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土曜ワイド工場
 
旅先でポエムを詠む

学生服を着てソーセージを食ったら後光が射した。これがどういったことを意味するのかいまだにわからない。

 

高徳院・鎌倉大仏


長かった大仏ハイキングコースもとうとう終点、大仏のある高徳院だ。
途中、空腹に耐えかねてガイドブックに書いてあったレストランに入ったところ、食べ物がソーセージ一人前しか残っていない、というハプニングもあったものの、学生の元気でなんとか乗り越えた。

大仏は正式名称を阿弥陀如来坐像といい、1244年頃の完成以来なんども自然災害によってひどい目にあっているが、そのたびに修復されて今の姿を保っている。けっこう苦労人なのだ。


ヤリを物色中!

高徳院・鎌倉大仏の思い出

高徳院前には武器屋があった。ゲームに出てきた、あんな武器やこんな武器のレプリカが所狭しと並んでいる。へー、と口をぽっかりあけながら物色していると、目の前にヌッと黒い影が現れた。
本物の学生さんだ!
学生服も我々より決まっているし、何より学生帽をかぶっている。絶対本物だ。本物の学生さんは、学生帽のままヤリを物色中。すごい。よくわからない。
ただ学生さんを見た、というだけのことなのだが、自分たちも学生服を着ていることで、妙に親近感が湧いてうれしくなってしまった。みんなで「学生さんがいるね」「うん、学生さんだ」とひとしきり学生さんを満喫させてもらったが、当の学生さんにしてみたら、学ラン着ただけの偽学生に親近感を持たれて迷惑だったに違いない。

 


険しい山道を乗り越えて!

大仏ハイキングコースは通常1時間半程度の所要時間であるらしい。色々とふざけていたり観光したりするともう1〜2時間はかかる。特にふざけは疲れが2倍になるので注意が必要だ。このころになるとピースもあまり出なくなってくる。
しかしふざけたあとの大仏がまた格別だ。なにしろ大仏というだけあって、それ自体がふざけているようなものだ。なんででかいんだ。ふざけているのか。
そんな大仏さまを目の前にするとやはりピースが出てくる。しかしそのピースにもキレがない。ふざけやピースには体力が必要なので、やっているほうもつらいのだということを分かっていただければ幸いだ。


ピースにきれがなく!
大仏もまた格別!

4回目となると抵抗なく書き始める

 

 

高徳院にて

ビル50階に相当する大仏を見ても

それはビル50階と同じものでしかなくて

東京タワーくらい大きければと思ったなら

今度は東京タワーくらいの仏ができることだろう

仏は写真におさめよう

メガピクセル携帯で写真を撮ろう

早く早く

大仏が逃げてしまうその前に

 

ポエムを他人に読み上げられている人の動画(音は出ない)

今回の優秀作品は大北だ。グニャーと体を曲げて、必死でテレをこらえている。中盤の手のすりあわせがモジモジの典型症状だ。さっきの石川といいテレが体にきているのは年のせいなのだろうか。

やわらかい文体のせいか、なんとなくおしゃれなポエムだ。「早く早く 大仏が逃げてしまうその前に」のあたりはのおしゃれさはかなりのもので、それだけに恥ずかしさもひとしおだっただろう。どういったつもりでこんなことを書いたのか。バカなんじゃないんだろうか。

 

 

海辺


いよいよ旅のクライマックス、海だ。

高徳院の前にはみやげ物屋が建ち並び、偽学生は買い食いし放題だ。その場で買ったせんべいをかじりつつ、江ノ電長谷駅を越えてそのまま行くと、程なくして海が見えてきた。

ついたときは日暮れ間近。夕暮れ、海、学生、これほどポエムを詠むのにふさわしい条件が揃うことはもうあるまい。


停滞した空気の中!
ハイキングコースをだらだら歩いて一日山の景色だったものだから、目の前の海には感動した。山、観光、海、と半日で巡れるなんて、鎌倉はあなどれないポエムスポットだと思う。この日も全国のポエマーたちが多く集結していた。
ちなみにこのころになるとおふざけや口数もぐっと少なくなる。単純に疲れてきたというだけなんだが、そんな停滞した空気の中、眼前に現れる海の景色には感激もひとしおだ。
夕日で空が色づきかけていて、美しかった。周りにいる人たちも、心なしかみんなうっとりしているように見えた。

 


寒い!

しかし、いかんせん寒い。夕方になって急激に冷え込んできた。風も強く、寒い。でも夕日が綺麗。寒い、でも綺麗、いや寒い、でも綺麗…。そんな葛藤をふりほどこうとふと周りを見回すと、うわあ、海、広い!うーみー!
綺麗、寒い、広いで完全にがんじがらめになってしまったが、間違いなくポエムには最高のロケーションだ。ここまで4箇所でポエムを書いてきたが、ここへきて真打登場、というかんじである。

恋愛経験が少ない藤原さんが恋のポエムを一生懸命考えていたら、団体客に写真撮影をお願いされた。何か才能めいたものを感じる。


恋のポエムに困っていたら!
写真撮影を頼まれた藤原さん!

 

「恋愛に関するポエムが少ない」とのひとことにより、今回は恋愛をテーマにしてポエムを書いた。海辺にはカップルも多く、景色も大変美しいので恋愛を語るには最適な場所といえるだろう。青臭い恋愛観をポエムにこめるのだ。

 

ポエム詠みとしては至福のロケーション

 

街を歩けば

  カップルだらけ

海辺を歩けば

  波だらけ

どちらも とても

  いい風景

 

動画:左の人のポエムが詠まれている(音は出ない)

最後はまたも藤原さん。よく見ると一人だけかすかに体が動いている。赤いマフラーを風になびかせながら恥ずかしさをじっと我慢していたが、最後に「やったー!」とオーバーアクションで照れ隠しせずにはいられないあたり、やはりよほど恥ずかしかったのだろう。

一見いいこと言ってそうに見えるがあんまり大したことは言ってないというのが中学生ポエムの特長だ。波とカップルを対比の構図に持込み、最後に「どちらもとてもいい風景」で締める。恋愛経験がないと言い張る藤原さんならではの、ほのぼのと田舎くさい作品だと思う。

今振り返って思うことは、「やっぱりポエムは思い出深い」ということだ。

今あった楽しかったこと、おもしろいエピソードをその場でもういちど思い出し、吟味して、言葉をつむいでいく。これにより、ひとつひとつの想い出がよりくっきりと記憶に刻み込まれていく。あとで思い出しても、当時の自分を鮮明に思い出すことができるのだ。

食べ物をただのどに流し込むのではなく、舌の上でじっくり味わう。旅においては、ポエムを詠むことでそんな効果があるような気がした。

あと主旨とはずれるが学生服を着てふざけるのはもう、猛烈な楽しさだったのでこれもお薦めしておきたい。

自作を朗読するのは恥ずかしいので素人には不可能だ

 


 
 
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