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ちしきの金曜日
 
ちんちんと聞いてニヤニヤする自分にさよならを

●自分試しの旅の果てに

  おやつを買ってきたのは、有楽町にある「かごしま遊楽館」。鹿児島県のいわゆるアンテナショップだ。鹿児島では親しまれているお菓子をこの店で売っているらしい。


店内はかなり混んでいて人気があった
あった、珍々豆

 「南国珍々豆」である。南の国の珍々な豆、ということだろうか。「珍」の字を二つ重ねるのは、「珍しい、とても珍しい豆」という風に解釈してみた。

 「ちんちんまめ」とひらがなで書くと、ファニーな雰囲気も出てきてつい口元もほころぶ。

 …いや、だからそれは今回の趣旨からするとまずいわけだろう。南の国の陽気で楽しい豆を頭に描いてしまうと負けだ。


ここでも「珍々豆」は丸ゴシック体
ちんちんまめ…

 ピーナッツにしょうゆと砂糖で甘辛く味付けられた衣がついている豆、と言えばいいだろう。冷静に分析すると、いたって一般的な豆菓子だ。

 じっと見つめたり、心の中で「ちんちんまめ…」と思ってしまうからダメなんだ。余計なことを考えず食べればいい。


素顔の自分のままで

 無心で、無心で…と思いながら食べたところを撮った一枚がこれだ。

 まあニヤニヤしていないのはいいが、これが無心だろうか。もう少し真剣な表情をしていたつもりだったのだが、自分の無心をこんな形で知って少しショックを受ける。

 さあ、今日は夕食を食べる店も決めてある。世田谷区の成城学園に移動、駅近くにあるタイ料理店にやってきた。


「ラーン・チンチンタイ」と読む
逆光に最後の勝負をかける男の気概が見える

 「ラーン・チンチンタイ」というお店。看板などはご覧の通り日本の文字では書かれていないが、「チンチン」にあたる部分は「JING JING」となっていることがわかる。

 「ちんちん」と書くとファニーな雰囲気も、「JING JING」と書くとなんかおしゃれだ。


やばい、おしゃれ系の店だ

 店内はとても落ち着いた雰囲気。タイ現地から仕入れてきたと思われる調度品がいろいろと置かれていて、デートにも使えそうないいムードの店だ。

 ちんちんという名前が気になってやってきた自分を否定するかのようでもある。これはきつい。


そういうわけで、緊張気味

 ニヤニヤしてる場合じゃない。否が応でもそうさせる店内の様子に押し黙り気味。

 そう、それでいいんだ。今回目的としたことに適っているではないか。ちんちんと聞いてはいちいちニヤニヤしていた自分はもうここにはいない。それでいいじゃないか…。


名前は忘れたがおいしかった鶏の焼き物

 料理を運んできた店員に「店名のチンチンってどういう意味ですか?」とも聞けず、言葉少なに食べる。うん、おいしい。おいしいけれど、翼をもがれてしまったような気持ちが湧いてくるのはな ぜなんだろうか。

 家に帰って調べたところ、店名のうち「チンチン」の部分は、「本当の」という意味であるらしいことがわかった。

 「チンチン=本当の」。そういうことらしい。わかったようなわからないような含みのある結果だと思う。

これでもかと波状攻撃

  チンチンと聞いてはニヤニヤしていた自分に決別すべく試みた今回の企画。確かにわざわざ何度も接したことで、いちいちそれにはしゃぐ気持ちも薄れていった。

 最後の店でも企画の意図は確かに達成。そう、それでいいはずだ。

 それでいいはずなのだが、達成感や充実感がないのはなぜなのか。それは、今回の取材を通して、どこかに何かを置いてきてしまった気がするからなのだろう。

 自分が本当に大事にしたいことはなんなのか。答えはまだはっきり見えないが、今回のことを経験した自分がこれから先、ゆっくり見つけていくのだろうと思う。


 
 
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