デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


フェティッシュの火曜日
 
山伏と行く、初めての修験道

修行=山登り

今回の修行は、修行といっても途中で滝に打たれたり、火の上を歩いたりといったキャッチーなイベントは一切なく、ただ真っ暗な夜の山を登っていくのみ。ようするに登山だ。

ただ普通の登山とちょっと違うのは、そこら中からホラ貝の吹く音が、狼の遠吠えのように闇の中から聞こえてくることくらいである。ブオーブオー。


山登りなんて三年前の富士山以来だ。 よくホラ貝吹きながら登山ができるなあ。

山伏と一緒の修行といっても、私達のように興味本位で参加したメンバーと山伏とでは基礎体力が全然違うので、バラバラに登って山頂で合流する予定となっている。

汗をダラダラとかきながら山を登ること一時間。自分なりに結構がんばったところで、石の鳥居に立てかけられた「登山道入口」という看板を見てガッカリする。このガッカリも修行のうち。


まだ入り口にもたどり着いていなかったのか。


ホスピタリティ溢れた修行の場

ここの登山道入口までは普通にアスファルトの道が通っているらしく、売店が出ていてジュースや軽食が買うことができる。なんだか町内会の運動会みたいなノリだ。

登りだしたら修行の場に売店なんてないと思って、飲み物やら食べ物やらをリュックにいっぱい詰め込んできたのに。


修行の場でコカコーラののぼりを見るとは思わなかった。 せっかくなので体脂肪を燃やそうと、こいつを1.5リットルも背負ってきたのだ。

また、こういったサポートは売店だけではない。所々に自衛隊が待機していて我々の修行を見守ってくれている。自衛隊に守られなければできない修行ってどんなだよとちょっと不安にさせてくれるが。また万が一怪我をしても、すぐに赤十字の人が看護をしてくれるというホスピタリティ。

山伏、自衛隊、赤十字、地元住人に見守られて、修行という名の山登りは進んでいく。


この山には怪獣でもいるのだろうか。 転んで頭をぶつけた人に駆け寄る赤十字の人。

ちなみにこの先にもう一カ所ジュースの売店があった。さっき山開きしたばっかりのはずなのに、なんて野暮なことはいわずに、喜んでアクエリアスを買わせていただく。



でもやっぱりここは修験の道

このようにホスピタリティに溢れた登山道なのだが、それでもここは修行の場。今日はまだ晴れているからいいけれど、山道は赤土で滑りやすく、岩場は手や杖を使わないと登っていけないような段差ばかり。慢性的運動不足の体では休み休みでないとなかなか進んでいけない。山伏さんはホラ貝吹きながらズンズン登っているけれど。ブオーブオー。

出発前、「早く着きすぎると寒い山頂で待つことになるなあ」とかいっていたが、もう御来光に間に合う自信がなくなってきた。


こんなゴロゴロした岩場にうっすら赤土が乗っていておっかない。

岩場エリアが終わると、今度は丸太で組まれたアスレチック場みたいなエリアが延々続くようになる。どうやって丸太をこんなところまで運んで道をつくったんだろうと素朴な疑問が頭をよぎる。やっぱり天狗とかだろうか。

こんな辛い山登りなのだが、私達のグループには小学生高学年くらいの子供達がいたけれど大丈夫なのだろうか。私がその頃の年だったら絶対に登れないぞ。なんて心配していたら、杖も持たない小さい子供にズンズン抜かれてしまった。子供の体力を舐めてはいけない。


「お先に失礼!」 彼の身軽さが憎い。


夜が明けてきた

自分の体の重さが憎い。せめてあと5キロ痩せてから修行に望めばよかったと強く後悔をするのだが、それは山登りしても、ボートを漕いでも、水着になってもする後悔。それにしても体が重い。

ゲラゲラと笑い出してきた足を修行だ修行だと言い聞かせながら、段差が大きすぎる階段を登り続けているうちに、山頂手前でうっすらと明るくなってきてしまった。


やばい。日の出に間に合わない気がしてきた。

一緒に来ている友人が私以上にへばっていたのだが、大丈夫かしらと振り返ってみて驚いた。

ずいぶん登ったなあ。


いつのまにやら雲の上。

登りはじめたのがあの湖のすぐそばだから、あそこからここまで自分の足だけで登ったのだと思うと自分えらいなと思う。この山は日光で一番高い山なので、まわりに自分の場所よりも高い山が見えないのが気持ちいい。

富士山の御来光登山もそうなのだが、夜に登りだして明け方に山頂へとたどり着く登山だと、登っている過程は真っ暗で辛いだけだが、この明るくなってから見る景色のインパクトがすごい。

「高いところまで上がらないと見られない景色ってあるよね」なんてありきたりな感想が本心から出てくる。

もうここが俺にとっての山頂でいいやという気もするのだが(登ってもどうせすぐ降りるんだし)、せっかくの修行の機会だ。どうせなら間近に迫った日の出に間に合わせたいので、もう一踏ん張りいってみよう。

あ、この前向きな考え方、きっと修行の成果だな。

 
 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.