないままだったので、部室は真っ暗だった。彼女の表情は分からなかった。彼女の方もぼくの表情が見えなかったはずだ。そして、ぼくの第2ボタンがなくなっていることも。


なにせ、ぼくはマジック同好会の部長でもあるのだ。

下町によくある、こんなふうになっている家をめぐり、アロエ鑑賞しました。元アロエ部員として。

という、夢を見た。

ぼくは眠りが浅いので良く夢を見る。昼頃までは夢の内容を覚えている。

ぼくの高校に「アロエ部」なんてなかったし、こんな青春物語もなかった。というか「アロエ部」ってなんだよ。そんな部活あるもんか。

33歳にもなってなんでこんなロマンチックな夢を見なきゃならないのか。それにしてもあまりに良くできた夢だったので、起きてすぐメモして、こうしてストーリーとして再現してみた。

自分で見ておいてなんだが、やはり「アロエ部」という発想が衝撃的だったので、東京の下町をめぐって家の軒先に置いてあるアロエを観察してまわった。にわかアロエ部というわけだ。

想像以上にみんなアロエ好きだよな。ざくざくアロエが撮れたよ。こんなにアロエがたくさんあると思わなかった。

もしかしてみんな、アロエ部に所属していたのだろうか。


 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ

 
Ad by DailyPortalZ
 

アット・ニフティトップページへアット・ニフティ会員に登録 個人情報保護ポリシー
©2012 NIFTY Corporation