色をぬってごまかす
「何時間もかけて、できたものは結局ゴミでした」 なんてオチはあまりにも悲しい。ぼくは慌ててホームセンターに走り、木工用のカラースプレーを買ってきた。時間の経過とともに痛んで黒ずんできたバナナの皮を、鮮やかな色で塗りつぶすのだ。
ホームセンターでスプレー売り場を訪ねたときに「何の素材に使う用ですか?」と店員さんに聞かれたが、恥ずかしいので本当の用途は言わなかった。ただ、聞けたところでバナナ用のスプレーは売ってなかったと思う。
何だかとてつもなく悪い薬をこしらえている魔女みたいな気持ちになってきたが、もう立ち止まることはできない。
夜通し頑張るぼくにバナナジュースを差し入れてくれた母。そのいたわりに報いるためにも、かっこいいペンケースを完成させて親孝行したい(などと心にもないことを書いてみる。不安なので)
・・・とりあえずスプレーが乾くのを待ってみよう。
しかしなんと、おしゃれペンケースが完成
スプレー噴射直後はどぎつい色合いだったが、乾くと落ち着いた優しいトーンになった。どことなくサツマイモっぽくもあるか・・・いや、そんな照れ隠しの表現はやめよう。
思い切って言ってしまう。コレ、おしゃれだ。高円寺のおしゃれアジア雑貨屋で2300円くらいで売っているおしゃれペンケースだ。
バナナの皮は腐る
いっとき生ゴミになりかけたバナナは、呪いの儀式を経て、お洒落雑貨に生まれ変わったとさ、という今回のお話。今後の取材はこいつをぶら下げていこうと浮かれていたら、3日で腐った。そうか、皮って腐るんだったね。