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ロマンの木曜日
 
僕はどれくらいおしゃべりなんだろう

次は会議だ

打合せが終わったので、つづいてライター陣が集り記事のネタについて話し合う企画会議に出席した。


しゃべらずに過ごそうかと思ったが

先ほどの打合せでの会話は、録音して後で数えることにしていたので自由に話すことができたが、会議はまた自分で数えるつもりだ。
会議中はできるだけしゃべらないようにして、終了までやりすごそうと思ったが、進行役である当サイトのウエブマスター林さんに、「工藤さん、会議なのでちゃんと発言してください」と言われてしまった。
ほかの参加者も、僕が語数を数えているのを知って、なんとか僕に話をさせようとしてくる。
それを見かねた編集部の橋田さんが、「じゃあ、私が数えてあげます」と助け舟を出してくれた。
これで自由にしゃべれる。うれしい。
そしてそこで、やはり僕はしゃべりたいんだなと気づいた。
思っていることは誰かにつたえたいのだ。


目をつむって真剣に数えてくれている。

900語ほど

会議ではおよそ900語ほどしゃべった。
意外に多い数字だ。
会議での発言は、普段の口語とはちがう、主語や目的語がちゃんとついた言葉で話すので、語数が増えるようだ。

そして会議の後、今日の最大の関門である「飲み会」へと向かった。

これまでの言葉:2900くらい


ライター同士の親睦を深める飲み会

勝手に手が動く

飲み会が始まったので、飲み始めた。
飲み始めたということは、酔い始めたということだ。
酔いはじめると、しゃべりたくなる。
しかし、言葉をカウントするのが面倒なのでしゃべるのを我慢する。
話したいことは、頭の中でできるだけ少ない言葉になるように変換してから声に出すというクセがついてきた。
けれども、その変換作業が難題で、考えているうちにみんなの話題は進んでしまう。するとしゃべる機会がなくなってしまう。でもしゃべりたいことは思いつく。
やがて、どういうわけか頭に浮かんだしゃべりたいことを、口に出していないのにカウントしてしまうようになった。
脳が正しく回転していない感じだ。
そのうち、周囲の会話は無視して、自分の世界にこもるようになってしまった。


話題に入れないので黙々とこういうのを作ってしまっていた

寡黙な人の気持ちもわかる

僕の周りで一番無口な人といえば水曜日担当ライターの藤原君だ。
彼は飲み会でほとんど口を開かない。なんで飲み会に参加しているのかさっぱりわからないと今までは思っていたが、黙ってうなずいている飲み会もそれはそれでアリなのかもしれない。
少なくとも、語数を数えているよりは黙っているほうが楽だ。
などと考えていたのだが、その考えてるときも「黙って・いる・方が・楽だ」と、声に出していないのに数えてしまっている。
無言なのにカチカチと数えている僕を心配して、再び橋田さんが僕の言葉を数えてくれることになった。


なぜかうれしそうに数えてくれている

解き放たれた気分

となりで数えてくれていると思うと、心に浮かぶままを話すことができる。
気持ちと言葉が一致するというのはこんなにもすばらしいことだったのだ。
今まで気づくことさえなかった喜びだ。
言いたいことが言えるというのは、人間の根幹にかかわることなのである。
橋田さんのおかげで僕は言論の自由を手に入れたのだ。
よくわからないが、それくらいに思ったままを話せるのはうれしい。


僕も隣のテーブルのこれが食べたかったが、何という名前のメニューなのか聞いてそれを店員さんに注文するというのが面倒だったのでがまんした。あとで「こっちにも・これ」の2語で済むと気づいた。

言葉は心そのものだ

飲み会は夜11時30分をもっておひらきになった。
駅でみんなと別れて、僕は家に帰った。
今日最後の言葉は「お疲れさまでした、おやすみなさい」だった。
これは声に出した最後の言葉という意味で、そのあと一人になった布団の中で、声に出さずに「ありがとう」と言った。
それは心の言葉として、ひとつ今日の数字に加えた。
一日ずっと言葉を数えて思ったのは、心に浮かんだのはすでにもう言葉で、声に出すか出さないかは、ほんの少しの違いしかないということだ。
つまり、心のこもらない言葉は言葉ではないし、言葉にしない心はそれだけで言葉なのだ。
と、まったく心のこもっていない言葉で、この記事を終わりたい。
もちろん、寝る前に心の中でありがとうなんて言うわけがない。

今日一日の言葉の数:プライスレス

 
 
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