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土曜ワイド工場
 
もっと知りたい!紙パッケージの「あの部分」

刃型ができたら、次は打ち抜き作業だ

できた刃型は「平打ち抜き機」という機械にセット。そ こに紙を通して打ち抜いていく。 この手法を「オートン」と呼ぶらしいが、これは多く使 われている機械の名前がオートンということに由来する ものだという。 携帯音楽プレーヤーを何でも「iPod」と呼んでしまう私 みたいな人が、この業界にも沢山いるんだ。


噂のマシン「オートン」

オートンでは、自動で1枚ずつ紙が流れていく。そして 機械の中央あたりにセットした刃型が上からガシャンと 降りてきて、紙を打ち抜くのだ。 あまりに早く打ち抜かれていくので、その瞬間をカメラ におさめることができなかったが、下の写真に見える赤 い部分、そこにあるハンドルの上段に刃型がセットして あり、そこが上下に動くようになっている。 下に送られてきた紙を上から打ち抜く…と思ってもらっ て間違いないと思う。


セットした紙が流れていって…
打ち抜く。中央に見えるハンドルのその上に、刃型が下向きにセットされている
次々と打ち抜かれたものが積まれていく
不要な部分を取り除いたら出来上がり

 

ここでも職人の技が光る

なんとこの作業も、職人さんが手作業で行うことがあるそうだ。そこで、手作業での加工の様子を見せてもらうことにした。


これが手作業専用の型押し機。手作業でも道具は使う

刃型をセットしておき、素早く紙を通す

刃型に向かって勢いよく紙をあてる

この手作業用の型押し機には、小さいもので約10cm×10cmのハガキのようなものから、最大で約100cm×75cmの刃型がセットできるらしい。スピードが勝負の作業なので、手を休めることなく鮮やかな手さばきで次々と加工を施していく。職人さんの手にかかれば、なんと1時間に約1200枚もの加工ができるとのこと。

しかし近年では、このような手作業よりも、先に紹介した機械作業のウエイトが高くなっているらしい。「若い社員たちは、器用に機械の使い方をマスターしていくよ。あまり手作業に興味ないみたいだね」そう話す職人さん。笑ってはいたものの何だか少し寂しそうだ。


手作業に携わる若者が減ってきた。と職人さん

私は自分の持ってるパッケージが手作業で打ち抜かれていると思うと感慨深いので、俄然、職人さんを応援したいと思った。

それだけのスピートと技術があったら、機械よりも早く作業が終わっちゃうんじゃないんですか?」作業スピードに追いつけず、必至にカメラのシャッターを押しながら質問を投げかけてみた。「いや、いくらなんでもそれはないよ。機械は1時間に2000〜2300枚くらいは数をこなすからね」 と、職人さんは手を休めずにそう答えてくれた。

…そうですか。そりゃそうですよね。

質問に答えながらも、次々と枚数をこなしていく

「あっ!でも手作業の強みってあるんじゃないですか?機械よりも正確で安全に作業できるとか…」 そんな私の質問に苦笑いしながら「やっぱり機械は正確だよ。この作業は1mmでもずれたら製品の仕上がりが大きく変わってしまうからね。機械に任せておいた方が間違いのないものができるね」と職人さん。「この作業は刃物を相手にするから、決して安全だとは言えないんだよ。機械は怪我をしないからね

………機械の圧勝である。

う〜ん、私もやっぱり作業するなら機械を選ぶ…かも。
でも、やっぱり職人さんが1つひとつ手作業で打ち抜い
てくれたものの方が好きだ。
そして、あんなに機械1人勝ちの状況の中、誇りを持っ
て作業している職人さんが眩しく見えた。
こうやって作っている人間を目の前にすると、今までも
好意的に向かいあってきたジッパーやミシン目がいっそ
う愛しく思えてくる。


元になる刃型と、出来上がったもの

このような過程を経て、完成したものが上の写真のもの。ジッパーやミシン目の他にも穴開けスジ押しなど、様々な技術を見ることができる。この後、箱状になるものは折りの工程に回されるなど、それぞれの用途に合わせた形状に加工されていく。「普通の紙」が、何かちょっと特別なものになった瞬間。そんなふうに感じた。


ベテランになっても確認は怠らない

パッケージの開け口を調べていくうちに、機械と人力との微妙な関係や、職人さんの技などいろんなものが見えてきた。ジッパーから沢山のことを学んだ気がする。ということで、今後もさらにヒートアップして箱を開けていこうと思う。業界の方には「さらに開け心地の良いジッパー」を目指していただけたら本望だ。

紙って面白い素材だよね!

今回、紙パッケージの開け口がきっかけとなり、紙を加工することの面白さに気付いた気がする。ジッパーなんて紙の特製を活かした加工の代表みたいなものじゃないか。今後も、布やプラスチックなどにはない紙らしさ満載のアイテムがどんどん誕生していけば良いと思う。

刃型次第で、こんな動物も作れちゃう


かみの工作所ホームページ
https://www.kaminokousakujo.jp/


 
 
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