どんな現場で使われているのか
細渕電球うまれの電球が使われているのは、医療業界、鉄道業界、それから検査機器の業界など。
たとえば、胃カメラみたいな人体に挿入する機器では、小さくてかつ明るい電球が必要となる。そこで極小電球を得意とする細渕電球の出番だ。
実はこの会社では、かなり古くからこの分野の電球を作っている。昭和29年、世界で初めて胃カメラによるカラー撮影が成功したとき、使われていたのはここの電球だったそうだ。
世界に羽ばたくいろんな電球
ほかにもいろいろな業界で、いろいろな電球が使われている。製品カタログも存在するのだけど、特殊電球を特注で開発することも多い。海外からの注文も多く、現在、取引の6割は海外のお客さんなのだそうだ。
左の写真はこれまでに作ってきた電球のごく一部。よく見るとそれぞれの電球が個性的な顔をしていることがわかる。電球自体の形やフィラメントのつくり、ガラスの一部が何かに覆われていたりなど、特徴的な電球たちはまるで昆虫標本を見ているみたいで、全然飽きない。
用途をきくたびに遠くの国の名前が出てくるので、ついついそこで働く電球たちに思いを馳せてしまう。興奮して思わず「これはなんですか?」「これは?」って高橋さんを質問攻めにしてしまった。
タバコの検査ってなんだ。詳しく聞いてみると、タバコの葉に光を当てて、その反射を計測することで葉の中の水分量がわかるらしい。同じように血液検査用、砂糖の品質検査用などいろいろな検査機器に使う電球があるそうだ。まったく想像もしなかった電球の使い道。しかしこんなことができるのも、精度の高い光を作り出せる、手作り電球があってこそなのだ。
売り出し中の新製品がこちら
そして高橋さん一押しの新製品がこれ。医療用のヘッドランプだ。最近では電球ではなくLEDが使われることも多いこの分野だが、LEDでは光の特性上、赤色が見難くなってしまうのだという。見易さと十分な光量を兼ね備えた光は、職人技の電球ならではだ。
さらに、ソーラーパネルを使ったバッテリーパックを使えば、電源のない場所でも作業が可能。サハラ砂漠での使用も想定しているんだとか。あの電球作りの細かい手わざで、視野はあくまでグローバル。ものすごいスケール感だ。
指先から世界へ
世界に羽ばたく細渕電球の電球。あの指先の本当に緻密な作業で作られた電球が、世界中を飛び回っている。そのことがなんだか爽快だった。職人さんたちも、南アフリカのことや、ヨルダンのこと、フランスのことに思いを馳せながら作業しておられるのだろうか。なんだかそれはとてもロマンチックな話ではないか。
そして個人的には電球の種類の多さ、多様さにすっかり魅了されてしまった。この原稿を書いている最中も、いただいたカタログを手に取って、ついつい何度も見入ってしまった。電球、おもしろい!
細渕電球株式会社 https://www.hosobuchi-lamp.co.jp/