取材を終えた僕は、藤谷さんにお礼を述べ、藤谷さんを紹介してくれた同行のライターと共に席をはずそうかと思ったときである。
同行のライター小川さん「梅田さんも、藤谷さん主催の句会に参加してみればいいんじゃない?」
梅田「クカイってなんですか?」
小川さん「藤谷さん、月に一回この書店で句会をやってるんですよ」
梅田「クカイ?」
小川さん「俳句の会、句会」
梅田「ああ、句会ですね。いや、俳句なんてやらないなー」
僕の人生の中で、『句会』という言葉を耳にしたのは久しぶりだったので、しばらくなんのことか分からなかった。
藤谷さん「参加は誰でもかまいませんよ」
俳句なんて小学生のときにいやいや宿題で書かされた以来、一度もやったことがない。そんな僕が、公衆の面前で自作の俳句を発表する。それだけではない、他人が詠んだ句を評価する。そんなこと出来るはずがない。失笑を買ってしまうのがオチである。しかも大先輩の小説家の前で恥をかくわけだ。藤谷さんに『こいつ、センスないな』とか思われるかもしれない。それはいやだ。できないことはやらないほうがいい。そう、やんわり断ろう。できないことはできません、と言おう。それが大人だ。うん、そうしよう。
梅田「いいですねー、句会。ぜひ、参加させてください」
ああ、オレのバカ。 |