●問屋街のショーウィンドウから放たれるオーラ
続いてやってきたのは、台東区の浅草橋。店舗装飾品や人形などの小売店・問屋が並ぶ街だ。
ビーズの専門店も多々あったこの街。ビーズを趣味としている人に話を聞いたことがあるのだが、種類豊富で安くビーズが買える浅草橋は、その道の人にはちょっとした聖地として扱われているらしい。
右の写真、生花店にも見えるかもしれないが、置いてあるのは全て造花。普段造花を欲しいと思う気持ちにはあまりならないのだが、こうした様子を見ると、つい興味が湧いてくる。
人形屋さんもそうだ。普段は人形のことなど全く関心がなくても、たくさん店が並んでいると、最近の人形トレンドなんとなく見えてきて面白い。
そんな中、ひときわの異彩を放つ店があった。
きっぱりと「蛇善」である。思わず声に出したくなる、力強い響きのある名前だ。
普段、蛇を欲しいと思ったことはないのだが、大きく「蛇善」と書いてあるのを見ると気になってくる。そういう魅力がある店名と店構えだと思う。
ショーウィンドウのインパクトもすごい。くねくねとしている蛇そのものの他、蛇などを使った商品が並んでいて、見ているだけでスタミナがついてくる勢いだ。
「縞蛇蒸焼」とあると、四字熟語でもあるような説得力がある。「蝮縞生料理」もすごいとしか言えない力強さだ。
「深山蝮蒸焼」というのも趣深いが、小さい瓶のものならば1750円と表示してある。これくらいならまあ気軽に試してみることができるだろう。
店内に入って、蝮の小瓶をくださいと告げる。
お店の方が品物の準備をしている間、よく店内を見回すと、土竜(モグラ)や猿の頭など、その姿もよくわかる強烈なのがいろいろと並んでいた。お店の方はとてもフランクで、それぞれの効能などを詳しく教えてくださった。
あ、購入した蝮蒸焼もあった。これを買ったのか、自分は。
さて、自宅に帰ってマムシ瓶を開けてみよう。
その正体はさすがに店にあった感じのものがそのまま入っているわけではなく、かなり細かい粉末にされたものだった。素人ながら、やはりその方がいいと思う。
恐る恐るスプーンにすくってみて、まずはにおいを嗅いでみる…。おお、意外とマイルド?と言えばいいのかどうかわかららないが、出汁のようなにおいとも感じられた。
はい、ではいってみましょう。えいー。
おお、においの印象と同じように、決して飲みづらいような味ではない。結構うまいと言ってしまってもいいかもしれない。
私は意外と普段からいろいろと元気なので、蝮のはっきりとした効果はわからなかったが、なんだか気分的には盛り上がってくるものを感じた。
●繊維街で出会った気になるメニュー
続いては 荒川区・日暮里の繊維街だ。せんい街、より具体的に言うと、布地を扱う店が密集している街だ。自分にはあまり縁のない街なのだが、洋裁をする妻はよく意気込んで訪れているようだ。
布の種類が豊富というだけでなく、価格もかなり安いらしい。自分には相場がわからないのだが、「1mで100円っていう感じの生地がたくさんあってさ!」と話す妻のテンションは高い。
服飾関連の学校に通う人も多く訪れるらしい。言われてみればそれっぽい感じの人たちと何度もすれ違った。
革材・革ハギレが超〜激安!!と書かれても、個人的には興奮できない。ただ、店頭で無心に品物を物色している人たちの姿を見るとこれは相当なことが起きてるんだなということはわかる。
100円の服を売る店もあり、これがかなり異常なのは私にもわかった。確かにびっくりプライスだ。
そんな中、布地とは関係なく見つけたのがこちらの店だ。
最近はラーメン屋にもしゃれた構えの店があって、一見そうとはわからない場合もある。ただ、らーめんらーめんと押してくるこの店は、はっきりとラーメン屋であることがわかる。
気になるのはこの店の名前だ。電灯には「らーめん」。店の名前らしき看板にも「らーめん日暮里店」とあるだけ。
これらの事実から推察されることは、この店の名前は「らーめん」であるということだ。確かにラーメン屋なのだからわかりやすいが、わかりやすさ余って謎も漂う。
店頭で薦めているメニューにも気になるものがあった。ちゃんぽん麺、という部分はいいとして、「日暮里ふう」がわからない。博多や喜多方といった地名ならわかるが、日暮里という地名からは具体的なイメージが湧いてこない。
これは気になる。店に入って注文してみた。
とろみのついた野菜炒めが麺の上に乗っている麺だ。ちゃんぽんと聞いて長崎ちゃんぽんを想像していたのだが、麺は普通のラーメンのもの、スープも長崎のものとは違う。
これをちゃんぽんと呼ぶのならば、確かに独自性があると言えるかもしれない。
では食べてみよう……。うん、特徴がはっきりした味というわけではないが、トータルでなんかうまい。手堅いおいしさとでも言えばよいだろうか。ごちそうさまでした。