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ひらめきの月曜日
 
甘くないカントリーマアムと羊羹

甘くないマアムはジャガイモで作る

さて、お菓子から砂糖を抜くぞ! と意気込んではみたものの、実際お菓子においての砂糖の役割というのは大きい。

あんこの腐りにくさやクッキーの焼き色は砂糖のたまものだ。それに今回の2品には直接関係ないが、あわ立ち保持や酸化防止などなど砂糖の役目は甘味を加えるだけじゃない。

レシピからまるっと砂糖だけ抜いてしまえば、バランスが崩れて見た目を変えずにお菓子を作ることは難しいんじゃないか。

どうすればうまいことできるか、銀座の大手デパート地下のケーキ店でパティシエールをしていた友人に話を聞いてみた。「やってみたことがないから、想像になっちゃうけど」という断りつきでこんな返事をもらった。


傍らにはすでに砂糖抜きで煮詰められていっている小豆が。大目に入れた水にとろみがついて、煮立つ様子が地獄みたいになってきた。不安!

羊羹は、水羊羹とか練り羊羹、蒸し羊羹っていろいろ作り方があるけど、砂糖を入れないなら寒天を使う方法が一番安全かもしれないです。砂糖抜きでも寒天の力で問題なく固まるはず

ソフトクッキーのほうは砂糖を入れないとまず焼き色が付きにくいし、ぽろぽろに崩れてまとまりにくくなっちゃうかもしれないね。砂糖の変わりにリンゴとかバナナとか、あとカボチャとか入れるとうまくつなぎになるんだけど……甘味がだめなんだよね? でんぷん質はつなぎになるから、ジャガイモを入れたりするとうまくいくかもしれないです。

厳密にはジャガイモにも甘みがあるけど、それ言っちゃうと粉にも粉自体の甘さがあるから、それくらいならいいんじゃないかなあ。


なんとじゃがいもか! 早速ふかしてみましたよ

思いのほか順調にできてしまった

まさか、クッキー作りにジャガイモを使うとは思いつきもしなかった。が、プロのいうことなので間違いないだろう。

ついでに教えてもらったいくつかのソフトクッキーのレシピを見比べ、初心者でも作りやすそうなものを参考にしつつ、砂糖をジャガイモに変えて作っていこう(そんなさ中も羊羹用の小豆は煮えていっております)。


バターは通常量入れる。お菓子を作るバターと砂糖の多さにドーンと引くのが常だが、今回は砂糖がないので脂汗も2分の1 バターにジャガイモを混ぜる。いつものじゃがバターとの比率の逆転に驚くジャガイモくん

生地がぽろぽろになるのがおそろしかったので、卵も大目に使った こうやってスプーンで生地を落とすのが、ソフトクッキーの流儀ですよね

あれ、これカントリーマアムじゃないな

さてさて、どうなりますか。オーブン170℃で12分。ソフトクッキー、ソフトクッキーと念じながら焼き上がったのが、これだ。


……おや?

砂糖入りであれば通常焼いているうちに丸く広がるはずなのだが、砂糖を入れなかった今回はスプーンで落としたままの形で焼きあがってしまった。なるほど、こうなるのか。

美味しそうな見た目ではあるが、これではどう見てもカントリーマアムじゃあない。残りの生地はマアムのように丸くして、中をくぼませるように形作って焼いてみた。


うーん、まだ違う

ぐっとマアム風にはなったが、うーん、どうだろう。明らかに何かが違う。

そうだ、そうなのだ。気にせずむしゃむしゃと食べていて忘れがちなのだが、カントリーマアムは2層構造になっているのだった。外はサックリ生地で、中にチョコチップの入ったしっとり部分がある。これを再現せずしてカントリーマアムとはいえないだろう。

チョコチップとしてのジャガイモ

というわけで、再度同じ生地を作って、今度は焼く前にアンパンを作るときのような要領で生地の中に「しっとり部分」を入れることにした。

この部分、何がいいだろうと思ったのだが、勢いでふかしたまんまのジャガイモを入れることにした。本物カントリーマアムでいうところのチョコチップに見立て、荒つぶしにして食感を残す。我ながらなかなかのアイディアじゃないですか! 生地にもジャガイモは入っているので味的にも違和感がないだろう。


作っているのはコロッケじゃなくてクッキーです そして、焼きあがりました!かなりマアムです!

これがまたオッ、と思うくらいカントリーマアム風のものができてしまった。味は次のページでの試食の様子でお伝えするとして、外見として甘くないカントリーマアムを作るのは成功と胸を張ろうじゃないか。むんっ(胸を張る音)。

羊羹はどうなった

華やかに作られていくカントリーマアムの裏で、粛々と羊羹も作られていたのだが、こちらは1発でおおむね成功した。友人の助言どおり、寒天を使うタイプのレシピで試したところ、しっかり固まってくれたのだ。


水を大目にして煮たのが良かったのか、砂糖なしでも十分あんこっぽく煮あがった小豆 水と寒天でまたじっくり煮て、型に流して固めました

薄っぺらくなってしまったので重ねて、はいっ、羊羹!(あんこが粒あんなのは手製の愛嬌ということで!)

以前高瀬さんが砂糖の量を何段階か変えてあんこを作っていた際に(記事:あんこのジャストな甘さ探し)砂糖ゼロだとぼそぼそになってしまうと書いていたので、今回はかなり水の量を多くしてみたのだ。結果かなりあんこに近いものができた。

さすがに照りはないが、誰でもこれを見たら甘いあんこと勘違いするだろう。むんっ(また胸を張りましたよ)。

では、いよいよこの2品を食べてみようじゃないか。砂糖抜きカントリーマアムも、砂糖抜き羊羹も、砂糖が入っていないので痛みが早い。急いで試食会をセッティングした。

甘くないお菓子は絶望を呼ぶのか。それとも。


宮城さんと編集部 安藤さんにも参加してもらって試食会を開催! 何が起きるか知らない笑顔の宮城さんの命運は

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