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ひらめきの月曜日
 
古本目利き3本勝負

第2ラウンド 1人目:加藤

第1ラウンドではすっかりすべってしまった加藤。
今度こそはと思い、2冊目を取り出す。
今回はちょっと自信があるのだが…。


店長「次こそはすごいの出してくるんじゃない」

加藤「そういうプレッシャーかけるのやめてください。私の2冊目は『続あしながおじさん』です」

 

『続あしながおじさん』J・ウェブスター

 

加藤「『あしながおじさん』はよく本屋に置いてあるのですが、『続あしながおじさん』はなかなか置いてなくて…」

店長「『続あしながおじさん』なら、うちにあるよ」

加藤:えっ!?

『あしながおじさん』はアニメにもなった有名な小説。
店内の児童書の棚には、ちゃんと『続あしながおじさん』があった。
『続あしながおじさん』が置いていないのを攻めどころにしようと企んだ加藤だが、予想外の展開に焦る。

加藤「あしながおじさんはアニメにもなっているので、みんな知っていると思うのですが、続編の方はあまり知られていない。続編では1作目の主人公ジュディの親友のサリーが主人公で、ジュディに手紙を書きつづります。サリーが成長していく様子に感動します。続編をお店に置いてほしい。いやもう置いてください、この本あげます」

店長「確かに、表紙がアニメの絵じゃないやつが欲しかったんだ」

「この本あげるから置いてくれ」という加藤の強引なプッシュに、店長はうーんとうなる。

店長「ところで、あなたは『あしながおじさん』を薦める前に読むものがあるでしょう。『少女パレアナ(注1)』読んでよ」

(注1)『少女パレアナ』…ポーター著。「愛少女ポリアンナ物語」というタイトルでアニメ化されている。

『少女パレアナ』を以前から加藤に薦めていた店長が、ここで再び薦め始めた。


店長「俺がここで『パレアナ』をプレゼンしたいよ。『パレアナ』を読まずして『あしながおじさん』を語るべからずだよ」

加藤「誰もそんなこと言ってないですよ」

店長「そういえば、うちに『あしながおじさん』の原書あるよ。英語で読む?」

加藤「挿絵が日本語版と同じなんですね。あ、よつばのクローバーの押し花が挟まってた!わー、かわいらしー」

店長「あ、ホントだ。知らなかった」

加藤「店長読んでないじゃん」

 

原書の『あしながおじさん』に、よつばのクローバーが挟まっていた。ちょっといい話。

 

加藤「よつばのクローバーが挟まってたら、本の価値が上がるんですか?」

店長「いや」

加藤「『続あしながおじさん』の値段つけお願いします」

店長「状態が良くないから40円」

加藤「やったー、さっきの10円よりはアップした!」

 

第2ラウンド:加藤の結果
『続あしながおじさん』

40円

 

「このお店にはないから、この本が欲しいでしょう?」と言う論法で攻めるつもりだったが、予想は大外れ。

以前、店頭をチェックした際に置いてないと思っていたのは、勘違いだったらしい。
手痛いミスだ。
第1ラウンドより上がったとは言え、低レベルの40円止まり。
これでは私が最下位に!?

 

第2ラウンド 2人目:Yさん

本探しで若干難航していたYさん、2冊目は自信がないのか、ちょっと苦笑いをしながら本の紹介を始める。

Yさん「2冊目は『ファンタジーの世界』という本です」

 

『ファンタジーの世界』佐藤さとる

 

Yさん「すみません、この店にはファンタジーが多そうだと思って買ってきただけで、実はこの本について語ることはありません!」

加藤「でも、資料としては良さそうですよね」

Yさん「ゲーム作る時とか」

店長「そのシリーズの他の本あるよ。佐藤さとるさんの絵がステキだねえ」

Yさん「絵だけじゃなくて、佐藤さとるさんが書いてるんです」

店長「えっ、佐藤さとるさんが書いてるの?じゃあ欲しいわ」

Bさん「あ、今、店長の心が動いた」

 

著者が好きな作家だったらしく、店長が急に興味を示し始めた。
本の状態を確認するため、あちこちを確認する。

イスはあるのに、なぜか全員立ったまま忙しく本を見る。

店長「旭川の古本屋の値札が貼ってあるね」

Yさん「札幌まで流れてきたんですね」

店長「これは50円で買うね」

Yさん「あ〜、また50円か」

第2ラウンド:Yさんの結果
『ファンタジーの世界』

50円

 

Yさんは無欲の勝利とも言うべきか、何となく買ってきた本が偶然店長の好きな作家さんだった。
価格は50円と低いが、センスの面では高評価かもしれない。
少なくとも、加藤の40円より良いのは間違いない。

 

 

 

第2ラウンド 3人目:Bさん

第1ラウンドで、店長と趣味のシンクロニシティを見せたBさんが、また余裕の態度で本を取り出した。

40円50円と、2ケタの世界に留まっている加藤とYさんから見たら、小憎らしいほどの余裕っぷりである。

 

加藤「Bさんはすでに1勝してますからねえ」

店長「次に何の本を出してくるのかが重要だね」

加藤「実はわれわれ、横の情報があまりなくてですね」

Yさん「他人が何を買ってるのか知らないまま、カード切ってますから」

Bさん「えー、私が買ってきましたのは『毒草を食べてみた』です」

 

『毒草を食べてみた』植松黎

 

Bさん「もうタイトルだけで読んでみたいと思うんですけど」

店長「ステキだねえ」

またしても、Bさんの買ってきた本に好感触を示す店長。
それを見ていた加藤とYさんは、「このラウンドも敗北か!?」と肩を落とす。

Bさん「さまざまな毒草の効果が具体的に書いてあります。その毒草に関連する文学作品も紹介されてたりして。目次を見ると、チョウセンアサガオ、トリカブト、フクジュソウ、バッカク、アサ、ヒガンバナ、スズラン、コカ、ジギタリス、マンドレーク、ベラドンナ……もう『華岡青洲の妻(注2)』の世界ですよ」

(注2)「華岡青洲の妻」…有吉佐和子著。江戸時代の外科医、華岡青洲が登場する小説。作中で毒薬を麻酔として研究・使用している。

Bさん「いちいち、各ページにマークがついてるんですよ。これはしびれマーク」

 

毒草を食べた時の症状別に、このようなマークがついていた。これはしびれのマーク。怖いけどかわいい。

 

第1ラウンド同様、Bさんの解説に店長もノリノリ。
Bさんと店長が「2人の世界」に浸り始めたので、加藤が怒り出す。

加藤「もう2人でやってよ。私たちの入りこむ隙がない」

店長「バッカクは0.06ミリグラムで巨像を倒すんだよ!?」

加藤「ダメだ店長。もう毒草の世界に入り込んでる」

店長「この作者、どっかで見たことあると思ったら、一時期の俺の愛読書『ポケットジョーク』の訳者だ」

加藤「この本じたいが、悪いジョークみたいなもんですけどね」

店長「うまいこと言うな」


またしても店長のストライクゾーンをバシバシついてくるBさん。
加藤とYさんはすでにあきらめモードである。


店長「値段は100円」

Bさん「100円かー」

加藤「われわれからしたら、100円は夢の世界ですよ」

第2ウンド:Bさんの結果
『毒草を食べてみた』

100円

  

またしてもBさんが100円を叩き出した。
値段より何より、店長が楽しそう。
判定が出る前からすでに敗北を予感…。

 

第1ラウンド:判定

聞くまでもないとは思うが、第2ラウンドの勝者が店長から発表された。

店長「値段は関係なくBさん、素晴らしい」

Bさん「わーい」

店長「この本、売ってくれない?」

Bさん「じゃあ熟読したら売りに来ます」

加藤「もう、あなたがた2人だけの世界じゃないですか」

「Bさんには勝てないのか?」というムードも漂い始めたが、次はいよいよ最終ラウンド。
各自、とっておきの切り札を用意しているはずだ。

大逆転なるか!?

 

第2ラウンド終了時 結果

参加者1:加藤

 

参加者2:Bさん

  

参加者3:Yさん

 

 
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