中間まで要した時間は1時間10分。ということは、同じだけの時間がまだこれからかかるということだ。
「山寺にのぼったってことにしようかな……」
そんなおもいが一瞬よぎるも、なんとか日暮れまでにはと、また歩きだす。
2000段を越え、とうとう他人の玄関の前に座り込んでしまった。 べつになにかの抗議運動とかではない。
だいぶ日が傾いてきたがゴールも近い。もうひと踏んばりだ。
すぐに方向転換てのがしんどいんだよね
そしてやっとこ、
登頂!
階段をのぼりおりすること153回。結果、羽黒山より2段多い2448段を達成。 なんだかんだで、所要2時間25分。 そう俺は、アパートの階段で2時間半を過ごせる男。
満ち足りていたぼく
なんだろうこの満足感。この清々しさ。 ぼくがのぼったのは本当にアパートの階段なのか? じつはここが本物の羽黒山ではないのか? 酸素の足りてない頭でそんなことを考えながらふと外に目をやると、空が茜色に染まりはじめていた。 そういえば前日、参拝のシメはどうしようかとおもい、こんなものを用意していた。
のぼりきったら階段にこの鏡を置いて、それを拝んで終了。などと考えていたのだ。だが実際にやり終えたいま、そんなことをする気にはなれない。
念願だった羽黒山の石段をのぼることができた。ただそれだけでいいじゃないか。 美しい夕焼けをこの記念に写真におさめようとおもい、ぼくはまた階段をおりて、アパートの裏へと向かった。
参道の果てに
すると、なんだか気になる物体がぼくの目にとびこんできたのだ。
近づいてみると、それは畑にうち捨てられた小さな社だった。
なにこのお導き。
家の裏に社が捨てられていたことにショックを受けつつ、なんにせよ、せっかくあったので、
アパートの階段を2448段のぼったら、小さな社にたどりついた。なんだかよくわからないまとめになってしまい恐縮です。それでも参拝の効果があったのか、つづく1週間、筋肉痛以外はすこぶる快調に過ごすことができた。歩くのって、いいね。 やっぱりいつか、時間をつくって羽黒山に行ってみたい。もしもそのとき誰かに、「羽黒山にのぼるのは初めてですか?」と訊かれたなら、「いや。あるっちゃあ、ありますよ」と、こたえようとおもう。
旅のおもいで