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ひらめきの月曜日
 
古本目利き3本勝負

第3ラウンド 1人目:加藤

泣いても笑っても最終ラウンドである。

が、しかし!
今度こそは本当に、絶対の自信があるのだ〜!
それは何かと言うと…。

加藤「妖怪雑誌『怪』の、記念すべき第零号です!」

 

妖怪雑誌『怪』第零号

 

加藤「雑誌『怪』は、水木しげる、京極夏彦、荒俣宏、のちに宮部みゆきなども加わった、そうそうたる面々が執筆している妖怪雑誌です。装丁が今の『怪』と違うんですね。サイズが違うし、カバーがあります。

店長:は〜…。

加藤:第零号ということで執筆陣も豪華です。今言った面々の他に、多田克己さん、村上健司さんという、妖怪業界では有名な方も執筆されています。

店長:これ、105円?どうして俺が買わなかったんだー。

加藤:2〜3年探してたんですよ。

店長:それを今日、うちに売りに来てくれたんだ。

加藤:売りませんよ。

店長:どうもありがとう。

加藤:売らないって。

店長:いくらなら売ってくれる?

加藤:売らない。

店長も妖怪好きだったため、加藤と店長の間で「売ってくれ」「いや売らない」の押し問答が続くが省略。

 

「売らないって!」

店長「でも、この本を出してくるとは、ヒネリがないよね」

加藤「これは“奇跡の出会い”なんです!寄ろうとした店の駐車場がいっぱいだったから寄れなくて、その代わりに偶然行った古本屋で見つけたんです。偶然に偶然が重なって出会えた本なんですよ!」

 

加藤の熱弁を聞いているのかいないのか、おもむろに店長が『怪』の表紙を磨き始める。
気に入った本があったら磨かずにはいられない、古本屋の性か?

 

本を磨き出した店長。「スーパー古本万能クリーナー(店長命名)」を取り出すが、実はただの市販のクリーナーだ。

 

店長「こういう値札を剥がすのは、素人が手を出すと危ないから任せなさい」

加藤「あのー店長、本磨いてないで値段を…」

店長「何も知らない人が持ってきたら、100円で買うけどね…(しばらく考えて)1000円」

加藤「うわ、びっくりした!」

Bさん「何その『最後のボーナス問題100万点』みたいな展開!?」

Yさん「もう勝敗決まっちゃったんじゃないの?」

店長「でも、1000円ついたからって良いわけじゃないよ。最終的な判断は値段じゃないからね。だってこの本、売ってくれそうにないもん」

加藤「店長の基準って、本を売ってくれるかくれないかなの?」

第3ラウンド:加藤の結果
『怪』第零号

1000円

 

加藤の飛び道具にも近い切り札で、1000円という価格が飛び出した。
未踏の4ケタに、BさんYさんも呆れ顔。

ちなみに店長は後日、ネットではもっと安いと知りショックを受けていた

ともかく第1、2ラウンドを制したBさんが勝利かと思われたが、これで勝敗がわからなくなってきた。

 

 

第3ラウンド 2人目:Yさん

加藤が1000円という高評価を出してしまったため、それはそれで、2番手のYさんはやりにくそう。

Yさん「私の最後の本は、『聖徳太子「未来記」の秘予言』です」

 

『聖徳太子「未来記」の秘予言』五島勉

 

加藤「これ『ムー(注3)』っぽいですね」

※注3 「ムー」…不思議な現象などを扱っている雑誌。

Yさん「こういうのが好きで昔よく読んでたんです。五島勉さんって言って、ノストラダムスの大予言関係とか書いてたライターさんなんですけど。ノストラダムスの他に、エドガー・ケーシーっていう預言者とかを手広く扱っている、いわば『予言ライター』です。

店長もこういった不思議系が嫌いじゃない、いやむしろ好きらしく、ふむふむとYさんの話を聞いている。

 

Yさんのトークは、なぜか説得力がある。

 

Yさん「聖徳太子を扱おうと思って書いた本なんですが、中身を読んでいただくとわかるように、『聖徳太子が未来記を書いていたということになっているのに、作中、未来記を探して結局手に入っていないんですよ。手に入らないまま推測で1冊書ききってしまったという、素晴らしい本です」

店長「ほほお」

Yさん「出たのが94年なんですが、と学会(注4)の本でも紹介されまして」

(注4)「と学会」…トンデモ系の本を紹介する会。

 

店長「94年だったら、ノストラダムスの大予言ブームも下火だよね。うちの店も『トンデモコーナー』があるし、扱ってもいいかな」

Yさん「おお!」

店長「でも10円だなあ」

Yさん「うはー」

第3ラウンド:Yさんの結果
『聖徳太子「未来記」の秘予言』

10円

狙い目としては外れていなかったが、残念な結果に。
Yさんは3冊目で逆転とはいかず、これで失速してしまったか?

 

 

第3ラウンド 3人目:Bさん

第1、2ラウンドを制して余裕のあったBさんだが、加藤が高評価を得たことで、自分の勝利が危うくなってきた。
そんなBさんが出した最後の本はこちら。

Bさん「横溝正史『病院坂の首縊りの家』のハードカバー版です」

 

『病院坂の首縊りの家』横溝正史

 

店長「あ、帯つきだ」

Bさん「文庫版と同じ杉本一文さんの装丁ですね。文庫版とも少し違うんです」

店長「横溝正史は、文庫版も何種類かあるんだよね」

加藤「『病院坂』の文庫なら、黒いのと白いの2種類とも持ってますよ」

Bさん「珍しいかなと思って買ってきたんですけど」

店長「古書的価値があるのかはわからないけど、まあ、ステキだよね」

Bさん「うちのオカンは全部カバー外して読んでましたけどね」

加藤「このカバーだと外に持って行きにくいんですよ。全裸の女性の絵だったりするから」

 

勝負と言いながら、ついつい本トークで盛り上がってしまう。

 

店長:いくらかな。

加藤:ちょっと汚いですよ。黄ばんでます。

Bさん:余計なことを言うな。

Yさん:うわー、卑怯。

加藤:妨害しておかないと。

店長:本はステキだけど、内容自体は普通の横溝作品だからな。つけて50円。

Bさん:ええー。

第3ウンド:Bさんの結果
『病院坂の首りの家』ハードカバー

50円

 

意外や意外、コンスタントに高評価を得ていたBさんがまさかの50円。

本じたいは店長も気にいっていたようだが、同じ内容の本が安易に入手できるため、価格は上がらなかった。

 

 

第3ラウンド:判定

第3ラウンドは加藤のハイスコアがあるため、結果を聞くのすらはばかられたが一応判定。
第3ラウンドの勝者は…。

店長「はい加藤さん」

加藤「投げやりですね」

 

 

第3ラウンド終了時 結果

参加者1:加藤

参加者2:Bさん

  

参加者3:Yさん

 

 

最終結果 〜勝利は誰の手に〜

引き続き、第1〜3ラウンドのトータルチャンピオン「一番古本目利きのセンスがあると思う人」を選んでもらった。

店長はちょっと考えてから、

店長「加藤さんの『怪』は反則みたいなもんだから、Bさんかな」

Bさん「やったー」

店長「『怪』を売ってくれるなら、加藤さんを優勝にしてもいい」

加藤「それなら優勝いらない」

最後に優勝の価値を台無しにする発言が飛び出したが、「古本目利き3本勝負」は無事終了。

ある程度予想はされたが、店長と趣味がそっくりなBさんが優勝とあいなった。


古本目利き王(キング)誕生。
やはり本に詳しい人が強かった。

■趣味丸出しで本を探そう!

とまあこのように進んだ「古本目利き勝負」。

おわかりかと思いますが、それぞれ趣味丸出しで、趣味が偏っております。
ここで高評価を得た本も、他の人にしてみたらどうでもいい本だったりするのは重々承知。
この趣味の世界でワイワイやるのがまた楽しのです。

1人で静かに読むのもいいですが、あなたの好きなその1冊、人にオススメするのも面白いですよ!

…相手に受け入れられるかは、わかりませんけどね。

買ったけど勝負に出さなかった本たち。帰ったら読書だ!

取材協力:

■古本 浪漫堂

札幌市豊平区平岸3条7丁目2−3
TEL&FAX 011−557−7541

月〜土:10時〜21時30分
日祝:12時〜20時
水曜定休 


 
 
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