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はっけんの水曜日
 
てこでぶっ飛ぶ

 

飛べない人はただの人だ

意を決して手を離すとロープが滑車を走る。「カラカラカラッ!」瞬間、ねらいすましたようにポリタンクは力点へと命中。

「飛ぶか!」

と思いきやタンクはなぜかそのまま地面にバウンドした。

そう、板が柔らかすぎて曲がってしまったのだ。

失敗だ。

 

ちょっと待ってくれ。

 

気がついたら子供たちがいなくなっていた。やっぱりみんな気にしていないようで僕のことを見ていたのかもしれない。なんだ飛ばないのかよ。

しかしすべきことは完全に見えた。板を強くしたらいいのだ。厚さ18ミリの板から一気に40ミリにまで厚くしてみる。これ以上厚くすると板自体が重くなっててこの動きに支障があると予測。

 

これでどうだ。

 

次の日の朝、同じ公園にて。

前日と同じ轍を踏まないよう、今日は日が昇りきる前にやってきた。そのかいあってさすがに誰もいない。

しかし代わり暗くて写真が撮れないかと思ったが、準備をしている間に明るくなってきた。夜明けぜよ、物理学の夜明けぜよ。

狙い通り誰もいない。

 

 

昨日は子供がサッカーをしていて使えなかった一番高い鉄棒を今日は使う。到達点が高い方がエネルギーも高いのだ。

動滑車を組んでいると犬の散歩の奥さんが通りかかったがとくに目を合わさず帰って行った。

 

今日もいい滑車ができた。
いともスムーズにトップまで上がっていきます。
そして僕は端に立つ。

 

ロープを引き込み、20キロのポリタンクがぎりぎりと持ち上がる。今回はさすがに板にしなりがない。

ポリタンクが鉄棒に触れるまで上昇した。昨日と違ってかなりの高さ。このエネルギーが下から僕にぶつかってくるわけだ。不安、恐怖、後悔。このまま手を離せば次の瞬間、今度こそ僕は飛んでいるかもしれないわけだ。好奇心、期待、責任感。呼吸を整え手を離す。

それ!

 

 

弾けた

飛んだ、というか弾けた。僕の頭の中では何かが飛んだ気がしたが、三脚に戻って動画を確認すると、まったく飛ばずに後ろにひっくり返っただけに見える。

 

弾け飛んだ装置が破壊力を物語る。

ふたが壊れて水がどくどく出ていました。

 

動画を見るとタンクが落ちると同時に板が大きくはねているのがわかる。かなり重い板があのはねようだ。伝わるだろうか、このエネルギー。

動画を見ると僕の腰が引けてしまって全体が後傾になっているのがわかる。これでは下から突き上げるエネルギーをうまく仕事に変換できなくて当然だ。問題は意識、恐怖をいかに押さえつけるかだろう。

この点に気をつけて再度挑戦してみた(実際はこの間に何度ものトライアンドエラーが挟まれているのだが省略します)。

 

 

わずかながら、飛んだ

飛んだ。わずかなジャンプだがこれは人類にとって、というか僕にとって大きな一歩に違いない。動画を見ても正直「ぶっとぶ」というほど飛んではいないが、飛んでいる本人はかなり飛んだ気分だった。恐怖感が記録を大げさにしたのだろう。

人がてこで飛ぶにはかなりスケールの大きな装置が必要だということがわかった。小さな物で可能なことは大きくしても可能、というのは様々な事情を考慮するとすべて正とは言えないようだ。

なにか大切なことを学んだような気がするが、全体を通して思い出に残ったことは近所の人にまたよくない印象を与えたのでは、という不安でした。今度草刈にでも参加したいと思っています。

公園で迎える朝は気持ちが良いですね。

 

 
 
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